テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
※注意※
本作品は非公式の二次創作です。
原作・公式関係者様とは一切関係ありません。
作品内には独自解釈、捏造設定のほか、 一部に暴力表現、精神的に重い描写、暗い表現が含まれます。
苦手な方は閲覧をご遠慮いただき、閲覧は自己責任でお願いいたします。
完結したらタグは削除します。
最初に戻ってきたのは、痛みだった。
頭の奥が鈍く重い。
呼吸をするたび、胸のあたりが妙にざらつく。
「……っ」
喉が乾いている。
身体を起こそうとして、すぐにそれが無理だとわかった。
手が、動かない。
ゆっくりと目を開ける。
薄暗い室内だった。
どこかの倉庫みたいな、無機質で冷たい空気。
窓は見当たらない。
椅子に座らされた状態で、手首も足元も拘束されている。
「やあ」
静かな声が落ちてきて、視線を上げる。
そこにいた男は、ひどく落ち着いた顔をしていた。
「気分はどうだい?」
薄く笑っている。
穏やかそうな声音のくせに、その場にいるだけで妙な圧がある。
「……何が目的です?」
掠れた声でそう言うと、男は少しだけ肩を揺らした。
「せっかちだなぁ。もう少し世間話でもしようじゃないか」
「する気ありません」
「つれないね」
目の前の男は、近くにあった箱のようなものに軽く腰をかける。
「じゃあ、単刀直入に言おうか。少し情報が欲しくてね」
「……何の」
「色々だよ」
答えが曖昧すぎる。
「早く本題に入ったらどうですか」
「本題に入ってるつもりなんだけどな」
薄笑いを崩さないまま、男は首を傾げた。
「君はただ、聞かれたことに答えてくれればいい。そうしたら、悪いようにはしないよ」
「信用できると思います?」
「しなくていいよ。別に」
ぞわり、と背筋に嫌なものが走る。
「ただ、私は君に少し興味がある」
「……」
「前の街でも、君の名前は少しだけ聞いていたんだ」
その一言に、呼吸が止まりかける。
「何……」
「おや、その顔は図星かな」
前の街。
その言葉だけで、頭の中の違和感が一気に繋がり始める。
飛行場での知らない薬。
見たことのないやり方。
この街の人間とは微妙に噛み合わない空気。
あれは、ただの新規住民なんかじゃなかった。
「……他の街から来たんですか」
「まあ、そんなもんかな」
今度は、わざとらしくはぐらかされた。
「君がそれを知る必要はないよ」
「だったら僕が答える必要もないでしょ」
「強気だね」
男が立ち上がる。
ゆっくりとこちらへ歩いてくる足音が、妙に響いた。
「今の君の立場、ちゃんと理解してる?」
「してますよ」
「へえ」
すぐ目の前まで来た男が、少しだけ屈んで顔を覗き込む。
「それでもそんな目をするんだ」
「……」
「いいね。嫌いじゃない」
気味が悪い。
本能的にそう思う。
「868は楽しいかい?」
唐突な問いに、眉がわずかに寄る。
「何ですか、それ」
「質問だよ」
「……答える義理あります?」
「あるとも。君には、ね」
男の指先が、鎖骨のあたりに触れかける。
反射的に身体を引こうとして、拘束されているせいでうまく逃げられない。
「仲がいいんだろう?」
「……」
「ずいぶん大事にされているみたいじゃないか」
「何が言いたいんです?」
「別に。ただ、気になってるだけさ」
ふっと視線が落ち、僕の左肩に止まった。
「…お」
そこにあるものを見た瞬間、男の笑みが少しだけ深くなる。
「へえ」
嫌な予感がした。
「それ、そういう意味のあるものなんだ」
「……」
左肩に乗った、小さなピンクのうさぎ。
868に入った証みたいなもの。
みんなが当たり前みたいにつけていて、でもだからこそ、ちゃんと“同じ”なんだと思えるもの。
「みんなもつけてたよねぇ」
その言い方に、心臓が嫌な音を立てる。
「……触らないでください」
思わず口をついて出た言葉に、男が少しだけ目を細める。
「おや」
「……」
「それ、そんなに大事なのかい?」
男の手が、わざとらしくそのうさぎへ伸びる。
反射的に肩を捻って避けようとするけれど、拘束された身体じゃまともに動けない。
「やめろ」
「へえ」
「触るな」
今度は、はっきり言った。
それが自分でも少し意外だった。
痛いとか、怖いとか、そういうのより先に、ただ触らせたくないと思った。
こんなところで、こんな奴に。
「それ、取ったらどうなるかな」
ぞっとするほど軽い声だった。
「……っ」
「みんな、どんな顔するんだろうね」
「やめろって言ってるだろ」
「怒った」
男の笑みが、そこでほんの少しだけ変わる。
「へぇ、それそんなに大事なんだ」
指先が顎にかかる。
無理やり上を向かされるみたいにして、視線が合う。
その瞬間、男の顔から笑みが消えた。
「……もっと取りたくなってきた」
501
5,486