テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
いちごバナナスムージー
228
東 桃子
124
「なぁ、知ってるか?
人魚を喰うと不老不死になるらしいぞ」
鈴虫の鳴き声を掻き分けて
彼の声を耳にした。
「そりゃすげーな。食ってみてー」
テキトウに返事をすれば、お気に召さなかったようで、ジロリと睨みつけてくる。
そんな彼を無視して、すぐ隣にある沿岸へ視線を向けた。
果てしなく続く深い世界。
きっと、彼もこれを見て。
終わりが見えないこの海でなら、もしかしたら人魚も見つかるのかもしれない。
「俺、やっぱフツーに生きてフツーに死にたいわ」
車輪がカラカラと鳴る。
彼は何も言わない。
「ありがとな」
不意に、生温かい雨が頭上で散った。
生温かいと言うか、熱い。
夏は全てが暑苦しくて嫌になる。
「けどさ。少し、悔しいや」
きっと、これを言ってしまえば、雨はもっと酷くなるが。
鼻を啜る音に気付かないフリをして言葉を紡ぐ。
「見たかったな。来年も再来年も、10年後も、一緒に」
車輪の音が止まる。
そのせいで、余計に聞こえてしまう。
音に耳を傾けながら
空を見上げた。
もう夕暮れ時。
きっともうすぐ星が見える。
コメント
1件
もう第3話…!めっちゃ切なくてエモすぎる😭💕 「普通に生きて普通に死にたい」って台詞がめっちゃ刺さった…人魚で不老不死ってファンタジーなのに、そこに現実の重さと未練が重なって胸がギュッてなるよ。 ラストの「もうすぐ星が見える」が泣ける…来年も10年後も一緒にいたいって想い、ちゃんと伝わったかな。続きめっちゃ気になる…!