テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#絶滅どうぶつ
#ラブコメ
とある放課後の空教室で大人と子供の話し声がする。
「ねーセンセェ?」
その青年─在原祐一は担任の猿先生に話しかける。
猿先生はスマホから目を離して在原を見る。一応猿先生とは進路の話をするつもりであった。
一応。
「何?」
「センセェ、来年になったらもう引っ越すんでしょ?」
在原はもじもじと机の角を目で追って話している。時折、こちらをちら、と見て様子を伺ってくる。
「まぁね~。マレーシアで豪遊してくるわ。」
在原がバッと顔を上げた。
猿先生が遠くに引っ越すことは知っていたが、まさか海外とは。
「マレーシア!?豪遊!?聞いてないんですケドぉ!てかセンセェそんなお金あるの?」
在原が立ち上がってそうオーバーなリアクションをすると、猿先生はスマホを再び持って、何かを調べ始める。
「全然ヨユー。」
そして猿先生はスマホを目の前に持ってきてスクショを見せてきた。
その写真にはやたら良い雰囲気の建物が写っていて、まさに豪邸だった。
すると猿先生の指が画面の端をこすれて、別の写真が表示された。
裸でネクタイを頭に巻き、こちらに向けてポーズを決めている猿先生。
「へーぇ。良い写真ジャン。これセンセェの趣味?」
画面が切り替わったことを知らない猿先生が答える。
「うん。なかなかにイケてるでしょ~?」
「うんめっちゃイケてる。」
そうしてスマホを引っ込めた先生は画像が切り替わっていたことに気付いた。
流石の猿先生でも恥ずかしいだろうな、と一生懸命フォローの言葉を探したが、見つからなかった。
裸で写真を撮る男のフォローなんかしなくていいのでは?
という結論にたどり着いた。
しかし猿先生が恥ずかしさに慌てふためくことはなかった。期待して損したぜ。
「マレーシア、俺も連れて行って。」
「─は?」
猿先生が固まった。裸の写真を見られても動揺しなかったのに。
「お前、マヂで言ってんの?」
猿先生は本気で受け取ってくれたらしい。どうせ、冗談として流されると思ったのに。
在原の両親は小さい頃に交通事故で亡くなった。
引き取ってくれたおばさんも中学の頃に亡くなってしまった。
中学生、成長期という大切な時期に親を亡くした在原は荒んで、よく学校をサボった。
そのせいで友達はできなかった。
そんな寂しいの在原の環境を知っているから、猿先生は本気で考えてくれた。
「いいよ。」
長考の末に出てきた答えがあっさりとしすぎていて在原は一瞬断られたと思った。
「…マジ?」
「ここで冗談言わないだろ~?」
つまり、俺もマレーシア行けるってコト…!?
レッツ豪遊生活…!?
「レッツエンジョイマレーシア!!」
在原がそう叫ぶと間髪入れずに猿先生が言う。
「あんまり調子乗ってると置いて行くから。」
「わがっだ!!」
ああ、もう早く卒業したくてたまらない!
✌在原、無事に留年✌
人込みにもまれながら在原は空を見つめていた。
「「留年したらすんなり心置きなくマレーシア行ける!」とか思ってたけどさ。」
「いざ留年すると違うね。結構心に来る。」
「ざまぁ。」
「教師なら励ましの言葉でもかけるべきだ!」
「僕もう教師じゃないし。」
「そっか。じゃあヨロシクな。猿。」
「急に態度変わる。」
ふと、気になった。そういえば、いつ行くんだとか、荷物とか、一切聞いてないや。
「そういえばさ。」
「ウン。」
「いつ行くの?マレーシア。荷物とか、用意してないんだケド。」
在原が猿先生を見ると、二人の視線が絡まった。
猿先生はにっこりと笑みを浮かべた。
「荷物はいらないよ。全部、捨ててね。」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!