テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「翔太の家どの辺なの?」
「**駅だよ」
「職場は?」
「●●駅が近い」
「じゃあ俺の職場の1つ隣だね。てか、遠くない?」
「うん、遠い……でも家賃とか考えたら」
「まぁそうか〜、まだ2年目だしねぇ」
「商社の営業さんには追いつけないよ」
「まぁうちは結果主義な分、福利厚生は手厚いからねぇ」
「俺はそこまで頑張れないから」
「そっか。でも職場近いから仕事終わりでも会えちゃうね」
「ん、それは嬉しい」
少し混雑する電車に揺られ翔太の家に向かう
たまたま駄菓子屋の最寄駅は翔太の家と俺の家の間くらいだった
しばらくこっち側開かないから、と扉を背にする翔太を囲うようにして立つ
おもむろに翔太が俺のパーカーのフードを被せる
「どうしたの?」
「蓮さん格好いいから目立つんだもん。さっきから女の子たちがチラチラ見てる」
「あぁ、いつものことだから気にしないよ」
「おれがいや。今、蓮さんが一緒にいるのはおれだもん」
小さな独占欲が可愛い
「ふふふ、翔太も目立ってると思うけど?」
同じようにフードを被せる
「わ、俺は蓮さんの陰になって見えないから大丈夫だよ」
「でも被ってて」
「ふふ、2人でフード被って不審者みたい」
翔太はまた無意識に、フードの陰から上目遣いをしてくる
前髪越しに澄んだ瞳が見えるのも少し色っぽくて唆られてしまう
「顔を隠したかったんでしょう?そうなるよ笑」
「たしかに笑」
大きめの駅に停まったのか、車内の人が増えてきて後ろから押される
身長差があるから、翔太の頭の上に肘から下を横向きについてより密着する
フードを被って周りから顔が見え辛くなったことで少し大胆になったのか、翔太が腰に手を回して頭をこてんと胸に預けてくる
「ふふ、甘えん坊さん大胆だね」
「今だけ」
こちらにもたれかかった分で空いた隙間に手を入れて、俺も翔太の腰に腕を回し、その後の数駅は無言で過ぎていった
力を抜いて身を預ける体温が愛おしい
少し人が引いて体を離す
翔太の手は名残惜しそうに腰から離れて、俺の服の前の方を掴んでいる
「次、降りるとこ」
「わかった」
「………離れちゃった」
「俺の家に着いたらいくらでも抱きしめてあげるから」
「ん、やくそくだよ?」
「もちろん」
顔を上げてはにかむ笑顔をフードが少し幼く見せる
ちょうど電車が駅に着いた
「行こ」
「うん」
翔太が歩く後ろを着いていく
翔太の家は駅前から延びる商店街を抜けて少しのところにあった
こじんまりとした3階建てのコーポの2階の南端
「向かいのあの立派なおうちが大家さんの家なんだ」
「安心だね」
都心から少し離れただけあって、狭過ぎない陽当たりのいい部屋だった
「……もの少なくない?」
「あんまり置きたくなくて…」
必要最低限という言葉がぴったりのシンプルなレイアウトの部屋
ちらりと見えた洗面台にスキンケアが所狭しと並べられているのと、リビングの端にスチームの出る美顔器があるのだけは、流石と言ったところだが
「とりあえず今日は、明日仕事に行ける準備だけでいいよ。寝巻きとかは貸してあげる。スキンケアもこだわりがないなら俺のを貸すけど」
「ん、何かつけられればいいから」
翔太は手早く下着と明日の服、会社用であろう鞄とをまとめる
「よし、オッケー」
「何か持つよ。駄菓子もあるでしょ」
「ありがとう」
時間帯もあってか、逆向きの電車では2人並んで座れた
翔太の荷物の陰で手を繋ぎながら会話に花を咲かせて俺の家の最寄駅まで向かう
電車が駅に着いて手を離す刹那、名残惜しそうに少しぎゅっと力を入れるところがなんとも愛らしかった
コメント
3件
あざとい💙

ふぁー。すきー。