目黒side
待っても待っても我慢ばかりするから、強引に抱きしめたら、翔太くんはあっさり泣いた
今までの強情さはなんだったんだと思うくらいに、あっという間にぽろぽろと頬に雫が伝った
この人はずっとずっと誰かの温もりを待っていて
無条件に抱きしめて受け止めてくれる腕を待っていて
泣いてくれなきゃ理由がないなんて言っていないで、もっと早く抱きしめてあげればよかったのだ
ただ、それだけでよかったのだ
難しくしてたのは足踏みをしていた自分だ
誰にも弱さを見せなかった人の、濡れた瞳や頬は美しくて悲しくて
俺は黙って、ただ静かに涙を流す翔太くんを抱きしめて、頭を撫で続けた
「めめ、ありがと。お前がいてくれて良かったよ」
しばらく頬を濡らし続けた後、それを拭いもしないまんま、俺を安心させようとするかのように、翔太くんは笑顔を見せた
その泣き笑いはどうしようもなく儚くて、凛としてて、あんまりにもキレイすぎた
「俺の胸くらい、いつでも貸すから。俺の前では無理して笑わなくていいから。お願いだから……」
「ふふふ、お前のほうが泣きそうな顔してる」
そういって俺の頬に手を伸ばす翔太くんを思わず強く抱きしめた
再び俺の腕の中に引き戻された翔太くんは、少しびっくりしてたけど、何も言わずに俺に体重を預けてくれた
「お前の腕の中は陽だまりみたいだな」
2人で、お互いの息遣いだけを聞きながら、長い時を森閑と佇んでいた
そのまま静かに眠りに落ちた翔太くんは、幾分かあどけない顔になった気がする
起こさないようにそっと寝室に運んで、並んで横になる
曇りのなくなった翔太くんを眺めながら、俺も久しぶりに穏やかな気持ちで瞼を下ろした
コメント
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ほんとぅぅぅうに美しい情景を見せてくださってありがとうごさいます😭

すーごく心動かされる素晴らしいお話。ありがとうございます。