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「……バレンタインのチョコレートです」
頬を赤らめて口にするのに、貰えて良かったという思いでふぅーっとひと息を吐いて、
「用意してくれていたんですね…でも、この形は……」
チョコを手の平の上に乗せて眺めた。
「……えっと、その……私の、唇の形です。……溶かしたチョコに、ラップで唇を包んでキスをして作りました……」
彼女がますます真っ赤になって言う。
「……作ったのだけれど、キスのチョコなんて渡すのが恥ずかしくて、それでずっと渡せずに遅くなってしまって、ごめんなさい。一臣さん……」
はにかんで話す智香の顔に、この上もないくらいの幸福感が込み上げる。
「こんなチョコをもらえるなど、待っていてよかった……」
「……えっ、待っていてくれたんですか?」
彼女が驚いたように私の顔を見る。
「おかしいですか?」
問い返すと、「いいえ」と、首が横に振られ、「先生が私のチョコを待っていてくれたということが、ただ嬉しくて……」にっこりと微笑まれた。
「……君からのチョコを、悩ましいくらいに待っていました……」
本音を口にすると、顔が赤らんでくるようだった。
「そんなに……ありがとうございます。一臣さん」
ちゅっと彼女からキスを贈られて、さらに顔が赤くなりそうにもなって、メガネのブリッジを指で押し上げるふりで照れた表情を覆い隠した。