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「……どうやら僕は記憶を失くしてしまったみたいです」
道路に敷かれた布団の上に半身起こした状態で、色素の薄いふわっふわの癖っ毛男性が、困ったような顔で日和美を見詰めてくる。
「き、おく……そーしつ?」
〝記憶喪失〟という文言が、現実味をともなわないままに頭の中に舞い降りてきた日和美は、パチクリと目をしばたたかせた。
「はい……」
超絶美形。芸能人アイドルも真っ青!という甘いマスクの男に子犬のようなウルンとした目で見つめられて、日和美は自分の中の母性本能がキュン♥と音を立てて覚醒したのを感じた。
彼、年齢はきっと、いま二十三歳の日和美より上のはずだ。
そう思った日和美だったけれど、正直なところ日本人離れした男の外観からは、ハッキリとした年齢は分からない。
(考えたくないけど……まさか十代とかだったりしませんよね!?)
なんて思ったけれど、服装がスーツだからきっと違うはず!と思い直した日和美だ。
「だっ、大丈夫です! 貴方をこんな道端で押し倒して気絶させちゃった責任は私にあるんですもの! きっ、記憶が戻るまでの間、責任を持って面倒見させて頂きます!」
とりあえずは病院へ!と眼前の男性の手を握った日和美の手を、大きくてふんわりとした手のひらが包み込んでくる。
「有難うございます……」
その言葉に「うんうん」と頷きながら、日和美は彼の柔らかな手は労働者のものではないな?と思って。
「任せなさぁぁぁーい!」
ギュッとその手を握り返しながら、男の王子様みたいにふんわりした見た目から、どこぞの国のプリンスか、はたまたどこかの大金持ちの御曹司様かも!?と勝手な期待に胸を膨らませたのは日和美だけの内緒だ。
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