テラーノベル
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気付いたらいつも隣にいた2人は気付いたら惹かれ合い、気付いたら付き合っていた。
「エギー今日俺ん家来る?」
「ぇ、あー…俺明日用あって朝早い…んだよね。」
「またそれかよ、今すぐ退勤すれば良くね?1時間でも30分でも良いからさ。あ、逆に俺がそっち行くのは?」
「いや俺ん家は狭いし…そんな来てほしいん?」
「当たり前だろ、付き合ってんだぞ。」
「っ///…ゎ、わーったよ…飯もう無くなりそうだからどっか寄りたい。」
恋人関係にまだ慣れていない狼恋は恥ずかしいような、ムズムズするような感覚を必死に隠しながら成瀬の車に乗った。
「お邪魔しマース。」
「何飲む?」
「なんか炭酸のやつある?」
「はいよ、座って待っとけ。」
同僚の関係だった頃に家に来た時はふざけてカレカノごっこなんてしていたが、今は逆に緊張してしまい座っているだけなのに胸が高鳴っている。
「部屋暑くない?クーラーちょい温度下げるか。」
「そんな気遣わんで良いって、キモい。」
「は!?お前キモいとはなんだ、てか床じゃなくてソファー座れや。」
腕を引かれ誘導されたがそれだけで身体が固まってしまう。こんなんじゃ格好が付かない、と気付かれないように平静を装う。
「もうすぐ1ヶ月だしどっか行くか。」
「力二って意外とそういうのマメなタイプなのオモロいわ。」
「エギが無頓着過ぎんだよ。行きたいとこある?」
「んー無難に遊園地とか?」
「遊園地かーなら海も行きたくね?あとさー…」
話しているといつの間にか成瀬がジリジリと距離を詰めてきている。手を握られると一気に動揺が出てしまった。
「なっなん、なに?」
「なにってなに?嫌だった?」
「やじゃないっけ…ど…」
「なんでそっち向くん?顔見せて。」
「いやムリムリムリ!見んな…///」
「エーギ、ほらこっち向け。」
「一旦!一旦ストップ!」
「もうそろこんぐらい慣れねぇ?この前もハグしたじゃん。」
成瀬は肩に腕を回して引き寄せ、指を絡めて握る。それでも顔を背ける狼恋の頭をガシガシ撫でた。
「もーエギぃ、そんなんじゃなんも進まんってw」
「分かってるけど!…マジで無理、てかお前顔が良すぎんだよ…」
「いやそれはありがとうなんだけどね?そうだなぁ…タバコ吸う?」
「……じゃあお言葉に甘えまして。」
解放された途端ポケットに乱雑に手を突っ込んでタバコを取り出し火をつける。その手はおぼつかなく、ペースもいつもより明らかに早い。
「ど?落ち着いた?」
「もう1本吸わせて。」
「好きだねぇ幾らでもどうぞ。俺ちょいトイレ行ってくる。」
洗面所に行って鏡を見ながら焦るのは良くない、冷静になれと自身に言い聞かせて頭を冷やす。が、戻ると黄昏ているような、少し儚げな表情をして煙を吐く狼恋が目に飛び込んでくるとタバコなんて構う暇もなく気付いたら抱き締めていた。
「ちょっ力二!危ねぇって!」
「もう無理。エギ好き、大好き。」
「ちょい待てってば…///」
「ごめんもう待てない。エギ好き。エギ…」
嫌でも目が合うように両手で優しく顔を包み込み頬を撫でるとどんどん顔が赤くなっていく。もう逃げられないと悟った狼恋の目がゆっくり閉じていくのを見てふぅ、と小さく息を吐いてから唇を重ねた。
「…ふはっ顔あっか、かわい。めっちゃタバコの味する。」
「……ぅ、うるせー!もう帰る!!」
嬉しさやら恥ずかしさやらを募らせ、とうとう我慢できなくなった狼恋が成瀬を押し退け家を飛び出す。成瀬は困った顔をしながらその背中を追った。
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