私
の場合、小説を書くにあたって「主人公」とはどういうものなのかということをひたすら考え続けた結果、「自分ではない誰かの物語の主人公になりたい」という思いを抱くようになった。それが転じて「物語の登場人物のように生きていたい」「登場人物たちと同じ人生を歩んでみたい」と思うようになり、今に至る。
もちろんこれはあくまで自分の話であって、すべての人がそうだとは限らないし、そもそもそう考えること自体がおかしいと思われることもあるだろう。しかしそれでもなお、私はそういう思いを抱いていることを否定できないのだ。
それは、たとえどんな形であっても、自分が生きていると感じられない人生というものに耐えられないからだと思う。
―――もし願い事がひとつ叶うならば 誰だって一度は考えたことがあるであろうこの問いに対する答えなんてものは結局人それぞれだ。
富を求める者、名声を望む者、異性関係について悩む者……様々な回答がある中で、俺の場合はこう答えることにしよう。
俺は願わくばもう一度だけやり直せるチャンスが欲しい。あの時こうしていれば良かったとか、ああしなければよかっただとか、そんな後悔をしたことがない人間なんていないはずだ。
もしも過去に戻れるならば、誰だってやり直せるチャンスがあると思うはずだ。しかし過去に戻るというのは不可能なことだし、ましてや戻る前に現在起こっていることを防げるはずがない。
つまり過去の失敗をなくすことはできないわけだ。
それでもなお、過去に戻りたいと言う人間がいるとしたら、それはきっと後悔のない人生を送るために、どうしてもやり直したいということなんだと思う。
そしてそういう気持ちを抱く人の多くは、おそらく自分の性格について悩んでいるのではないかと考えられる。自分がこうだったから失敗したとか、ああいう行動をしてしまったことで人間関係を壊してしまったなど、自分に関する何かしらの失敗体験を持っているからだ。
だからこそ、過去に戻ってもう一度人生をやり直したいと願っているんじゃないかと思うんだ。
そして僕は、今まさにそんな状況に陥ってしまったのだ……。
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