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第13章
正義は、信仰になる
第81話:救済を求める声
最初は、祈りだった。
「どうか、彼に会わせてください」
「野山健に、救ってもらいたい」
地方都市の外れ。
小さな集会所に、人が集まり始める。
怪我人。
病人。
家族を失った者。
共通点は一つ。
国家を、信じられなくなった人間たちだ。
「健……」
リュシアが、嫌な予感を隠さず呟く。
「始まったわね」
第82話:語られる奇跡
噂は、物語に姿を変える。
「彼は、触れるだけで傷を癒した」
「一人で軍隊を退けた」
「神に等しい力を持つ人間だ」
健は、頭を抱えた。
「……誇張だ」
「でも、人は事実より“希望”を信じる」
エリナの言葉は、冷たく、正確だった。
「あなたは今、
“証明された存在”ではない」
「“信じられた存在”よ」
第83話:最初の祭壇
街外れの廃教会。
壊れた神像の前に、
粗末な布と、灯りが置かれていた。
中央には――
健の似顔絵。
「……やめろ」
健の声は、震えていた。
「俺は、神じゃない」
だが、集まった人々は跪く。
「あなたしか、いないんです」
その瞬間、
健は理解した。
(敵は……
説得できない)
第84話:信仰の成立条件
観測層。
ノクスの視線が、数値を追う。
「条件、達成」
「恐怖」
「救済体験」
「象徴の単純化」
監査官が問う。
「止めますか?」
ノクスは、首を横に振った。
「いい」
「これは、
人間自身の選択だ」
第85話:拒絶という罪
健は、壇上に立った。
「聞いてくれ」
「俺は、
みんなを導けない」
「間違えるし、
失敗もする」
「だから――」
「神になれない」
沈黙。
次の瞬間。
「……見捨てるのか?」
誰かが言った。
「結局、
自分だけ助かればいいのか」
善意が、刃に変わる。
第86話:分かれ道
夜。
信仰集団の一部が、
独自に動き始めていた。
「健様を、
守るために」
武器を持つ者。
敵を決める者。
「管理局は異端だ」
「逆らう者は、敵だ」
リュシアが歯を食いしばる。
「……最悪の形だ」
第87話:神を殺す方法
エリナが、健に言う。
「神は、
否定しても死なない」
「崇拝を断ち切るしかない」
「どうやって?」
「あなたが、
“弱さ”を見せるの」
健は、静かに目を閉じた。
「……それで、
誰かが死ぬかもしれない」
「ええ」
「でも、
神は必ず誰かを殺す」
第88話:失敗の公開
健は、敢えて一人で動いた。
救えるはずの現場。
だが――
間に合わなかった。
その事実を、
隠さなかった。
「俺は、失敗した」
「万能じゃない」
群衆が、ざわめく。
失望。
怒り。
裏切り。
だが――
一部は、立ち尽くした。
第89話:残る者、去る者
信仰は、割れた。
「それでも、健様だ」
「いや、ただの人間だ」
去る者。
残る者。
健は、深く息を吐いた。
「……少しは、
楽になったな」
リュシアが、微笑む。
「神様は、
向いてなかったわね」
第90話:次なる敵
だが、エリナは空を見る。
「終わってない」
「国家は、
この混乱を利用する」
「次は――」
健が、頷く。
「宗教戦争か」
正義は、
思想になり、
信仰になり、
そして――
兵器になる。
均衡は、
さらに危険な段階へと進む。
第13章・了