第1章 1話
BARでの出会い
紗知編
とりあえず4人は仲間が欲しい
ゲートをくぐり、誰も周りにいないことを確認しては指を鳴らすとゲートはまるで最初から何もなかったかのように姿を消した
久しぶりに吸う外の空気は美味しかった、と言いたいところだがどうも空気は澱んでおり、人類がそれぞれの武器を持ち他人類を追いかけ回し、捕まえようと、殺そうと必死だ
他人類は他人類で攻撃をし返す者もいれば、逃げ回るだけの者もいる
これじゃあ地獄とあまり変わらないじゃないか
そんな事を心の隅で思っては溜息をつき、歩き出す
せっかく羽を広げてひとっ飛びしようとしたがそんなことをしたら人類からは格好の的で見つかったら追いかけ回されるだろう
ロングコートを着て、自身の羽を隠し、白く綺麗な髪は申し訳ない程度に隠そうとシルクハットを被り、サングラスをかけ目を隠す
空は暗いが街の蛍光板や街頭に照らされて明るい街中のひとつに狭い通路を見つける
周りにバレぬように顔を伏せ、狭く暗い通路を上品な靴を鳴らしては歩く
そこにひとつの暗い通路には似合わぬ、眩しすぎる程明るい光が出ている蛍光板があった
そこの蛍光板にはBARと書かれたいた
ここは唯一、人類と他人類が混じってゆっくりと会話を出来る場所であり他人類のひとつの隠れ家にもなっているそうだ
そんな場所に重い扉を開けては入る
普段、そんな酒を飲まない自分がここに来たのは理由がある
ここに仲間にしたい目当ての子がいるからだ
カランコロンとベルが鳴り、バタンと音を立てて扉が閉まる
クラシックの音楽で暖かい電球の明るさが店中を包み込む
軽く辺りを見渡し、目当ての子を探す
カウンター席の隅の方で白と黄色の綺麗な髪を下ろし、黒い色の手袋でカクテルグラスを持っては、上品にグラスに口をつける姿を見つける
手元の分厚い本を見つめ、再度確認をしてはゆっくりとその子に近づき隣に座らせてもらう
向こうは少し驚いたような表情を見せこちらを向いてはまたすぐに顔を正面に戻す
ゆっくりとカクテルグラスをテーブルに置くと、口を開く
「私に何か用ですか?」
そう聞かれては、自身のサングラスやシルクハットなどを取る
どうやら彼女は私の事をただ人類から逃げ回っているだけだと思っているようだ
「そりゃあ用があるから隣に座ってるに決まってるじゃん」
そう優しく笑いながら彼女に話す
だが返事は案外冷たいもので
「何か用があるなら早く話してください、私は1人でゆっくりしたいんです」
冷たい子だな、なんてこっそりと思っては自身はウィスキーをひとつ頼み、本題へと移るように彼女に一言言う
「ねぇ、私と一緒に世界を変えてみない?」
まるで決め台詞のようにそう言ってはゆっくりと彼女は改めてこちらに向き直り口を開く
「馬鹿なんじゃないですか?私達に世界国家を変えれる訳がありません」
当たり前の返事が返ってくる
どうにか協力させようと方法を考えていると彼女が口を開く
「私は人類も他人類も嫌いです、信じれるのは自分だけなので」
人類を嫌うのは理解できるが他人類を嫌うのは理解が出来ない
その疑問を問いただそうとするとそれを察してくれたかのように先に口を開けてくれた
「私はちょうど1年程前にヴァンパイアに母を喰い殺されました」
「いや、正確には出血多量で亡くなりました。母の首には多数の噛まれたような傷跡ばかりが痛々しく残っていました」
「母は他人類ではなく普通の人間です、噛まれて流れていく出血をすぐに止める事なんか出来ずにただ何も出来ずに亡くなっていきました」
「そしてその直後に人類が私の家屋にさまざまな武器を持って攻めてきました、そこからは一切記憶がありません、目の前にはただ握り潰されたであろう残骸があっただけでした」
