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「千鶴?どうしたの?」
芽依は仲間思いの優しい女の子。私が部活で戸惑っている時に優しく話しかけた芽依は千鶴のことが大好きだ。
千鶴は芽依の目を見て
「あはは…なんにもないよ。」
と、言った。架那の後を追う気力もなかった。今は芽依と話していたい。
芽依はムスッとした表情で千鶴の方を見た。千鶴は困った顔をして
「め、芽依?」
と、それとなく訊いてみると急に壁に押し付けられた。
「千鶴は無理しすぎなのよ。架那だって我慢ならなかった様子だし、大丈夫よ。」
「無理なんて…」
口を抑え込まれた千鶴がもごもご言っていると心を落ち着かせた架那が鬼のような形相で二人に近づいてきた。無意識に千鶴と接近していたことにやっと気づいた芽依が顔真っ赤にして一歩下がった。
「芽依?何してるの!!公共の場よ!(?)」
「……ん。」
「芽依?私の千鶴だよ?」
その言葉が尺に触ったのか、普段温厚な情緒の芽依が
「架那、親友を傷つける人に任せられないかな。そもそも、千鶴は誰のものでもないし。千鶴と私と架那で最強のイツメンなんでしょ?」
と、正論やもっともなことを伝えると架那は
「…嫉妬、千鶴と芽依が私、抜きで話してるから。」
と、震えた唇に両手を当てて説明する仕草に悩殺した千鶴は何も言葉が出てこなくなってしまった。
「千鶴…」
擦り寄ってくる架那を払い除けて練習を促してみた千鶴は架那の手を引いた。さっき架那がしてくれたように。
この時はまだ平和で仲の良い三人だったが一年最初の大会でとある事件が起きた。
「芽依が…出れないってどういうこと…ですか?」
芽依が交通事故にあってしまった。幸い命に別状は無かった。
「芽依さんは左足の関節が損傷している状態です。検査結果ですが、松葉杖での生活を余儀なくされます。弓道部どころか学校への登校さえままならないです。」
弓道部にとって芽依を失うということは強い衝撃と痛手を数多く踏むことになる。
お見舞いに来たが最悪のタイミングできてしまった。千鶴は視線を落とした。心底気まづい上に学校で伝えられた話とは違うことに憤りを感じている千鶴は握りしめた花束を見ていた。しばらくして病室から母親が出てきた。退出間際の母親は絶望と失望に暮れていた。
すぐに病室に入ると芽依が満面の笑みで
「千鶴っ!来てくれたの?」
と、千鶴を真っ直ぐ見ていた。
「轢き逃げなんでしょ?大丈夫?」
「大丈夫、生きてるし!また、千鶴と架那に会えれる体ならなんでもいいよ。」
「弓道…お休みなんでしょ…。」
そう呟くと芽依は目を見開き驚いていた。
「…いつから居たの?」
「最初から最後まで。」
そう伝えて花瓶に花を生けた千鶴は頬に垂れる涙を拭い
「架那と私が芽依の居場所作っておくから安心して!治療したり、リハビリしたりして、欲しい…。」
と、言葉に詰まりつつ千鶴は涙を飲んだ。学校でも会えない。通話もできない。滅多に声が聴けない。どうしようもない寂しさと孤独感でいっぱいになった千鶴は笑顔で
「芽依、またね。」
そう伝え、病室から出た。千鶴は廊下で号泣してしまった。今日からまともに生きて居られないや。そう思った丁度、架那から電話がかかってきた。
「…グスッもしもしィ」
『あ!千鶴~!今からカフェでお茶しない?』
「…うん。ッス、んっっ」
『おっけー!スたバに集合ねー!』
そう約束した瞬間に後ろから物が割れた音がした。急いで病室に入るとニヤついた芽依が花瓶の破片を持っていた。
「芽…依?」
涙で目が腫れ前が見えない千鶴は上手く認識出来ずに戸惑っていた。
「やっぱり、千鶴は涙脆いね。無理してるのバレバレ」
と、得意の鋭い観察眼で見抜いた芽依は千鶴の頭を撫でた。千鶴は恥ずかしくて芽依の顔を見れなかった。わざわざ芽依に泣き顔を見られたくなくてすぐに退室したのに自らそのみすぼらしい顔を晒しているのだから羞恥心がズタズタになるのも感慨深い。
「またね…」
そういい架那の待つカフェに向かった。