狩り手たちが牛丼屋でようやく会議を終え、のんびりと食事を楽しんでいたときだった。
ガシャーン――!
店のドアが突然勢いよく開き、風のような速さで一人の男が飛び込んできた。痩せた体に目深に被ったフード、鋭く光るナイフを手にしている。
「おいおい、ここは全員揃ってるじゃないか。ちょうどいい!」
その男は大声で叫び、異様に白い歯を見せながら笑った。
「どちら様だ?」
渋谷が眉間に皺を寄せ、ナイフを握る男に冷たい視線を向ける。
「俺の名は狩人!」
男は胸を張って名乗った。
「俺はお前たち狩り手を狩るために生まれてきた存在だ!さあ、覚悟しろ!」
「…いや、狩人ってダサくない?」
南無がポツリと呟いた。
「ダサいとか言うな!」
狩人が慌てて反論する。
「俺の名前は実は、”ブラック・フェニックス・シャドウ・クロウ”なんだ!」
「うわ、余計ダサい。」
南無が即答した。
「お前ら、今笑ったな!?大事なのは名前じゃない!俺が狩り手の秘密を全部知ってるってことだ!」
狩人はテーブルをバンと叩いた。
「秘密って何だよ。」
港が慎重に問いかけると、狩人はニヤリと笑った。
「お前たちのリーダー、実は双子の弟だろ?」
「…うちにリーダーなんていないし、双子もいない。」
渋谷が呆れたように突っ込む。
「そうか…なら、観音!お前が本当は男だってことを暴露するぞ!」
「私は生まれた時から女だけど?」
観音はあくびをしながら答えた。
狩人は一瞬言葉を詰まらせるが、すぐに別の嘘を考え出した。
「じゃあ石動!お前が実は異能者だってバラしてやる!」
その言葉に場が一瞬静まり返る。
「え、何で知って…いや、そんなわけないだろ。」
石動は冷や汗をかきながら慌てて否定した。
狩人が虚言を次々と放つ中、渋谷がナイフを取り出して立ち上がった。
「おい、あいつウザいからさっさと片付けるぞ。」
「待て、渋谷!」
法師が静かな声で止めた。
「彼は虚言癖があるようですが、何か目的があるはずです。」
「虚言癖が目的のすべてだろ。」
南無が冷たく言い放つ。
その時、狩人が突然叫んだ。
「爆弾を仕掛けた!お前ら全員、ここで死ぬんだよ!」
全員が一瞬身構えたが、観音がじっと狩人を見て鼻で笑う。
「嘘だね。本当に爆弾があったら、まずお前が逃げるだろ。」
「ぐっ…!」
狩人は顔を真っ赤にして唇を噛んだ。
「お前、何が目的なんだ?」
港が優しく問いかけると、狩人はうつむいてポツリと答えた。
「…俺は、ただ認められたかっただけだ。」
「認められるために虚言吐きまくったのかよ。」
渋谷が呆れたように言う。
「でもさ。」
観音が口を挟む。
「こんな風にみんなで牛丼を食べながら話すのも悪くないでしょ?」
狩人は少し戸惑いながら、空いている椅子に腰を下ろした。
「…まあ、牛丼は嫌いじゃないけど。」
「それじゃあ、乾杯でもするか?」
南無が不敵に笑う。
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