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海の紅月くらげさん
「ましろ」
てっきり話せと言われるんだと思ってたから予想外の歩くんの表情に困惑した。大きな彼の瞳が切なげに細められて私を見つめているのだ。
「まだ、そうなのか?」
「え?」
「泉のこと、好きなのか?」
私が泉くんと夏休みに二人で会っていたから、まだ好きな気持ちが残ってるんじゃないかって誤解をしているみたいだ。
色々あったからこそ心配してくれてるのかもしれない。
「今はもう泉くんに対して恋愛感情はないよ。少し聞きたいことがあったから話していただけ。心配してくれてたんだよね。ありがとう」
歩くんが目を丸くした後、伏し目がちに消えそうな声で呟いた。
「……げぇ……よ」
小さすぎて途切れ途切れにしか聞こえなかった。
「俺だって焦る」
「焦る?」
「わかれよ、ましろのバカ」
ぐいっと肩を掴まれて引き寄せられる。突然抱きしめられて、顔の熱が一気に上昇していく。
「え、あの、その……今度からは心配かけないように気をつけるから」
「はぁ……もう、俺もばかだ」
抱きしめられた腕から伝わる力と熱に、ドキドキと鼓動が速くなっていく。
歩くんの真っ白なシャツから薫る柑橘系の爽やかな香り。
いつもはこの香りに落ち着くのに今日はドキドキが増していった。
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