テラーノベル
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勇斗side🩷
地方のホテル。
撮影は順調に進んでいる。
でも、仁人とのやり取りに小さな違和感を覚える。
返事は来るが、短いし、温度がない。
勇『今日どうだった?』
仁『普通』
それだけ。
前なら、どうでもいいことでも、もう一言あったのに…
今は、それすらない。
忙しいだけだろうと思おうとするが、妙に引っかかる。
あの夜、ちゃんと気持ち伝えてくれたのに。
あんな顔して、あんな風に触れてきたのに。
気持ちは晴れないが、一旦スマホを置く。
帰ればまた会える。
それだけで、少し気持ちが軽くなる。
勇「帰ったら、どうなるかな…」
自然と、口元が緩む。
どう考えても、今までと何も変わらないわけがない。
むしろ、もっと距離が近くなるだろう。
そう思うと少しだけ楽しみで。
顔見たら、どうせまた照れるんだろうな。
仁人の照れた顔を思い出して、小さく笑う。
帰京した日。
真っ先に、メッセージを打つ。
勇『今日、会える?』
すぐ既読がつき、少し遅れて返事が返ってきた。
仁『ごめん、今日は無理』
勇「……は?」
思わず声が漏れる。
でも、明日グループで仕事があるし、その時に会える。
それだけで、十分だと思ってしまう自分がいる。
勇「明日、楽しみだな」
つい口から小さく本音が溢れてしまう。
久しぶりに会う仁人は、どんな顔するのか、どんな距離になるのか。
想像するだけで、少しだけ浮つく。
そのまま、ベッドに倒れ込む。
絶対、可愛いだろうな…
そんなことを思いながら、ゆっくり目を閉じた。
仁人side💛
現場に入る前、一度だけ深く息を吐く。
勇斗と距離を取るだけ。
甘えない。
仕事に集中する。
あの朝決めたことを、もう一度なぞる。
ドアを開けて、
仁「おはようございます」
いつも通りの変わらないトーンで挨拶をする。
でも、視界の端に、勇斗の姿が入る。
それだけで、一瞬で心臓が跳ね、胸が締め付けられる。
でも、止める。
見ない。
近づかない。
現場では、いつも通りに振る舞う。
そう決めた。
なのに…
勇「おはよ」
すぐ近くから声がする。
気づくと勇斗が隣に来ていた。
距離が近い。
自然に、隣に立たれる。
仁「……おはよ」
短く返す。
それ以上は出さない。
勇「今日、早かったね」
いつも通りの軽いトーン。
むしろ、少し柔らかい。
仁「まあ…」
会話を切る。
広げない。
勇「昨日さ、無理って言ってたけど…」
少しだけ声を落としてくる。
他の人には聞こえない距離。
仁「……」
嫌な予感。
勇「今日終わったあと、少し時間ある?」
一瞬、思考が止まる。
行きたい。
反射的に思ってしまう。
でも…
仁「ない」
被せるように即答する。
勇「えっ?」
その声が、少しだけ傷ついた響きを含んでるのが分かる。
仁「予定…あるから」
それだけで、視線は合わせない。
勇「そっ…か…」
その一言が、静かで、逆に胸に刺さる。
でも、何も返さない。
笑わない。
勇「じゃあ、またあとで」
その言葉にも、頷かない。
終わらせる。
自分で。
勇斗の気配が離れていく。
その瞬間、少しだけ息が漏れる。
仁「……っ」
やばい。
思ってたより、きつい。
でも、これでいい。
そう言い聞かせる。
そう思いながら、ぎゅっと指先を握った。
勇斗side🩷
少し距離を取った位置から、仁人を見る。
明らかにおかしい。
照れてるわけでもない。
機嫌が悪いわけでもない。
意識して、距離を取られてる。
さっきの言い方も、あまりにも淡白だった。
勇「なんでっ」
小さく呟く。
あの夜の空気と、今の態度が、どうしても繋がらない。
その時、仁人が立ち上がり、そのまま楽屋を出ていく。
勇「……」
無意識に、その背中を目で追う。
引っかかる。
嫌な予感が残っている。
気づくと、自分も仁人を追って楽屋から出ていた。
仁人side💛
楽屋を出た瞬間、
張り詰めていたものが一気に重くなる。
仁「……っ」
息が浅い。
さっきのやり取りが、頭から離れない。
でも、立ち止まるわけにはいかない。
ただただ廊下を歩いていると、
「吉田くん」
声をかけられる。
顔を上げると、そこには、αのお偉い方がいた。
距離が近く逃げ場がない。
でも、
仁「はいっ」
無理やり、口角を上げる。
「最近いいよね、その表情」
肩に触れられることへの嫌悪感。
でも、引かない。
仁「ありがとうございます」
崩さないように笑顔を作る。
その時、ふと、視線を感じる。
強く、刺さるような…
反射的に、そちらを見る。
すると、勇斗が少し離れた場所から、こっちを見ている。
一瞬で分かるその目。
見覚えがある。
前に、見たことがある。
舜太が手相を見ようとしてきた時…
今なら分かる。
あの時の視線は、嫉妬…だったのかな…
仁「……」
気持ちが、少しだけ揺れる。
でも、関係ないと言い聞かせ、視線を外す。
何も気づいてないふりで、そのまま会話を続ける。
これでいい。
そう、決めたのだから。
勇斗side🩷
勇「は?」
目の前の光景が、理解できない。
距離が近い。
触れられてる。
なのに、仁人は笑ってる。
何触らせてんだよ…
一歩、踏み出す。
感情だけが先走り、体が動く。
行こうと思った瞬間、肩を掴まれる。
舜「はやちゃん」
優しくも強い声に振り返る。
舜太が、真っ直ぐ見てくる。
舜太「今、あかんて」
短く、でも、はっきり。
勇「……っ」
歯を食いしばる。
分かってる。
相手は、立場のある人間。
ここで割り込めば、仁人にも迷惑がかかる。
分かっているけど…目が離せない。
イラつく。
腹の奥が、ぐちゃぐちゃする。
舜「あとでにし」
静かに言われる。
その手が、まだ肩にある。
勇「……っ、くそ」
小さく吐き捨て、拳を握る。
でも、それ以上は動けない。
取られたくない。
その感情だけが、どんどん強くなる。
なのに、今は何もできない。
その状況が、余計に苛立ちを煽っていた。
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素敵なお話ありがとうございます…( ߹ㅁ߹)✨️一気読みしてしまいました…︎︎( ◜𖥦◝ )💛かわゆいです…✨️
