コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
余程気持ち悪かったのか、壁際まで後退ったデスティニーを横目で見ながら、コユキは気まずそうな感じで言う。
「な、なんだアンタ達だったのね、ほらここ薄暗いじゃない? それで変な生き物かと思っちゃっただけよ、本当だよ? こうしてちゃんと落ち着いて見れば格好良いじゃないのぉ! うん、素敵よ二人とも♪ ってまさかアンタ達その姿で接客した訳ぇ?」
一人だけ人型のままのグラシャラボロスが答えた。
「はい、アスタロト様が『今人間達の間では純血種では無くてミックスと言うのが流行っているんだ』とか言われてこの姿でやってみろと…… 開店当初に来店されたお客様は皆、悲鳴を上げて逃げて行ったきりです…… 一度ケーシチョーとか言う警備兵っぽい者たちが来ましたが、その時は人型で対応しました…… やっぱりあれなんですかね? ウチの大将って…… 馬鹿なんでしょうか?」
コユキは表情に同情を湛えながら断じた。
「無論馬鹿ね、大馬鹿よ! んまあアタシや善悪、バアルちゃんもそうかも知れないけど…… 兎に角、今後は人型オンリーでやりなさい! 動物はー、そうね、ウチの実家から烏骨鶏(うこっけい)を何羽か連れてくるように手配しておくから、任せて置きなさい」
ほう、天下の秋葉原で烏骨鶏(うこっけい)カフェか、中々斬新じゃ無いか! 受けるかどうかは兎も角……
何度も感謝のお辞儀を繰り返している三柱を前にコユキが素っ頓狂な声を上げた。
「アレレレェッ! 幸福寺じゃないのにオリジナルの姿を取れてるのって何でな訳ぇ? ここ、秋葉原ってそんなに魔力多いのぉ! こんな人だかりでそれだとヤバいんじゃないのよぉ!」
コユキの声に揃ってキョトンとした表情を浮かべる悪魔達。
グラシャラボロスが赤いエプロンのポケットに手を入れて何やら取り出して見せながら言ったのである。
「コユキ様はご存じなかったんですね? 最近、魔界の研究機関が発表したんですが、これ、『魔石』と呼ばれているんですけどね、飼育種の魔物が狂ったように狂暴になる事案が頻発しましてね、やむなく退治した際に体の中から発見されたんですよ、これが…… んで研究して分かった事がですね、これ中に内包された魔力が全く動いていないんですけどね、上位の悪魔が吸収すると一時的に魔力がメチャクチャ高まるって事らしいんで、今回の開店前にムスペルのホームセンターで買いこんで来たんですよ、動物、というかオリジナルの姿になれるんで、一個で大体一時間くらいですかね?」
研究機関にホームセンター、か…… もう私の理解の範疇を越え捲ってんな……
そんな事より話の内容が重要である。
ここに来て私にとって馴染み深いキーワード『魔石』が出て来たのである。
ここまでの流れ的に、てっきり使われ捲っている『魔核』がどこかのタイミングで『魔石』と呼称が変化した、そんな所だろ? 位に軽く考えていたのだが、悪魔や幸福一族、茶糖一族が体内に持っている『魔核』とモンスターと化した畜産動物や、丹波(たんば)晃(あきら)の患者さん達、更に魔力を満たす事で変態したおりんから出て来た『魔石』は全然違う物らしいでは無いか?
私の時代では、現代で言う所の乾電池的な立ち位置の『魔石』がこの辺りで悪魔達が利用し始めていたとは、いやはや驚きの事実である。
観察にも俄然集中できる、いいやせざる得ない心持である。
期待を込めて続けて見て行く事としよう。