亮平 side
翔太💙『ユニットすっごくカッコよかった♡見惚れちゃったよ……ふたりとも…』
〝はっ!〟………また夢か。
札幌Liveを終えてからと言うものイヤな夢が続いている。明日は俺の誕生日なのに気持ちがウキウキとはならないのは不安要素を抱えているからに他ならないだろう。翔太からの連絡が数日前からぷっつりと途切れた。〝翔太に会いたい〟自分で書いたその文字を指でなぞるとコピーしますか?なんてスマホが聞いてきてイラっとしてベットに投げつけた。
俺の気持ちは簡単にコピペできないだよ💢分かったようなふりすんなよ…スマホになにキレてんだか。
自分で書いた言葉たちはその人の、その時の感情がよく現れているように思う。忙しく走り書きした文字も、心躍りウキウキした地に足のついてない浮かれた文字も、イライラした怒った文字も、後から見返せばどの文字も愛おしくその時の気持ちにすっと戻って行ける…手元にあのノートが無いことも俺を不安にさせる。一度も翔太からのノートの返事が返ってきていない。置き去りの大事なノートがきっと今頃寂しそうにしている。
情緒不安定な心を落ち着かせるために淹れたコーヒーの匂いに愛しき人を思い起こし、彼に思いを馳せる朝、ほっこり幸せな気持ちになれない虚しさのやり場が見当たらない。
涼太❤️『うん…凄く美味しい。寝坊助さん悩み事かな?』
亮平💚『何しに来たの?』
朝早くからインターホンを鳴らしたこの男。俺の淹れたコーヒーを優雅に啜っている。秋晴れの雲一つない空は翔太のメンカラ真っ青で季節外れのぽかぽか陽気で家に閉じこもっているのが勿体無いくらいだ。
涼太❤️『元気ないね最近…俺に出来ることあればと思ったんだけど?余計なお世話かな…』
蓮の気持ちは理解できても俺の…彼氏の気持ちなんて涼太に分かるのかよ…そんな意地悪を言ってしまいそうな程今の俺は誰にも優しく出来そうにない。眠気覚ましにいつもよりも濃いめに入れた苦味のあるコーヒーを喉に押し込んで飲み干すと、余計翔太の事を思い起こしてしまい情緒が不安定になる。
涼太❤️『明日は翔太と誕生日のお祝いするんでしょ?前祝いって訳じゃないけど今夜ご飯にでも…ねぇ本当に大丈夫?』
気付いたら泣いていた…佐久間ならまだしも 、涼太の前で泣くなんて最悪だ。それ程までに心が限界張り裂けそうで、誰でもいいから助けて欲しかったのかもしれない。視界が暗くなると優しい甘い匂いに包まれて抱き締められると、思わず涼太の腕を握り締め堰を切ったように泣き喚くと〝大丈夫だから〟と頭を撫でた涼太の手は随分と大きく感じた。
亮平💚『一人の方がずっと楽だ…俺はいつまで翔太に苦しめられるの?』
涼太❤️『苦しめてるのは翔太じゃないだろ?』
亮平💚『どうかな……わからない…誰がどうしたかなんてもうどうでもいい』
〝そんな事言うなよ….翔太を幸せに出来るのは…〟最後まで聞かずに涼太の言葉を遮った。
亮平💚『誰でも大丈夫だよ…翔太は誰とでも幸せになれる…俺じゃなくったって一向に構わないんだ…いい子だから皆んなから愛される。俺である意味が必要性が見つからない』
涼太はそんな事ないってずっと言ってくれた。お前じゃなきゃ駄目だとも言ってくれた。その言葉がストンと胸に響かない。
誰にだって気持ちよくなれるじゃない?男だからね…優しくされたらすぐ許しちゃうじゃない?翔太だからね…
涼太❤️『あれ?亮平カーディガンのボタンのところ解れてるよ?何処かに引っ掛けた?』
翔太と色違いで買ったお揃いのカーディガンだ。俺のお気に入り…〝俺が縫おうか?〟
ふふっ…俺より涼太の方が上手そうだし縫い物姿がよく似合いそうだ。首を横に振って断ると〝綻び纏う俺哀愁漂う…なんちゃって〟翔太を愛す気持ちに綻びが生じている。
