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コユキは言った。


「ちょっと、チョットチョットこれってぇ? 今話題の中心にあるあの赤い石じゃないのよ? 何、アンタ達ムスペルの悪魔達にとってはホームセンターで気楽に買える位の物になっちゃってんの? コユキ驚き、コユキ、超ショックなのよォぉぅ!」


この声にはガチョウ頭のナベロスが答えるのである。


「いやいやいや、私達もお抱え学者の言を取って、いち早くアスタロト様にはお伝えして居りますよ、レポートで! ヘルヘイムにはそもそも家畜が居らず悪魔と魔獣ばかりでしたからバアル様はお知りでは無いかも知れないとは想像していましたが…… 我々としては家畜の豊富な現世(うつしよ)に御住みになって居られるコユキ様、善悪様のような至高の御方(おんかた)たるお二人が知らなかった事の方が余程驚きなのですがぁ……」


コユキは頬をパンパンにしてイライラしながら答えた。


「んなの一切聞いていなかったんだから知り様がないじゃないのぉ! んなの、今日初めて聞いたわよ? んまあ、アスタが教えてくれなかったのは大方見当がつくし…… んーと、となると状況は一変したって事だわね…… 魔界産の魔石なんて物騒な物、只でさえ魔力過多で色々起っちゃってる現世(うつしよ)で使わせる訳には行かないわ! アンタ等三柱は取り敢えず魔界、ムスペルに戻りなさいよっ! んで、ネヴィラスやサルガタナスに言いなさいっ! アタシに指示されて戻って来たって事をね…… ここまでオケイかな?」


「「「はい、至高の御方(おんかた)、ルキフェル様、ここまでオケイです!」」」


声を揃えた三柱は流石はアーク、エンジェルかデーモンかは分からなかったが上位者の持つ高い知性が感じられる。

少なくとも彼らの主人、恐らく大切な報告のレポートを読んでいないだろうアスタロトに比べれば随分賢いようであった。


どうせ元々閑古鳥が大量発生して壮大なコーラスを歌い捲っていたカフェで有ったが、念の為厳重な施錠を施した一同は、入口のサインプレートをクローズに変えて二手に分かれたのであった。

三柱のアークデーモンは人目に付かないクラックまで移動してから魔界に帰るそうで、不人気店を営んでいたにも拘(かかわ)らず、生意気にもタクシーを拾って去って行ったのである。


「ふう、魔界でも新たな発見があったとは…… こりゃいよいよ地球ヤバイ状態って事よね? そうとなればノソノソしてられないわ! ねえデスティニーさん、最後のレグバ、ロット・ラダって南の担当者って事は沖縄とかなのかな?」


デスティニーは首を振って否定しながら答える。


「日本に来てから元々は小笠原の父島だよ、でも今回の周回では重要な変更を受け持っているから南方じゃなくて中央に位置してるんだ、コユキ達の住んでるお寺の近くだよ」


「お、そうなの? それは楽ね、助かるわ!」


「ああ、まあロット本人にとっては本拠地って言うか、自分の属性に位置する場所から離れての作業だから辛かったと思うけどね、んまあ死んじゃあいないっしょっ」


「し、死ぬ?」


「あー、大丈夫なんじゃね、一応俺らラダのリーダーだから元気っしょ」


物騒な物言いをしておいてからテキトーな感じで自ら打ち消すデスティニーの軽薄さに溜息を吐くコユキであった。


シャーッ!


「お待たせコユキさん! 貰ってきましたよサイン♪ はいこれ!」


「ひっ! ああ、結城さんか、びっくりしたわ…… 面倒掛けて悪かったわねぇ、ありがとだわん! んでもさあ、結城さん電動キックボードで歩道に乗り上げるの良くないわよ? 一億総キャメラメンの時代なんだからさ、晒されちゃうわよ?」


「あー大丈夫ですよ! みんなやってるじゃないですか? あんなのオールドメディアが大げさに騒いでいるだけですってば! 余裕ですよ余裕!」


「そう…… まあ良いけど、気を付けなさいよ、それと今みたいな感じの言葉、善悪には言っちゃあ駄目よ! 一日中お説教くらっちゃうからね! さてと…… ほう、これがアニメ界の巨人のサインか、なるほどなるほど、ん? むむむっ! こ、これは……」


物珍しそうに合体ロボの背中に施されたサインを眺めていたコユキが不意に黙り込んで何やら考え込むのであった。


「コユキどしたぁ?」


「コユキさん、大丈夫ですか? 何か気になる事でも?」


コユキはいつに無く真剣そのものの表情を浮かべながら答えるのであった。


「結城さん、会社歩いて直ぐだって言ってたわよね? ちょっとお邪魔させて貰ってもいいかしら? んで、デスティニーさん、もうチョットだけ帰りが遅くなるわ、ごめんだけど」


「え、ええ、構いませんよ、ご案内します」


「俺も良いけどさ、なんかあったの?」


「少しね……」


その後、十分ほど歩いて到着した結城氏のオフィスで数分間過ごしたコユキは、ブンブン手を振って見送る結城昭に背を見せると、今度こそデスティニーを伴って帰還の途についたのである。

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