新たなテーマ︰
成瀬コーチと仁コーチが振付師と話し終え、控え室に戻ってきた。
仁コーチは腕を組みながら紬と凍に目を向け、静かに話し始める。
「振付師と相談して、それぞれのテーマを決めた。」
紬は少し緊張しながら聞く。
成瀬コーチが穏やかに紬に視線を向ける。「紬ちゃんのテーマは、『バラ』になったよ。」
紬は驚いたように目を丸くする。「バラ……?」
成瀬コーチは優しく説明を続ける。「柔らかさと力強さの組み合わせで、優雅さを出せる演技ができるはずだよ。しなやかで美しいけれど、しっかりと咲き誇る力強さも持っている……そんなバラのイメージで演技を作っていこうと思うんだ。」
紬はその言葉を聞きながら、ゆっくりと考え込む。そして、ふっと微笑んだ。「素敵……!」
次に、凍の番だった。
仁コーチが冷静な口調で言った。「お前のテーマは『カラス』だ。」
凍は一瞬目を細める。「カラス?」
仁コーチは頷く。「カラスは知的で、冷たい印象を持っている。お前の演技の冷徹さと、鋭い動きを活かすにはぴったりだろう。」
凍はしばらく黙ったあと、「分かった。」と言った。
紬は凍のテーマを聞きながら、納得したように言う。「凍くんっぽいね。」
成瀬コーチは微笑みながらまとめる。「このテーマを振付師と詰めていくから、しっかり準備しておこう。」
こうして、紬は『バラ』、凍は『カラス』という新たなテーマのもとで演技を作り始めることになった。
紬は控え室を出ると、凍の背中を見つめながら考え込んでいた。
「カラスか……。」
凍の冷徹な演技にぴったりのテーマだと思う。知的で、鋭く、どこか孤高の存在。それが凍らしい。
紬は自分のテーマ、「バラ」を思い出した。優雅でしなやかだけれど、しっかりと咲き誇る強さを持っている——それなら、自分らしい演技ができるかもしれない。
ふと気づくと、凍が氷の上に立っていた。紬が見つめる中、彼は静かに助走をつける。
——跳ぶ。
3回転アクセル。圧倒的な高さ、冷徹な着氷。紬は息をのんだ。
「……やっぱりすごい。」
凍はその視線に気づいたのか、ちらっと紬を見た。
「お前も、自分の演技に集中しろよ。」
紬はドキッとしながら、氷を蹴った。
それぞれのテーマを胸に、2人の演技が始まろうとしていた——。
新たな振付師︰
紬と凍は控え室でコーチたちから告げられた。
「今年から振付師が変わる。」
紬は驚いて凍の方を見るが、彼は特に反応もせず淡々としていた。
仁コーチが話を続ける。「紬、お前の担当は『川島緑子』だ。優しくて明るい先生だが、表現力を引き出すのが得意な振付師だ。」
紬は嬉しそうに頷いた。「優しくて明るい先生なら、楽しそう!」
成瀬コーチが穏やかに微笑む。「紬ちゃんの持ち味をさらに活かせるはずだよ。柔らかさと優雅さをどう磨いていくか、一緒に考えてみようね。」
仁コーチは次に凍へ視線を移す。「お前の振付師は『水江翼』だ。」
凍は腕を組みながら「どんなやつ?」と淡々と尋ねた。
仁コーチは少し考えて答える。「若くて、包容力があるタイプだ。普段は明るいが、時々天然で怪しげな雰囲気を出すことがあるな。」
紬は思わず吹き出しそうになった。「怪しげって……?」
凍は無表情のまま聞いていたが、どこか面倒そうな雰囲気を漂わせていた。
成瀬コーチは微笑みながら付け加える。「水江先生は独特の視点で振付を考えるから、凍くんの冷徹な演技に新しい要素を加えてくれるかもしれないね。」
凍はしばらく沈黙した後、「……まぁ、別に誰でもいいけど」と言いながら立ち上がった。
紬はそんな凍を見ながら、「ちょっとは興味持とうよ……!」と苦笑していた。
こうして、新たな振付師のもとで、紬と凍の演技は進化していくことになった。
紬と凍は、それぞれの振付師のもとへ向かった。
まずは紬。
スタジオに入ると、明るい雰囲気の女性がにこやかに出迎えた。
「はじめまして、川島緑子です。紬ちゃん、よろしくね!」
紬は少し緊張しながらも微笑んだ。「はじめまして!よろしくお願いします!」
川島先生は優しく頷いた。「あなたの演技のテーマは『バラ』ね。しなやかで美しく、それでいて力強く咲く。そのイメージを大切にして、一緒に作り上げていきましょう。」
