TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する

柚葉に告白したんだな、俺――



マンションまで送り届けて、帰る車中、さっきまでの出来事を思い返していた。



あいつはまだ、柊への想いを断ち切れないでいる。

それは痛いほどわかってる。

そんな時に告白するのがズルいことも。



それでも俺は、正直に柚葉に想いをぶつけた。

そこには俺なりの責任と覚悟があった。



2人で敬語なしで話せるようになって、あいつ、今日のことを喜んでくれた。

笑顔の柚葉が愛おしく思えた。

柊のことで苦しむあいつを見てるのは、本当につらかったから。



こいつを守りたい、ずっと一緒にいてやりたいと――本気でそう思ってた。



柚葉の心の中には兄の柊がいて、そして、その柊を、俺は家族として大事に思ってる。

そんな複雑な状況も、今の俺にはどうしていいのかわからなかった。



でも、柚葉への想い、それだけは、これから先も決して変わることはないと断言できる。



俺が柚葉を初めて知ったのは、柊からの手紙に同封された2人の写真を見た時だ。

2人が付き合って、1年が経った頃だったと思う。



写真の中の2人は本当に仲が良さそうで、笑顔が溢れたその写真を見て、俺は本当に嬉しくなった。



柊のこと、ずっと心配してたから……



アメリカに行ってからは、柊の女性関係について全く知らなかった。

でも、ようやく大切に思える女性ができたんだって――心から喜んだことを今でも鮮明に覚えてる。



それから、時々電話やメールで柚葉のことを聞いていた。

柊がアメリカに来た時も、本当に嬉しそうに柚葉のことを話していた。

柊は本気で彼女を愛してるんだと思った。



「柚葉って、本当に可愛いんだ」



「そっか。たとえばどういうとこ?」



「そうだな。まあ、見た目もだけど、やっぱり中身がいいよ。優しくて穏やかなんだ。いつも彼女の笑顔に癒されてるよ」



そんな風に、嬉しそうに柊が言ってた。

だから、絶対に、柊は柚葉だけを想ってるんだと信じていた。



昔から、どうやったら柊みたいに人を素直に好きになれるのか、ずっと不思議だった。

俺は、誰を見ても、誰と話しても、誰と2人きりになっても、全く恋愛感情が持てなかった。



告白は時々されてたし、その中の2人とは付き合ったこともある。ちゃんと好きになりたかったし、好きになれるよう自分なりに努めた。

相手を精一杯大事にした。



だけど、ドキドキしたり、胸が苦しくなるような気持ちには……どうしてもなれなかった。

ただの恋愛ごっこでしかなく、結局は別れがやってくる。



たまに柊にも相談はしてたけど、どんなアドバイスを受けてもうまくはいかなかった。



気がつけば、いつしか恋愛することがわずらわしくなって、自分は人を愛せない、それこそ病気なんだって思った。



それなのに……

柊から話を聞く度に、なぜか間宮 柚葉という会ったこともない女性に興味を持ってしまって……

柚葉の話を聞くと、勝手に胸がドキドキした。



彼女を知って数ヶ月した頃、俺は、以前もらってた柊と柚葉の2人の写真を手に取った。

ずっと引き出しの中にしまってあった写真。

俺は、それを半分に切って、柊の方は封筒にしまい、柚葉が写る方だけを部屋のコルクボードに貼り付けた。



不思議で仕方なかった。

俺は何をしてるんだって……

柊の彼女だとわかっているのに、写真の中の柚葉の笑顔にどうしようもなく惹かれる自分がいた。



一生、人を好きになることなんてないと思ってたのに……

時には心が痛くなったり、苦しかったり、まだ見ぬ彼女への想いが日に日に募っていった。



俺は……

そうやって、大切な兄弟である柊のことを裏切っていたんだ――

loading

この作品はいかがでしたか?

18

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