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きんもくせい@
6,403
※注意※
本作品は非公式の二次創作です。
原作・公式関係者様とは一切関係ありません。
作品内には独自解釈、捏造設定のほか、 一部に暴力表現、精神的に重い描写、暗い表現が含まれます。
苦手な方は閲覧をご遠慮いただき、閲覧は自己責任でお願いいたします。
完結したらタグは減らします。
最初に戻ってきたのは、痛みだった。
頭の奥が鈍く重い。
呼吸をするたび、胸のあたりが妙にざらつく。
「……っ」
喉が乾いている。
身体を起こそうとして、すぐにそれが無理だとわかった。
手が、動かない。
ゆっくりと目を開ける。
薄暗い室内だった。
どこかの倉庫みたいな、無機質で冷たい空気。
窓は見当たらない。
椅子に座らされた状態で、手首も足元も拘束されている。
「やあ」
静かな声が落ちてきて、視線を上げる。
そこにいた男は、ひどく落ち着いた顔をしていた。
「気分はどうだい?」
薄く笑っている。
穏やかそうな声音のくせに、その場にいるだけで妙な圧がある。
「……何が目的です?」
掠れた声でそう言うと、男は少しだけ肩を揺らした。
「せっかちだなぁ。もう少し世間話でもしようじゃないか」
「する気ありません」
「つれないね」
目の前の男は、近くにあった箱のようなものに軽く腰をかける。
「じゃあ、単刀直入に言おうか。少し情報が欲しくてね」
「……何の」
「色々だよ」
答えが曖昧すぎる。
「早く本題に入ったらどうですか」
「本題に入ってるつもりなんだけどな」
薄笑いを崩さないまま、男は首を傾げた。
「君はただ、聞かれたことに答えてくれればいい。そうしたら、悪いようにはしないよ」
「信用できると思います?」
「しなくていいよ。別に」
ぞわり、と背筋に嫌なものが走る。
「ただ、私は君に少し興味がある」
「……」
「前の街でも、君の名前は少しだけ聞いていたんだ」
その一言に、呼吸が止まりかける。
「何……」
「おや、その顔は図星かな」
前の街。
その言葉だけで、頭の中の違和感が一気に繋がり始める。
飛行場での知らない薬。
見たことのないやり方。
この街の人間とは微妙に噛み合わない空気。
あれは、ただの新規住民なんかじゃなかった。
「……他の街から来たんですか」
「まあ、そんなもんかな」
今度は、わざとらしくはぐらかされた。
「君がそれを知る必要はないよ」
「だったら僕が答える必要もないですよね?」
「強気だね」
男が立ち上がる。
ゆっくりとこちらへ歩いてくる足音が、妙に響いた。
「今の君の立場、ちゃんと理解してる?」
「してますよ」
「へえ」
すぐ目の前まで来た男が、少しだけ屈んで顔を覗き込む。
「それでもそんな目をするんだ」
「……」
「いいね。嫌いじゃない」
気味が悪い。
本能的にそう思う。
「868は楽しいかい?」
唐突な問いに、眉がわずかに寄る。
「何ですか、それ」
「質問だよ」
「……答える義理あります?」
「あるとも。君には、ね」
男の指先が、鎖骨のあたりに触れかける。
反射的に身体を引こうとして、拘束されているせいでうまく逃げられない。
「仲がいいんだろう?」
「……」
「ずいぶん大事にされているみたいじゃないか」
「何が言いたいんです?」
「別に。ただ、気になってるだけさ」
ふっと視線が落ち、僕の左肩に止まった。
「…お」
そこにあるものを見た瞬間、男の笑みが少しだけ深くなる。
「へえ」
嫌な予感がした。
「それ、そういう意味のあるものなんだ」
「……」
左肩に乗った、小さなピンクのうさぎ。
868に入った証みたいなもの。
みんなが当たり前みたいにつけていて、でもだからこそ、ちゃんと“同じ”なんだと思えるもの。
「みんなもつけてたよねぇ」
その言い方に、心臓が嫌な音を立てる。
「……触らないでください」
思わず口をついて出た言葉に、男が少しだけ目を細める。
「おや」
「……」
「それ、そんなに大事なのかい?」
男の手が、わざとらしくそのうさぎへ伸びる。
反射的に肩を捻って避けようとするけれど、拘束された身体じゃまともに動けない。
「やめろ」
「へえ」
「触るな」
今度は、はっきり言った。
それが自分でも少し意外だった。
痛いとか、怖いとか、そういうのより先に、ただ触らせたくないと思った。
こんなところで、こんな奴に。
「それ、取ったらどうなるかな」
ぞっとするほど軽い声だった。
「……っ」
「みんな、どんな顔するんだろうね」
「やめろって言ってるだろ」
「怒った」
男の笑みが、そこでほんの少しだけ変わる。
「へぇ、それそんなに大事なんだ」
指先が顎にかかる。
無理やり上を向かされるみたいにして、視線が合う。
その瞬間、男の顔から笑みが消えた。
「……もっと取りたくなってきた」
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