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勇斗side🩷
あのαとのやり取りが終わるのを、ずっと待っていた。
距離が近くて、触れられて、それでも笑っている仁人。
理由も分からず避けられて…
なんで…
気づいたら、体が動いていた。
人気のない廊下の端。
仁人の腕を掴んで、引き寄せる。
仁「ん っ、なに」
一瞬だけ、嫌そうに歪む顔。
それだけで、胸の奥がざわつく。
勇「ちゃんと話せよ」
抑えているつもりなのに、少しだけ強くなる声。
仁「話すことなんてない」
勇「あるだろ」
食い気味に返す。
勇「なんで避けてんの」
仁「別に避けてない」
勇「いや、避けてるだろ」
目も合わせない。
距離も取る。
声も、どこかよそよそしい。
全部、分かる。
勇「俺…なんかした?」
ほんの少しだけ、声が弱くなる。
本当はここで終わらせたかった。
「してない」って、否定してほしかった。
でも、
仁「……」
沈黙が落ちる。
それが、そのまま答えみたいで、
胸の奥が、ぎゅっと締め付けられる。
がっつきすぎたのかもしれない。
長年隠してきた気持ちに向き合って、 それを受け入れてもらえて…
浮かれてたのは、俺だけだったのか。
そんな考えが、頭をよぎる。
それでも、やっとの思いで口を開く。
勇「……この前のこと?」
仁人の肩が、びくっと揺れる。
当たりだ。
勇「俺、仁人にとって嫌なことしたなら謝る」
仁「違う」
焦ったような否定。
その反応に、逆に引っかかる。
勇「じゃあ何」
じわじわと、苛立ちが混ざる。
勇「分かんねぇよ、このままじゃ」
仁「……分かんなくていい」
空気が、一瞬で冷える。
勇「は?」
仁「分かんなくていいって言ってんだよ」
あまりにも突き放した声。
胸の奥が、強く締まる。
勇「ふざけんなよっ」
思わず声が荒くなる。
勇「こっちは分かりたいんだよ」
勇「好きかもって言われて、あんな顔して、あんなことしてきて…」
言葉が、止まらない。
勇「なのに急に距離取られて、分からなくていいって?」
勇「無理に決まってるだろ」
仁「……」
目を逸らしたまま。
それが、余計に感情を逆撫でする。
勇「さっきのやつはいいのかよ」
思わず、零れる。
勇「触られても、あんな距離でも、普通に笑ってたじゃん」
一瞬、仁人の呼吸が止まる。
仁「それは仕事だろ」
低い声。
押し殺した感情が滲む。
勇「じゃあ俺は?」
引けない。
一瞬の沈黙。
そのあと、
仁「だから、それが迷惑なんだよ」
頭が、真っ白になる。
勇「……迷惑?」
仁「そうだよ」
視線を逸らしたまま。
仁「勝手に踏み込んできて、勝手に期待してさ。 こっちのことも考えろよ」
理解が追いつかない。
勇「俺っ…そんなこと…」
仁「もういい」
遮られる。
仁「関わんな」
その一言で、 何かが、音を立てて崩れた。
勇「……っ」
言葉が出ない。
胸が、痛い。
でもそれ以上に、 泣きそうな顔をしている仁人から、目が離せない。
拒絶している理由が、分からない。
勇「……分かった」
それだけを、絞り出す。
手を離す。
これ以上ここにいたら、 きっと、もっと酷い言葉をぶつけてしまう。
背を向けて、歩き出す。
足音だけが、やけに大きく響いた。
仁人side💛
言った。
言ってしまった。
「関わんな」
最低だって、分かってる。
あんな言い方、本当はしたくなかった。
でも、ああでもしないと、 勇斗は離れてくれない。
優しいから。
きっと、追ってくるから。
心の中で、何度も謝る。
でも、口には出せない。
仁「……っ」
唇を強く噛む。
視界が滲む。
気を抜けば、すぐに溢れそうになる。
でも、 泣く資格なんてない。
自分で選んだ。
逃げずに、突き放した。
それなのに…
なんで、こんなに苦しいんだよ。
胸が締め付けられる。
呼吸が、うまくできない。
これでいい。
これで、勇斗は自由になる。
自分に縛られなくて済む。
そう思ったはずなのに。
仁「……はやと」