俺だけを見て欲しい、俺だけを愛して欲しい、俺だけに気持ちよくなって欲しい…これまで我慢し続けてきた翔太への願望や鬱憤が爆発している。翔太はこれらを受け入れる事は出来ないだろう?だって自由な子だから。翔太が幸せならそれでいいでしょ?俺が翔太を幸せに出来るだなんて烏滸がましい。俺じゃない誰かでもいいじゃないか・・・
翔太 side
蓮 🖤『いいよ。凄く上手に出来てる』
翔太💙『本当?やったぁ蓮のお墨付きだね//』
ハイタッチしようと蓮に向けられた手のひらは寂しく俺の顔の横で留まったまま〝その手には引っ掛からないよ〟なんて悪戯っぽく笑われた。そんなんじゃなかったのに…一緒に喜んで欲しかっただけなのに。〝ちぇっもうちょっとだったのに〟蓮に調子を合わせるようにそう言うと虚しく置き去りになった手のひらをグッと握りしめてエプロンを掴んだ。
キッチンカウンターに山積みの残骸を見る。 何度失敗しただろうか?残すところ最後の飾り付けだけとなり完成間近の誕生日ケーキを前にくたくたになりながらも、亮平の喜ぶ顔を想像したら疲れもどこかへ吹き飛んだ。
見た目は随分と悪い仕上がりだけど味は美味しい…と思う。昨夜から徹夜で作ったスポンジの失敗作を朝食代わりに頬張ると甘いバニラの香りが口いっぱいに広がって幸せな気分になった。
蓮の淹れてくれたコーヒーを啜るといつも飲んでいるコーヒーの味と似ていて益々亮平に会いたくなった。
翔太💙『ずっと俺に付き合ってくれてありがとう。ここまで出来たのは蓮のお陰だよ。そう言えば、コーヒー豆変えたの?』
蓮 🖤『あぁ…阿部ちゃんに習って俺も翔太好みを研究したんだ』
翔太💙『俺好み?』
〝気付いてないの?〟亮平が毎日俺の反応を見て調合したオリジナル翔太ブレンドなんだとか。日々の〝うまっ〟から研究されたコーヒーはまろやかだけどしっかりと苦味もコクもある。見えないところで居ないところで亮平の愛を感じる朝、亮平への愛がどんどん膨らんでいく多幸感に胸がいっぱいになる。
蓮 🖤『明日は3人でパーティーしようか?』
翔太💙『あっ…そうだね……ご飯まで考えてなかった…それにプレゼントも…どうしよう何も準備してないや』
二人きりで誕生日を祝いたいけど…タイムリミットを亮平の誕生日にした事を後悔した。初めて過ごす二人きりの記念日になる筈だったのに。ケーキ作りに夢中で肝心のプレゼントを用意していない。亮平の欲しい物って何だろう。蓮は〝手作りケーキが十分プレゼントだよ〟と言ってくれたけど食べたら何にも無くなっちゃうじゃん…
蓮 🖤『明日で翔太は俺のモノだね?阿部ちゃんに申し訳ないな…』
翔太💙『えっ…どう言うこと?』
蓮 🖤『ふはっ自分で言っておいてそれは無いよ?明日までに翔太に触れなければ俺の勝ちだ…そうだろう?』
まずい作戦失敗する事なんて考えていなかった…〝そんな悲しい顔しないで…俺だって傷付く〟誰得だ?皆んなを悲しませちゃってる。守るどころか自分たちを窮地に追い込んで一番大事な人…亮平を悲しませてる。
翔太💙『まだ時間あるもん…そうでしょ』
蓮は〝残念だけど今から仕事だから〟と言って自室へと消えて行った。益々時間がないじゃ無いか…蓮を追いかけると部屋で身支度を整えている蓮の背中に抱き付いた。藁にも縋るようなそんな気持ちだった。
翔太💙『お願い蓮…お願いだから俺たちの事認めてよ?亮平じゃなきゃ駄目なんだ』
蓮 🖤『はぁ……阿部ちゃんじゃなきゃ駄目な理由って何?それに自分で始めた事でしょ?誰が傷付こうと最後までやり遂げるのが筋だよ。俺は最後まで付き合うよ…ケーキの仕上げ頑張ってね……離して?』
翔太💙『好きだからだよ好きに理由っている?…分かったじゃあこうしよう!最後に一回だけエッチしていいから諦めて!』
蓮 🖤『それ以上言うとマジで怒るけど大丈夫そ?翔太こそ俺の好きを軽んじてる』
