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あたりは静まり返っていた。
さっきまで暴れていた化け物は、影ひとつ残さず消えている。
風が木々を揺らし、月明かりが健の輪郭をやさしく照らした。
『……終わったん、か?』
健が小さく呟く。
その声は安堵にも似ていたけど、どこかまだ不安を含んでいた。
「わからない。でも……」
私は健の手を握り直す。
その瞬間、彼の狼の耳も尾も、ゆっくりと消えていった。
まるで長い夢から覚めるように。
健は一歩近づき、私の頬に手を添えた。
『……紗羅が居らんかったら、俺、ずっと化け物のままやった。』
「私も……健がいなかったら、こんなに強くなれなかった」
言葉より先に、心が動いた。
私たちは自然と顔を寄せ、唇が触れた瞬間……
健の全身が光に包まれ、健を縛っていた呪いがとけていくのが分かった。
キスは甘く、だけど切なかった。
ずっと待ち望んでいた答えが、やっとここにあった。
唇を離すと、健は少し照れたように笑った。
『これで呪いはとけたんやな』
「うん……これからは、一緒に生きていこう」
森を抜けると、空には一面の星が瞬いていた。
もう狼の影はどこにもない。
私たちは手を繋いだまま、夜空の下を歩き出した。
二人で幸せの人生を歩んで行くように……