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第28話
リーパー……ソラーレは、自分の身を顧みずに突っ込んでいった。まるで特攻隊みたいに……
……戦争で不利な時によくあるやつだな。リー……ソラーレの心は本当に変わった訳じゃない。大切な物を見つけられたから、芽生えたんだろう。
「ノアを、殺そうとしたの? お前からは絶対に奪わせない。というか、神様が言ったって私は拒絶するけどさ」
おっと……聞いてはいけなかったな。
「でも、拒絶するのは口先だけじゃないとさ、お世話になってるからね。少しくらいお願いしたら、転生させてくれそうな感じだし」
意地悪顔で笑ってるふりをしているソラーレが剣を大きく振るった。リーパー時代よりも早い。
転生、か……確かに、世話になってるから転生くらい指先一つでできるけど……耐えられるのは、自分だけって気づいてないのか。
ちゃんとノアも着々と体力を削っている。
部屋は、あのぶつかった所以外は何も変わってない。ソラーレが守っていたからだろう。
「くそっ……こんな小娘ごときに……」
「ノアを殺そうとしたんだから、保安局か、聖騎士に捕まっときな」
背中に擦り傷や痣を無数に作ったソラーレは怯むこと無く、その切りかかってきた奴と金属音を激しく鳴らしていた。
一方で、ノアは体力を削っているけど、自分もきつそうに見えた。
お互いに顎から汗を垂らして、剣を振るっている。
……ノアも上達したけど、こいつらは裏でトップクラスの化け物。流石に余裕で勝つ、というのは難しいだろう。
歴史に残ってもおかしくないくらいのトップクラスの戦いがこの一室で、行われていたけど、残念ながら観戦者はこの僕以外いなかった。
「獣人。ここで雇ってもらったのが運の尽きだと思え」
……汚いな。
人生一周目だけの記憶だと、そんな事しか考えられないのはあるある。
ソラーレはまた別枠で、地獄送りにさせようとしたけど……
「……雇ってもらったら、どれだけの付録がついてくると思ってるんです?」
そう言ってその人を振り払った。
「ほう……常軌を逸してるな。この馬鹿犬!」
どこからどう見ても、狼だろ。
僕はそんな突っ込みを入れつつ、ノアの尋常も無い剣の振り方を見ていた。そんな振り方をするのは、リーパーを含めいなかった。
言語化するのが難しい。狼だからできたのだろうか? そんな常識外で、神様の僕でも分からない。
……言っておくけど、分からない事もあるからね。前例が無ければ勿論、一人一人の心も。
「確かに、俺みたいな狼は常軌を逸していますね」
ノアは、嫌味たっぷりな表情で、剣を横にして振った。真っ青で鞭で叩かれたような痣ができるだろう。
八歳と言っても舐めてはいけない。異世界で元、リーパー――死神と恐れられた魂が宿った……いや、その魂が見極めて、大事に育てる卵なのだから。
僕の口角は、無意識の内に上がっていた。
……残酷で完璧な世界。自分で作った世界の数々。
全ての世界にあるのは『産まれる』『死ぬ』『時間』の三つ。誰もが何かから産まれて、生きてから最後は必ず死ぬ。誰が消えようと、誰が産まれようと、関係無しに時間は進む。
その男は転がってピクピクと指先が痙攣していた。
でも、手元に剣は無い。
さっきまで握っていた剣はソラーレの右肩に刺さっていた。ワンピースが赤く染みている。剣はもう振れないだろう。
「リナっ!」
ソラーレは、そのまま肩を抑えて片膝をついた。
「フッ。挙句の果てには敗れるのか」
……ノア。頼む。
僕は、今のソラーレに相方が必要という事は分かった。
「ノア、お願い」
ソラーレは、相手に電気を流してチャンスを作った。
その間に、ノアがそいつを切ろうとした。だけど、反撃は勿論してくる。
これは、ノアにかかっている。
……死んでも、地の底には落とせないな。手に掛けてきたのは、全員罪深い人生を歩んだ体だったのだから。それをノアが行っていなかったら、沢山の犠牲がでていたのだろう。
ノアは、僕たちの期待に破れて蹴られてしまったけど、その男たちも力尽きて全滅した。
僕は表に出て、戦場を肉眼で確認した。二人の血だけが血痕として残っていた。
そして、ノアとソラーレ……いや、セリーナの額に手を当てて、魔法をかけた。勿論、あの三人にも。
「はぁ〜……流石の僕も肝が冷えたよ。ノア。君も、よくやった。セリーナ。あれに気づくのにはあともう一歩だ。お互い守り合って頑張れ」
そう言いながら僕は、変装を解いて天の王座に腰をかけた。
……神様か。神様と呼ばれるだけで、元はといえば名もなき何かなんだけどね。
独り、天の上の椅子に座りながら鼻で笑った。
コメント
1件
いやあ、今回は神様視点のナレーションがいい味出してましたね。「前例がなければ分からないこともある」って、全能の神様がそう言い切るところに、この世界の深みを感じました。あと、ソラーレが「拒絶するのは口先だけじゃない」とノアを守る姿にじんときました。お互いを信頼して戦う二人の絆が、戦闘描写のスピード感と合わさって、一気に引き込まれました。続きが気になります!