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「空想体」
星の光が葉に宿る、静かな森。
風が流れても、葉は揺れず、ただ銀のしずくがぽとんと土をしめらせた。
その音で、わたしは目を覚ましました。
おひざの上には、まだぬくもりの残る白いティーカップ。
レースのようなデザインにワンポイントのリボンがとってもかわいらしい。
「…ここは…?」
声はひどく小さかったけれど、森はそれを聞いていた。
すると、かすかに足音。草を踏まず、地面に触れぬような、静かな音。
「まほろめちゃん…やっと、また会えたね」
振り返れば、そこに立っていたのは白い髪の小さな影。
目は星のように光り、服はまるで夜明けの雲をまとったみたい。
「…くうちゃん」
どうして名前がわかったのか、わたしにはよくわからなかった。
でも、そんなことはどうでもいい。
胸の奥がぽっとあたたかくなって、言葉よりさきに涙がこぼれました。
くうちゃんはそっと手をのばし、わたしの髪に触れて、
「まほろめちゃんはね、この森でいちばん、あたたかくて、きれいなひかりだよ」
ティーカップの中で、淡い桃色の紅茶がきらりとひかる。それはまるで、ふたりの時間がはじまる合図みたいで、
わたしにはどうしてもそれが、終わらないでほしい旅行の最終日みたいで、少しさびしくて、でもふかく、うれしかった。