テラーノベル
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「全部、捨てるって、どういう─」
「そのままの意味だけど?」
猿先生はまた前を向いて言った。
─全部、捨てる。その言葉の意味がわからなくて、在原は黙り込んでちらちらと猿先生の方を伺うばかりだった。
猿先生はまた静かに言った。
「さぁ。じゃあもう飛行機来るから、行こうか。」
猿先生はそう、誤魔化すように手を叩いて、壁から背を離した。
猿先生は校門のほうに向かって歩き出した。行こうか、と言いながら、在原を待つ気は無いようだった。
在原は早歩きでわけもわからないままついていく。
「待っ、何、捨てるって」
「ウルサイなぁ。どうせ大事なものなんて無いんだから、良いでしょ。」
それはそうだ。在原は家具どころか、スマホすら持っていなかった。連絡先を交換する相手がいないため、必要もなかったが。
そして職員用の駐車場にとめてあった猿先生の車に乗り込む。
空港に向かうまで、猿先生と在原の間には妙な沈黙が生まれた。気まずい空間だった。
空港に着くと、職員に案内されてすぐ滑走路まで入れた。
一つの小さな飛行機がとまっていた。プライベートジェットだ。
「…猿先生、お金持ち…」
プライベートジェットを購入するのには数億から数百億までかかるらしい。
チャーターする場合でも、何百万はかかるだろう。
「まぁね~。プライベートジェット乗る機会なんて今後一生無いと思いなよ。」
恩着せがましい。
プライベートジェットの中は無駄に広くて、人間二人が乗るだけのために何百万の金が使われたと思うとゾッとする。
「絶対こんなデカいサイズじゃなくてよかったじゃん。」
「ごちゃごちゃうるさいんだよお前~」
在原は基本どんな状況でも寝れるタイプの人間である。
そのため在原は今、極限の眠気に襲われていた。
「眠い!!!!!!!」
「寝なよ。」
「寝ようと思ってんスけど、ポジションが見つかんなくて…。」
在原は頭を微妙にずらしたり、体の向きを変えたりして、そのポジションとやらを探している。
「死ぬほどどうでもいいわ。」
在原はそのまま、ようやく眠りに落ちた。
猿先生が在原を叩いて、在原は目を覚ました。
割と本気の一撃だったようで、在原の後頭部は悲鳴を上げている。
「起こし方」
在原が後頭部をさすりながら猿先生をじろりと睨みつける。
「あはは、5回くらい声かけたけどね。起きなかったから。」
「強いんだ、力が!」
「ごめんごめーん」
全く反省の色が見えないその謝罪を聞きながら、在原はふと思った。
「あれ、なんで起こしたの?」
「あぁ、そうだった。もうすぐ到着するよ。」
猿先生が窓を覆っていたカーテンを引く。すると遠くに大陸が見えた。
「うおおおおおおッ!!すっげぇ!!」
在原は窓に張り付いた。これが生まれて初めて海外を生で見た子供の反応である。
猿先生はぷっ、と笑って
「ガキかよ~」
と言った。
在原は眉間にしわを寄せてぼやく。
「…ガキじゃねぇし」
「拗ねた?」
「拗ねてない。」
猿先生はニヤニヤと笑みを浮かべながら在原の唯一の持ち物、前の座席に鎮座しているジャケットを指さした。
「ま、なんでも良いケド。40秒で支度しなよ。もう降りるから。」
在原はあせあせとジャケットを羽織りながら、ぼやく。
「楽しみだけど、猿先生と二人っきりなのはちょっと嫌かもぉ~」
「言うねお前。それに二人っきりじゃないし。」
「え、そうなの?」
「うん。いっぱい知り合いと合流する予定だからね。くれぐれも粗相のないように。」
「わかった!…そっか、確かに。猿先生が一人でこんだけの金用意できるわけないしな!」
「言うねお前。」
そうして飛行機は静かに着陸した。
「マレーシアだ…」
在原は舗装された道路を踏みしめて感嘆の声を漏らす。
「イヤ道路は日本と変わんないでしょ。つか行くよ。到着ロビーで待ってんだよ。」
「誰が?」
在原は猿先生にほぼ引っ張られるような形でついていく。
「誰がって、さっき言ったでしょ。知り合いね、知り合い。」
在原は少し緊張した面持ちで歩く。
─どんな人なんだろうか。やっぱり強面のおっさん出てくるのかな…。
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緑茶は飲めないが紅茶は飲める
コメント
1件
わあ~~😭💕 第2話も最高だったよ!!「全部、捨てる」って猿先生の意味深なセリフ、めっちゃ気になるし、在原くんが初めて海外見たときの「うおおおおおッ!!すっげぇ!!」にはこっちまでワクワクしちゃった🛩️✨ プライベートジェットでいきなりマレーシア行きとか展開エグすぎて好き!!知り合いって誰なん?次話マジで待ちきれないよ〜!!🌸