テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
174
オレジ
43
#王国
星崎 ヒロア
821
彼女は、2年程休職期間を経ていた。
その期間に、何もしていなかった訳では無く、心療内科に通いながら、就労移行支援に通っていた。職歴にも書けるので、その期間は、ゆったりとした生活を日々気ままに送っていた。
彼女には特殊な性癖とは違った、センスを持ち合わせていた。
少し仄暗いモノが好きではあったが、血やスプラッターモノは好きじゃなかった。
仄暗い性質だったので、メンヘラや可愛いモノに抵抗感のある彼女は、雨や、ただ物静かに佇む電柱、夜、星、宇宙、旅人の出てくる作品、が好きだった。
創作もよくしていて、彼女は自分が引きこもれる世界観を作り上げるような静かな女性だった。
年齢は26歳。
そろそろ、現実を見なきゃと思っていた彼女はゴミ拾いの仕事に、仄暗い性質《ホノグラセンス》で、憧れを感じ、就職する事になった。
職場で初めての対面式があった。
式という程、大袈裟なモノじゃなかったが、支援員1人と彼女と知り合いの男性、職員の人で、話し合いの場が設けられた。
「私、ここに通いながら、資格の勉強したいんですよね。」
「良いじゃん!貴女なら、警察官にだってなれちゃうかもよ?」
「はは…(苦笑)」
なんていうやりとりを支援員と交わし、彼女は、自分の職場になる場所へと移動した。
初めの頃の、慣れない空気や、仕事のオフィス感漂うロッカールームが苦手な彼女は、私物や仕事着を急いで置いて、その日は時間が来たので帰宅する事になった。
それから、車で各地のゴミ拾いをする公園に来ては、ゴミを拾い、周囲の人達ともコミュニケーションをはかっていた。
ある日、行動班が変わる事になり、22歳の男の子と、彼女より年上の男性。彼女、初めの支援員で、周ることになった。
22歳の男の子が、ペットボトルを3つ器用にトングで掴んで、丈の高い草の中から表れた。
「シュールですね…」
「うん。」
それが、彼女と彼がまともに対面して会話した内容だった。
彼女が就職した職場は障害者雇用専門の仕事だったので、勿論、彼にも障害があったのだが、彼はIQが偏っているのか、好きな物を語る時は、饒舌になり、他の時は寝てるか、物凄く静かな子だった。
仄暗い性質の彼女はゴミ拾いという仕事をしてる、ちょっと小動物的な彼に可愛いと感じてしまった。
公園周りから帰ってきて、コミュニケーションは好きだった彼女は男性に言う言葉じゃないかもしれないけど、車から降りて彼を小走りで、追いかける。
「可愛いね。」
「うん。パンケーキ食べよ。」
(何言ってんだこいつ…)
彼女は未来の彼氏に覚め醒めとした反応を感じた。
コメント
1件
読ませていただきました。 「仄暗い性質」──雨や電柱、夜や宇宙に惹かれる感覚、すごくわかる気がします。26歳でゴミ拾いの仕事に憧れを抱くって、普通の美談じゃなくて、ちゃんとその人の影の部分から生まれた選択なんだなって感じがして、惹き込まれました。 22歳の彼との「シュールですね」「うん。」の会話、距離感が絶妙で刺さりました。彼女が「可愛いね」って言った後の彼の「パンケーキ食べよ。」、あのズレ、めっちゃ好きです。 この先、ふたりの間にどんな“闇”と“温かさ”が滲んでいくのか、静かに読み続けたいなって思いました。 素敵な作品をありがとうございます。