〝ちぇっ許せよケチ…〟駄目元で擦り寄って見たけど撃沈&怒られた…。クスクス笑いながら目尻を下げた蓮が怒っていなくてホッとする。頰を膨らませた俺の頭を撫でようと上げた手が空を掴んだ。〝あっぶねぇ〜〟可愛らしいくしゃくしゃな笑顔で笑うと〝行ってきます〟と後方にいる俺に向かって手を振って出て行った。
翔太💙『くそぉ〜///イケメンが笑うなよ…カッコいいじゃないか!』
まだ玄関にいたようでクスクス笑う蓮の声がホールに響いていた。恥ずかしいじゃないか…
何が何でも明日で終わりにしてやる。気合を入れて蓮の家の掃除をした。3週間お世話になった蓮の家と決別を果たすべく謝儀と言うよりは願掛けのつもりで隅々まで掃除をした。気が付いたらお昼を回っていた。午後からは以前買ったお揃いのお皿を取りにマンションに戻った。途中行き付けのインテリアショップに寄ると、お皿に合うスプーンを2個を購入した。
誕生日パーティーの招待用のメッセージカードを探していると白アザラシの絵柄のカードを見つけて思わず手にした。デートで行った水族館でエイのぬいぐるみを小脇に抱えながら、2人で白アザラシのぬいぐるみを探した事を思い出した。〝ウフッあの時の亮平ムキになって可愛かったなぁ…〟緑色のペンと一緒にカードも購入した。
マンションに着くと亮平は不在で誰かお客さんが来ていたようで流しに二人分のマグカップが置いてあった。自室のクローゼットからお皿を取り出すと鞄にしまって、ノートをリビングの机に置くと、メッセージカードを書いて家を後にした。
きっと明日が終わったらここに帰って来ているはず。
🗒️亮平おかえり元気?仕事が忙しくてなかなか連絡できなくてごめんね。いよいよ明日は亮平の誕生日だね。街はすっかりクリスマス仕様になっていて今年の冬亮平と2人で過ごせると思うと心がウキウキと高鳴ったよ。今度二人で見に行きたいな欅坂のイルミネーションすっごく綺麗なんだよ!
帰ったら一緒にツリー飾ろうね。テッペンのお星様は二人で一緒に取り付けたいな。 翔太より
嫌なことは考えないようにした。ただでさえ木々が枯れ寂しくなるこの季節はちょっぴりおセンチになる。冬のせいだと言い聞かせながら、暗くなる気持ちをスキップをして紛らわした。明日にはきっと全てが上手く行くと信じて。
寒くて肩を窄めて両手を擦り合わせながら行き交う人の流れに乗った。つい先日までハロウィンだのなんだのと浮かれていた街並みは一気にクリスマスモードで…やっぱり浮かれている。
途中ケーキの飾り付け用の苺と、チョコプレートを購入して帰ると最後の仕上げに取り掛かった。愛する人を思い浮かべながら、3週間ケーキを作り上げてきたこの時間は凄く幸せだった。
亮平が俺の為に一生懸命紡いだあのサンキャッチャーを作っている時間も同じくらい尊い時間だったかな?好きな人に思いを馳せる時間が、こんなにも尊くて素敵な事だって思えたのは亮平と一緒に過ごした幸せな時間があるからだ。早く会ってこの想いを伝えたい。
生クリームに手を伸ばすとカーディガンの袖の部分が何処かで引っ掛けたのか解れて糸が垂れている。〝ふふっ亮平に綻び縫ってもらおう////〟慣れない針仕事で痛めた絆創膏だらけの愛おしい亮平の長い指を思い出して顔が綻ぶ。
翔太💙『あっ…また失敗しちゃった//ふふっ油断しちゃった///』
何度失敗しても平気だよ。ありったけのチョコプレート買ってきたから///プレートに愛を認めるこの時間すら愛おしく尊い。24時間後一緒に過ごす彼を思って……
翔太💙『愛注入だぞ♡』
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スキップしてるしょぴ💙可愛くて悶えた。一緒に服もほつれさせて🥰🥰 本当に花凛しょぴ💙可愛い💕ざっと読んだからあと2回は読まないと!