「話が広がってしまいましたがこれで何となく分かりましたよね?とにかく私は人類も他人類も嫌いですそれにこんな無計画なルールを作る世界国家も大嫌いです」
あぁなるほど、そりゃあどちらも嫌う訳だ
長々とした話の途中に出されたウィスキーを少しずつ嗜むように呑みながら色々と考えているとまたもや彼女が口を開く
「でもどうせ私は行く宛てもありません、貴女のその計画、乗ってあげますよ」
穏やかにそう笑う彼女に私は残りの少ないウィスキーを一気に飲み干しては彼女の両手を握る
相手はあまり嬉しそうな顔はしていなかったが私は何度も感謝を伝えた
きっと今の私は目が輝いているだろう
だが周りの反応は冷ややかなものだった
周りは影でこそこそと囁く
あんな馬鹿げた目標無理に決まってるだの、世界国家に敵なう訳ないだの
黙って見とけと心の隅で思いながら必ず変えてやるという私の決心を更に固めてくれた
とりあえずは自己紹介だ、私の名前を名乗り、その後に相手の名を聞く
「私は黒美、貴女は?」
「私は紗知です、そういえば貴女、けっこうな年齢に見えますけど一体いくつです?」
初対面でなんて失礼なとは思ったがしばらく外に出ていなければそりゃあ老けているように見えるだろう
「永遠の18歳とでも言っておこうかな~、そういう貴女は何歳なの?」
ふざけるように答えては紗知にそう聞く
「18歳はお酒を呑んだら駄目ですよ?まぁ私は21歳ですけど」
相手も冗談交じりにそう言い、年齢は真面目に答えてくる
…なんかふざけて答えてる私が恥ずかしくなってきたな
軽く溜息をつくと身だしなみを整え、万札をカートンに1枚置くと店を後にする
ゆっくりと相手の歩幅に合わせて歩き出す
そう歩いている間に脳内で色々と考える
恐らく紗知の過去話を聞く限り、彼女の家屋に攻めてきた人類を握り潰したのは彼女だろう
そして、彼女の母を殺したのはヴァンパイアと言ったが私の本にはその他人類は載っていなかった、最近の他人類なのだろうか
最後に、彼女の手袋は自身の力を抑制するための手袋なのだろう
彼女はなるべく怒らせないようにしよう
彼女が人類を握り潰してしまうという行動は恐らく能力暴走だろう、能力暴走には自分も心当たりがある
地獄での人類を、警官を、他人類を、手下を、殺してしまったのは恐らく自分だろう
気がついたら周りには誰もいなく、辺りを見渡してもあるのは消し炭の残骸だけ
そして何よりの証拠は殺めてしまったという手の感覚と魔力を最大限まで使った時に押し寄せる疲労感
自分がやってしまったんだという後悔とと同時にこれからは能力暴走が起こる度に自身の1番の弱点を傷つけようと決めた
それで今日までずっと抑えてきている
他人類は生きていれば必ず能力暴走が起こる
能力暴走は意識がなくなり、自身の能力を最大限まで引き出され、無差別に人を殺める
それを世界国家は危険対象とし、人類に捕まえる、殺めるように命令する
1度、能力暴走を抑制するための薬を作ればいいんじゃないかと思ったが無駄だった
どうやら世界国家は他人類に無駄な金は使いたくないらしい
だから各々それぞれの方法で能力暴走を抑える
遺伝子融合の実験で使われている他人類は特に能力暴走が多いはずだ
そんな子を1人でも救うために世界国家を変える
明日は紗知と2人で森の方へと行こう
新しい仲間を見つけるために
私達の狙いはたった一つ、世界国家を変える、これ一筋だ
コメント
1件
一気に見させてもらったー!!✨ 黒美と紗知がここで出会ったのか、、、 そして最初のメンバーはこの二人なんだな!! このあとは怜が仲間になるのかな? それはそうと、紗知がアズのことが嫌いなのって、母親がヴァンパイアに○されたからか、、、? これからどんな展開になるのか、続きもとても気になるわ!! 投稿お疲れ様!🍵