小さく、名前が零れる。
抑えきれない音。
その場に、しゃがみ込む。
これでいい、と何度も言い聞かせる。
でも、 本音が、消えてくれない。
触れた温度も、 あの時の表情も、 全部、離れてくれない。
仁「……っ」
息が乱れる。
苦しい。
矛盾してる。
離したいのに、離したくない。
その感情に押し潰されそうになりながら、 ただ、呼吸を整えることしかできなかった。
勇斗side🩷
楽屋のドアを開ける。
空気が、一瞬だけ止まる。
舜太と太智、それから、柔太朗。
全員、こっちを見る。
勇「……」
何も言わず、そのまま自分の席に座る。
でも、分かる。
さっきの顔が隠せていない。
舜太「はやちゃん」
小さく呼ばれる。
勇「なに」
ぶっきらぼうに返す。
太智「お前さぁ」
珍しく、軽くない声。
太智「顔、えぐいで」
勇「……別に」
視線を逸らす。
それ以上、何も言いたくない。
柔太朗だけは、何も言わない。
ただ、じっとこっちを見ている。
騒がしくもなく、責めるわけでもなく、ただ、静かに。
その視線が、妙に落ち着いていて、全部見透かされている気がした。
舜太「じんちゃんと、なんかあったやろ」
核心。
一瞬、言葉に詰まる。
勇「……」
否定しない。
それだけで、空気が重くなる。
太智「さっき、廊下で話してたやろ」
あの廊下。
聞かれてたのか。
太智「なんか、込み入った感じやったけど」
勇「……」
拳を握る。
何も言えない。
言ったら、多分、全部溢れる。
その時、柔太朗が静かに立ち上がる。
柔「ちょっと行ってくる」
舜太「どこに?」
柔「よっしーのとこ」
迷いのない声。
そのまま、楽屋を出ようとする。
ドアに手をかけて、一瞬だけ止まる。
振り返って、俺の方を見る。
柔「はやちゃん、ちょっと」
短く呼ばれる。
その一言で、分かる。
勇「……うん」
ゆっくり立ち上がる。
柔太朗はそれ以上何も言わず、先に楽屋を出る。
少し間を置いて、後を追う。
廊下。
柔太朗の背中を、少し距離を空けて追う。
仁人のとこ、行くって言ってたよな…
胸の奥が、ざわつく。
でも、止めない。
止められない。
さっき、あんな風に突き放されたのに。
それでも、足は、勝手に前に出る。
さっき仁人と話した場所に近づいて、思わず歩みを止める。
咄嗟に、物陰に身を隠す。
すぐ近くで、二人の話し声が聞こえる。
しばらくして、足音と一緒に、ドアをノックする音。
そして扉が開く音がして、反射的にそっちを見る。
仁人は、もう中に入ったらしい。
一瞬だけ、柔太朗と目が合う。
そのまま、柔太朗も中に入る。
ドアが、静かに閉まり、廊下に沈黙が落ちる。
勇「……」
その場に、立ち尽くす。
聞くべきじゃないかもしれない。
でも、足が動かない。
さっきの、柔太朗の目を思い出す。
あえて、止めなかった。
そんな気がして。
気づけば、ドアの前に、立っていた。
無意識に、耳を澄ませてしまう。
微かに、漏れる仁人の声。
その声を聞いた瞬間、もう離れられなかった。
仁人side💛
勇斗が離れていった後、しゃがみこんだまま、しばらく立ち上がれなかった。
さっきの空気が、まだ身体に残っている。
胸の奥が、じわじわ痛い。
息がうまく吸えない。
遠くからこちらに向かってくる足音が聞こえる。
やっとの思いで立ち上がろうとしたが、その気配は感じ慣れたものだった。
仁「柔太朗…?」
顔を上げる。
いつもより、少しだけ真剣な顔。
でも、目は優しいまま。
逃げられないのが直感でわかる。
柔「よっしー」
目の前で止まる。
柔「撮影までまだ時間あるし、ちょっといい?」
穏やかな声。
でも、ちゃんと向き合うって決めている声で…
仁「……」
一瞬だけ迷う。
でも、このまま一人でいたら、もっとぐちゃぐちゃになる。
そう思い、小さく頷く。
そのまま、楽屋とは別の空き部屋へ。
中に入って、ドアを閉める。
静寂が流れる。
逃げ場がない。
柔「はやちゃんと…なんかあった?」
直球。
でも、声は柔らかい。
責めてない。
ただ、知ろうとしている。