紬はその言葉を聞いて、期待が膨らんだ。「はい!頑張ります!」
次に、凍。
スタジオに入ると、そこには若い男性が立っていた。柔らかい笑みを浮かべながら、軽く手を上げる。
「おー、来たな。俺が振付師の水江翼。よろしく。」
凍は淡々と「よろしく」とだけ言い、じっと水江先生を見た。
水江先生は何かを考えるように一度うなずき、「テーマは『カラス』だよな。知的で冷たい印象……なるほど、面白いな。」と呟くように言った。
そして、ふっと怪しげな笑みを浮かべる。
「それで、君はどんなカラスになりたい?」
凍は一瞬だけ眉をひそめたが、すぐに冷静に答えた。「俺は跳ぶだけだ。カラスだろうと何だろうと、関係ない。」
水江先生はその言葉にクスッと笑い、「まぁまぁ、それもいいさ。でも、君の冷徹さを活かすなら、もっと面白い表現ができそうだな。」と意味深な言葉を残した。
こうして、それぞれの振付が始まろうとしていた。
曲決め︰
紬と凍は、それぞれの振付師と向かい合い、演技で使用する曲を決めることになった。
まず、紬。
川島緑子先生はにこやかに紬の前に座り、いくつかの楽曲を準備していた。
紬は慎重に曲を選びながら、何度も聴き比べていた。そして、最終的に決めたのは 緑黄色社会の『メラ』 だった。
「この曲……すごく力強いのに、どこか華やかで綺麗。」
紬のテーマである 『バラ』 と響き合うような楽曲だった。柔らかさと力強さが混ざり合い、堂々と咲き誇る雰囲気——それはまさに彼女の目指す演技そのものだった。
川島先生は優しく微笑みながら頷く。「いい選択ね、紬ちゃん。この曲なら、あなたの持ち味を最大限に活かせるわ。」
紬は少し緊張しながらも嬉しそうに答えた。「この曲で頑張ります!」
次に、凍。
一方、凍は迷いなく 『リベラタンゴ』 を選んだ。
水江先生は目を細めながら、その曲の旋律を聴いた。「なるほど……鋭くて、冷たい情熱がある。」
凍は腕を組みながら淡々と言う。「俺の演技にはこれが合う。」
『カラス』というテーマにぴったりの曲だった。知的で冷徹な印象を持ちつつ、どこか孤高の美しさが宿る旋律。その激しさと鋭さが、凍の演技にさらなる深みを与えることになる。
水江先生はふっと笑う。「君の冷徹さと、この曲の情熱……どう組み合わせるか楽しみだな。」
凍は無言のままリンクを見つめていた——。
こうして、紬は 『メラ』 、凍は 『リベラタンゴ』 を選び、それぞれの演技が本格的に始まることになった。
リンク場の廊下で、それぞれの振付師と話していた紬と凍。
紬は川島先生と演技の表現について相談していた。 凍は水江先生とジャンプの構成を確認していた。
しかし、ふとした瞬間、4人はばったりと出くわした。
「おや、凍くん?」川島先生が明るく声をかける。
「……こっちもか。」凍は淡々とつぶやいた。
水江先生は面白そうに笑いながら、「へぇ、こんなところで鉢合わせるとはな。偶然だな。」と軽く言った。
すると、凍はふと考え込むように視線をずらし、静かに提案した。
「……先生たち、お前らのスケートを見たい。」
紬は驚いて凍を見た。「えっ……?」
川島先生と水江先生も、一瞬驚いたように顔を見合わせる。
「私たちが?」川島先生は目を丸くした。
水江先生はクスクス笑いながら、「へぇ、君がそんなことを言うなんて珍しいな。でも面白そうだ。」と頷いた。
紬は戸惑いながらも、少しわくわくしていた。「先生たちのスケートって、見たことないかも……。」
川島先生は柔らかく微笑み、「じゃあ、少しだけ見せてみようか?」と提案する。
水江先生も軽く肩をすくめ、「まぁ、たまには弟子に実力を見せてやるのも悪くないか。」と怪しげな笑みを浮かべた。
こうして、紬と凍は、初めて自分たちの振付師のスケートを目の当たりにすることになった——。
つづき
コメント
3件
わーーーーーーい!ヽ(=´▽`=)ノ
いいね💫✨️(*˘︶˘*)❤これからの作品も楽しみ〜〜(*ノω・*) ねぇ、めっちゃ良い報告あるっ!! 水泳の授業さ、こっちが通ってる所でやるらしいよ(>ω<)(>ω<)(>ω<)bbbbbbb‼️‼️ マジ神なんだけど✨️☆ミ 最高〜〜〜⭐️⭐️