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不愉快な雑音をまき散らす土蜘蛛達に囲まれ、聞いた声は空耳かと顔を上げれば。
キンッと澄んだ金属が鳴る音がして、目の前の大きな土蜘蛛達が黒くて丸い光……と、いいようがないものに包まれた。
景色に大きな墨汁が落ちたような光景。
「あ……」と、声を出すと黒い光が内側へとキュッと小さくなって、瞬時に消えた。
そして驚くべきことは、黒い光が触れていた土蜘蛛達の体が跡形もなく消えていた!
まるで黒い光に空間を削り取られたよう。
土蜘蛛の群れに大きな穴がぽっかりと開く。
私も土蜘蛛達も意味がわからないと言った風に、動きを止めると。
私の周囲の土蜘蛛の群れに再び、キンキンっと甲高い音を立てて黒い光が幾つも現れ。
瞬きの間に消えては土蜘蛛達の体を消滅させた。
その様子に私より早く、土蜘蛛達が一斉にギィィィッ! と苦悶と怒りのような声を上げた。
「次は一体、な、なんなの」
──環、伏せろ。
「!!」
澄んだ鋭い声に、考えるより早く頭をさっと下げた。
私のすぐ後ろに鋭い金属音。
その音に反応して後ろを振り返ると私の頭上に黒い光が現れた。
どうやら土蜘蛛数匹が私の背後に周り、飛び掛かろうとしていたのだろうと思った。
刹那のうちに、黒い光が土蜘蛛の胴体を飲み込んでゆく。
黒い光が消えると、残された脚だけがバラバラと地面に落ちて、ピクピクと動いた。
おぞましい光景。
だが私は恐怖を押し殺して、涙が滲む視界の中、
ばっと前を向くと、土蜘蛛の向こう側。
そこにはいつもの凛々しい黒の隊服を着こなし、刀を携えた杜若様が居た!
「か、杜若様っ!!」
「遅くなって済まない。環、そこを動くな」
「はいっ!」
杜若様はたっと、真っ直ぐ私に駆け寄る。
それを阻止しようと何匹かの土蜘蛛が杜若様に飛び掛るが、杜若様が鞘から刀をすらりと抜く。
迫り来る土蜘蛛達に白刃が扇のように舞うと、土蜘蛛の体が真っ二つになり、バラバラになるだけだった。
杜若様を止められるものは何もなく。
あっという間に杜若様は、黒い艶やかな長髪を靡かせて私のところに辿り着いてしまった。
「環。大事はないかっ」
紫紺の瞳が真っ直ぐに私を見つめる。
「はいっ。大丈夫ですっ」
「よし、では俺にしがみついてろ」
言うが早いか。
杜若様は片手で私の腰を抱き上げるように、引き上げて私を立たせた。
そのまましなやかな腕が私の胴体へと回り、杜若様の視線と刀は射抜くように土蜘蛛に向けられた。
──なんて、かっこいいの。
危機迫る状況なのに、場違いな感想を抱いてしまう。