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闇いずリル

25 - 第25話神様がいるとしたら、それはきっと……人なんだと思うんです

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2022年08月26日

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「おい、聞いたか?」

教室の一角で昼食をとっていた少年が、不意に声をかけてきた。

「何をだよ?」

弁当を食べていた手を止め、友人である少年の顔を見る。

「お前、まさか知らなかったのか!?」

信じられないと言わんばかりの表情を浮かべると、彼は声を大きくして言った。

「最近になって、また目撃されるようになったらしいぞ!」

「だから、何の話だってばよ?」

要領を得ない友人の態度に苛立った様子で、別のクラスメイトが会話に加わる。

「例の噂話だ! あの超常現象研究部が作ったっていう噂の動画!!」

興奮気味の友人とは対照的に、彼の方はあまり乗り気ではないらしく、「あぁーあれね」と言いながら、再び食事を再開する。一方話しかけられた方は、周囲の反応に不満があったようで、「なんだ知ってたんじゃんかよぉ」と言って口を尖らせる。

「そりゃあ知ってるさ。うちの学校の生徒なら誰でも知っていると思うぜ。それにしても……またアレが現れたって言うんかい?」

「うん。そうなんだよ……」

「それで今度はどんなヤツなんだ? まさか例のごとくあの化け物どもの中にいるっていうんじゃないだろうね!?」

「うーん……それは分からないけど……少なくとも前回みたいに人間の姿のままじゃなかったらしいよ。全身真っ黒だったとか言ってたし」

「そいつぁひょっとしてイカ墨パスタかも知れねぇな! ハハッ!」

「笑い事じゃないでしょう。もしもそれが本当に黒い怪物だとしたら……かなり危険だよ。だってもし本当にそうだとしたら、ソイツはもう普通の人間の枠からは外れちゃっているわけだから」

「……ま、それも確かにそうだけどな。ところで話は変わるんだけど、お前さん、あの時一緒にいた女の子とはあれっきりなんだろうな? ちゃんと別れの言葉ぐらい言ってきたんだろうな?」

「え? あ、ああもちろん。ちゃんと言ってきたよ。大丈夫、心配はいらない。僕の方はまだ未練はあるけれど……でももう吹っ切れたつもりだし。いつまでもウジウジしてなんかいないさ」

「そっか、それを聞いて安心したぜ。俺としちゃあお前さんの気持ちもよく分かるからな。俺も昔そういうことがあったからよぉ。でもまああんまり思い詰め過ぎるんじゃねえぞ。時には諦めることも肝心だかんな。女なんて星の数程もいるんだ。もっと広い視野を持って生きていかなくっちゃあ人生つまんねーぞ」

「……はい」

電話の向こうからは明るい口調の男の声が聞こえてくる。僕はそれに生返事をしながら、ぼんやりと窓の外に広がる風景を見つめていた。

僕の名前は茅森太陽(ちもりたいよう)。高校二年生だ。身長百七十センチ体重五十五キロ、髪の色は茶褐色、顔立ちはやや中性的であるものの決して美男子とは言い難い容姿の持ち主だ。趣味は読書と散歩、好きな食べ物は肉料理全般、嫌いなものは特になしといったところか。

さて、何故こんなことを突然話し始めたかというと、それは現在進行形で僕の身に起こっている出来事が原因だったりする。簡単に説明するならば、僕にはある特殊な能力が備わっていたのだ。そしてそれが原因で、つい最近まで通っていた高校ではイジメられていたりしていたのだが……今は状況が一変。なんと僕は学校で一番の人気者である女の子と交際することになったのだ! それも、ただ付き合っているだけじゃない。僕たちは恋人同士なのだ!!

「ねえねえ、今日って一緒に帰れたりする?」

放課後になり、授業が終わった教室内で、一人の女子生徒が話しかけてきた。セミロングの髪を後ろで束ねた髪型をした小柄な女性である。制服姿のままの彼女にしてみれば、今日の部活は休みらしい。ちなみに、彼女とは同じクラスでもあるため、こうしてたまに会話をすることがあった。

「あーうん。大丈夫だよ」

「やったっ!」

嬉しそうな笑みを浮かべながらガッツポーズを取る彼女。そんな彼女を見ているだけで、なんだかこっちまで幸せな気分になれてしまう。きっと今の自分の顔は緩みきっていることだろう。だけど仕方がないじゃないか。だって彼女が可愛いすぎるのだから。

「えへへ~♪」

可愛らしく笑う彼女は、そのまま僕の手を握ってきた。しかも指を絡めるようにして。いわゆる『恋人繋ぎ』というヤツだ。普段なら恥ずかしくて絶対にできないことだけど……今は不思議とそれができていた。

そして僕は気づく。彼女がとても柔らかい手をしていることに。それはきっと女の子だからだと思うけど、それでも僕にとっては初めて知る感触だった。

(なんかすっごくドキドキしてきたんだけど!?)

今までこんな風に異性を意識したことはなかったと思う。もちろん相手は同年代の女子ではあるけれど、それでもここまで緊張することはなかったはずだ。

それが今では――

「ねえ、次はどこに行く?」

「えっと……じゃあ今度はさっきとは逆方向に行ってみるってのはどうだい?」

「うん! いいよ!」

彼女に話しかけられるだけで心臓が激しく高鳴り、身体中の血液が沸騰しそうなくらい熱くなる。まるで全身が性感帯になったみたいに敏感になり、少しでも触れられると声が出てしまいそうになるのだ。

(うぅ~、一体どうしてこうなったんだよぉ~?)

自分に起きた変化の原因が全く分からない。これが俗に言う恋というものなんだろうか? だとしたら僕は生まれて初めての恋に落ちてしまったことになる。それもよりにもよってクラスメイトである彼女と。

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