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…‥数ヵ月後、僕は3年になった。
2年の終わり頃に進路を変更した。
進学から就職へと…。
何故なら、未来を見てしまったから。
僕と葵は高校卒業後に間もなく結婚するだろう。
そして娘の遥香が産まれる。
それなのに進学して大学生という訳にはいかない。
父親になるのだから。
それに葵の夫として、やってあげられる事はやってあげたかった。
急な進路の変更は、3年連続担任になった松下に、とてつもなく迷惑をかけただろう。
「先生すいません。勝手に決めちゃって」
「すいませんじゃねぇだろ。やるべき事が見つかったんなら、幾らでも迷惑かけて構わねえよ。但し、決めたからには死ぬ気でやれ」
松下に進路の変更を伝えた時に言われた言葉だった。
口は悪いが生徒の事を、これ程真剣に親身になって考えてくれる先生は他にはいないだろう。
そして僕は先生の言い付け通り、死ぬ気で勉強し就職に必要な資格をとり続けた。
松下の薦めもあって、銀行各社の就職試験を受けた。
幸いにも結果は3社中2社の内定をもらった。
そして色んな条件を検討した結果、A銀行に就職する事が11月には決まった。
でも就職が決まったからといって、遊んでいる訳にはいかなかった。
何故なら銀行側から入社するまで覚えておくべき知識と課題を渡されていたので、勉強しなければならなかった。
「葵、何で今日は急に家に来ようなんて思ったの?」
「たまにはいいじゃん」
「この前観たい映画があるって言ってたんだから、行けばよかったのに…」
「今度でいいよ」
今日は日曜日なので、いつもならどこかに遊びに行く所だが、葵は何故か僕の家に来るなんて言い出した。
両親は2人で隣街のショッピングモールに買い物に行ったので家には誰もいなかった。
葵と一緒ならどこでも良かったけど、特にする事などなかったので、ゲームをしたりマンガ本を読んだりして時間を潰していた。
昼近くなるとコンビニに昼食を買いに出掛けた。
昼食を終え、借りてきたDVDを見終わると時刻は15時になろうとしていた。
すると葵は、ソワソワと落ち着きがなくなり、何度も部屋の時計を見ては何かを気にしているようだった。
「どうかした?」
「うっ‥うん…」
プルルルル…‥プルルルル…‥
家の電話が鳴っていた。
「放っておこうか?」
「ダメだよ、出なきゃ。大事な用だったらどうするの」
「わっ‥わかった。出るよ」