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「玲央、話がある」
今日はこんな自分に蹴りをつける日。
自分は誰のことも幸せにできず、自分の存在意義がわからなくなっていた。
そんな私を誰よりも思い続けてくれたのは、やっぱり彼。
病み上がりの仕事は体に堪えるものがあったけど、玲央は変わらず仕事をし続けた。
それが普通、それでいいんだけどね。
つい、仕事を休んでまで看病してくれた彼の顔が浮かぶ。
普通でなんの変哲もない生活だったけどそれが1番の幸せで、温もりで、自分は何を求めていたんだろうか。
今の生活に不自由もないし私にときめきと愛を全力で注いでくれた玲央には申し訳ない。
「離婚しよう」
自分の体が思ったより辛いことや、もう子供を産むことは難しいと言われたこと、全てを玲央に打ち明けた。
玲央の両親は何より孫の顔を見ることを楽しみにしている。
そんな玲央にはまた新たな出会いがあってほしいと願ったからだ。
荷物も少なかった私を玲央は手を振って見送ってくれた。
あっけない1年間だったな…
このまま彼の家に行っても帰れなかったらどこで野宿をしようか。
こんな私を許してくれるはずがない。
私が私を許せない。
ごめんね…そんな簡単な言葉、言えるわけがない。
もっと早く気づけばよかったんだ。
いつものようにチャイムを押し、電車が走る音、そよ風に揺られながら彼を待った。
「おかえり」
彼は全部を見通していたかのようにまるであの頃の私を待っていたかのように
普通に、平凡に、私を家に入れた。
「飯は?俺ラーメン食べに行くけど」
痩せ細ってしまった私たちには、ラーメンなんて入りそうもない。
でも、あの頃毎週食べていたあのラーメンを私も食べたかった。
「私も行く」