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仕事が一段落ついたのでドリンクコーナーで一旦、頭をリフレッシュさせてからフロアに戻ると総務課の佐藤さんの声が聞えてきた。
「男にだらしない人が常務の秘書とか品性が疑われるでしょ、私はそれをあなたに教えているの」
品性がないのは佐藤さん本人だと思うが、常務の秘書となると雪のことに間違いないだろう。
フロアを見渡すと皆、見ない振りをしている中、佐藤さんが雪に対して言葉の暴力を振るっていた。
「どうしました?氷河期みたいですよ」
「大島くん、その・・・豊田さんが二股を・・・」
「佐藤さんになにか不利益でも?」
「豊田さん行こう」
何を言っているのか、あまりにもくだらない言葉にたいして、言葉をかぶせて威嚇をする。
そして、こんな空間に残しておきたくなくなくて雪の手を掴んでデスクに戻った。
「ありがとう」
「いや、俺もうっかりしてたから。でも、こういうのは良くないからね、はっきりさせよう」
「どうやって?」
「俺にまかせておいて」
人事課に向うと、人事課長は北山とミーティングルームに入ったとの事だった。
待っていたとしてもどれくらいの時間がかかるかわからない、あとで出直すために秘書課へ戻ったが、総務課長が直々に秘書課に足を運んできたことで北山の話が俺達に関することだと気がついた。
ミーティングルームには総務部長だけではなく橘常務までが来ていた。
雪が常務付きだということなのか、やや話が大がかりになっている様に思う、北山がどういう風に話しているのかまずは様子を見た方がいいだろう。
ただ、雪がかなり緊張しているように見え心配になる。
雪がこちらを向いた時に“大丈夫だ”という気持ちを込めて頷くと意図に気付いたのかすこしだけ緊張の糸をゆるめたようだ。
「豊田君、そんなに緊張しなくていいよ」
常務の言葉に雪もようやく楽になったようだ。
「北山君から簡単な事情は聞いているし、社内恋愛を禁止しているわけではないから」
「ただ、北山君は大島君と豊田さんに対しての名誉毀損にあたるのではないかという訴えに対して少し話を聞こうと思っているだけだから」
と、言う部長の表情は柔らかく、俺達に対して糾弾するつもりがないことがわかった。
ただ、北山が雪を守ろうとしている感じが少しイラつかせる。
雪はお前のじゃないと言ってやりたい。
「そうですか、それでは豊田さんは帰って頂いてもいいですか?」
雪がこれ以上、嫌な思いをする必要がない。
「総務課のある方に対して仕事の非効率性と気に入らない人間に対しての嫌がらせともとれるような行動に対して疑問を感じておりましたので、総務部長、総務課長に一度伺いたいと思ってました。豊田さんに関してはわたしの方ですべてお答えできますので帰して頂きたいと思います。」
常務も部長も軽く頷いているので、良かったと思ったが責任感の強い彼女は「私は大丈夫です」とけなげに言うから雪の耳元にわざと俺に任せてと耳元でささやくと、顔を赤らめあたふたする姿が可愛い。
しかし、その姿を常務、部長、課長は生暖かい目で見ていた。