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話し終えるには、5分も掛からなかったと思う。相手をチラチラ見ながら俺は話した。鑑定人の表情からは、何も読み取れなかった。ただ、尻から金塊を出す件を説明しているとき、何か汚いものに触れたかのように、そいつの手が痙攣したように半開きになり、硬直したように見えた。
俺の話は終わった。目の前の男は、目を閉じている。
「あの…もう帰ってもいいですか?」
そう言って俺が後退りすると、男は言った
「これだけ上質な金を君みたいな若者が持参することは、何か常識では考えられないことが背景にあるとは思っていた。盗品だとか、密輸品だとかね。君の説明は荒唐無稽だ。馬鹿らしい。ただ、君が嘘をついているようにも見えないし、こんな馬鹿げた嘘をついてこの場を繕おうとするほどに君も愚かな人間とは思えない。」
ここで、鑑定人は外していた白手袋を再びはめ、俺の金塊をいかにも職人のような手つきで弄りまわしはじめた。
「確かに…この形は人間の排泄物に似ている。気が付いてはいたが、口には出さなかった。お客様の鑑定依頼品を汚物扱いするようなことをやっていては、商売なんざ成り立たないからね」
「ふーむ。馬鹿らしいが、信じてみるしかないのかな。これだけ高品質な金塊を定期的に持ち込んでくれるのは、正直言ってありがたい」
男は、金を卓の上に置いて、俺の方を見ずに続けて言った
「どうだろう。君を疑うわけではないが、やはり百聞は一見にしかず、だ。私も疑いをなくしてから気持ちよく商品をとりあつかいたい。」
「言いづらいんだが…一度この金を生み出すところを見せてくれないだろうか?」