仁「……別に」
反射で否定する。
柔「うそ」
即答。
でも、強くない。
仁「……」
思わず視線を落とす。
誰にも言うつもりなんて、なかった。
でも、このまま抱えている方が、無理だって分かってる。
柔太朗の視線が、逃がさない。
でもそれは、追い詰める感じじゃなくて、ちゃんと受け止めるっていう目で。
その優しさに、少しだけ、気が緩む。
仁「……さっきさ」
ぽつりと落とす。
仁「俺、あいつに、関わんなって言ったのよ」
喉が、きゅっと締まる。
仁「好きかもって、言ったくせに」
言葉にした瞬間、自分で自分を殴られたみたいに痛い。
仁「最低だよなっ」
小さく笑おうとする。
でも、全然笑えていない。
柔「理由、あるんでしょ?」
その一言で、完全に崩れる。
仁「無理…なんだよ」
声が震える。
仁「思ってたより、全然俺、あいつに…依存してて」
ぎゅっと、自分の腕を掴む。
仁「いないだけで、おかしくなるし、ちょっと離れただけで、不安になって」
仁「匂い残ってるだけで…落ち着かなくなるし…」
息が浅くなる。
うまく吸えない。
仁「本能で求めてる感じがして…自分の意思じゃ、止まらない気がして」
言いながら、どんどん実感していく。
仁「これで、番とかになったら…ヒート来たら…」
声が掠れる。
仁「全部、あいつに向くんだぞ…?」
仁「俺、多分……」
言葉が詰まる。
怖くて、言いたくない。
でも……
仁「勇斗のこと…壊す」
小さく、落ちる。
仁「あいつ優しいから、絶対全部受け止めるし、拒まないし」
仁「そしたら俺……もっと欲しくなって、止まんなくなる」
視界が滲む。
仁「……っ」
拭っても、落ちる。
止まらない。
仁「こんなん、好きとかじゃねぇよ……」
仁「ただの依存だろ……」
苦しそうに吐き出す。
仁「だから、離れないといけな…くて……」
声が崩れる。
柔「よっしー」
柔太朗が静かに、近づく。
そっと、肩に手を置く。
強くないけど、ちゃんとそこにいるって分かる温度。
柔「それ…ただの依存って言い切るの、しんどくない?」
否定じゃない優しい声。
仁「……」
詰まる。
柔「好きだから、そうなってる部分もあるんじゃない?」
柔「怖いのも分かるけど…一人で抱えて、勝手に終わらせる方が、もっと辛いと思う」
仁「……っ」
唇を噛む。
分かってる。
分かってるけど…
仁「……でも」
顔を歪める。
涙でぐちゃぐちゃのまま、それでも、少しだけ笑おうとする。
仁「嫌われたく…ないんだよ……」
ぽろっと、本音が落ちる。
仁「こんなん知られたら重いって思われるし…引かれるかもしんねぇし…」
仁「でも……」
ぐしゃっと笑う。
仁「それでも、勇斗に嫌われたくない……」
涙が止まらない。
声も、ぐちゃぐちゃで。
その瞬間、ドアが勢いよく開く。
仁「……っ!?」
反射的に振り返る。
息が止まる。
そこに立っているのは……勇斗。
さっきまでの全部、聞かれていたかもしれない。
頭が真っ白になる。
動けない。
柔太朗が、静かに勇斗に向かっていく。
柔「よっしー、ごめん」
少しだけ申し訳なさそうに、でも、どこか安心したように。
柔「二人のことだし、ここからは二人で話して」
優しく背中を押すように言う。
勇「……ありがとう」
短く、でも、ちゃんと伝わる声。
柔太朗は、小さく笑う。
柔「いいよ」
それだけ言って、二人の間をすり抜ける。
ドアが閉まる。
残されたのは、自分と、勇斗。
逃げ場は、もうない。
最後にお邪魔します、ちゃです!
更新頻度落ちててすみません…💦
やっとここまで来た…明日にはちゃちゃっと(でももちろん丁寧に)仕上げて、更新したい所存です🙌
コメント、いいね、ありがとうございます!コメントお返しできてなくて申し訳ないです…でも全部読んでます🙏非常に励みになっております😭🫶💞
完結が近づいて来ました…!引き続き楽しんでいただけますと幸いです。
コメント
11件
もうほんとにこの作品大好きです✨🫶💕投稿頻度落ちてもいいのでどうかこの作品だけは完結させて欲しい❣️
