初音ライダー剣
第6話
蜘蛛
夜、一組の男性と女性が手を繋いで歩いていた。しかし、その後を1匹の蜘蛛が尾行していた。そして、男女がある程度歩いたところで、蜘蛛の糸が2人を捕らえた。
男「へ!?」 女「何!?」
2人の目の前にスパイダーアンデッドが現れた。2人は知らない間にスパイダーアンデッドの糸に絡まり、身動きが取れなくなっていた。
男「うわあああ!」 女「きゃあああ!」
朝の9時と10時の間、ミクはBOARDの宿舎で目を覚ました。しかし、自分の部屋ではなく、空き部屋のベッドでだ。
ミク「う…」
ミクは体に少し鈍い痛みを感じた。まだ以前の戦闘の傷が癒えていないのだろう。そんな時、ちょうどウタが部屋に入ってきた。
ウタ「あ、ミク、起きた?」
ミク「ウタ…?」
ウタ「チーフ、ミクが起きました!」
ウタはミクが目覚めたのを確認すると、キヨテルを呼ぶ。
ミクが寝ていた部屋にキヨテルが入ると、ミクは起きたばかりながら、すぐに前回の戦闘の事を伝えた。
キヨテル「…そうでしたか。」
ミク「…すいません。」
キヨテル「謝ることはありません。ミクは全力で戦ったんですから。戦えない我々に代わって、ね。」
ミク「でも、ヤツを倒せなかった…」
ミクは前回、巡音ルカ/仮面ライダーカリスと戦って、勝つことができなかった。逃げたり怖気づいたりはしていない。むしろ全力で戦ったが力及ばず、敗れてしまった。カリスを倒せなかったことで、今頃カリスに襲われている人がいたら自分のせいだろう。そのことが、ミクに少し影を落としていた。
キヨテル「ミク、大丈夫ですか?」
ミク「え、ええ、大丈夫です。ちょっと痛みますけど…」
キヨテル「そうですか。でも、無理は控えてください。」
ウタ「実際、今はミクよりもMEIKOさんが問題ですよ。」
ミク「へ?」
キヨテルはミクを気遣う。しかし、ウタは問題はミクよりMEIKOの方だと言う。
ミク「姉さん、何かあったの?」
ウタ「…言いにくいんだけどね、怖気づいちゃって、ライダーを降ろさせてくださいって言って聞かないの。」
ミク「な、何で…?」
ウタ「多分、カリスに殺られかけたことが相当怖かったんじゃないかな…」
ミク「そんな…」
ウタ「まいったよね。ギャレンの適合者は他にいないのに。」
ミクとウタは首をかしげる。
キヨテル「MEIKOのことはひとまず置いておきましょう。それよりカリスのような強敵に対抗すべく、新戦力が必要です。」
ミク「新戦力…ですか?」
キヨテル「ええ。先の戦闘データを解析した結果、カリスの戦闘能力はブレイド、ギャレンを上回ると判明しました。そのため、以前から開発中だった新型ライダーシステムの完成を急ぎます。」
ミク「…そうだ!新型ライダー!」
ミクは目を光らせる。元々その新型ライダーシステムはミクが変身する予定だったからだ。
ウタ「それで、どうするんですか?」
キヨテル「開発部には完成を急ぐよう言ってます。こちらは新型に必要なパーツを揃えるべく、新型のベースになるアンデッド・カテゴリーAを見つけて封印しなければ。ミク、起きたばかりですが、出撃できますか?」
ミク「はい!ゆっくり休みましたから!」
ウタ「丸2日寝てれば疲れも取れるよね。」
ミク「へ?2日も寝てたの、私…」
キヨテルの問いに、ミクは元気に答える。しかし、ウタがミクの上げ足を取るように皮肉る。
キヨテル「大丈夫そうですね。それじゃ、頼みましたよ、ミク。」
ウタ「ブレイドアーマーとブルースペイダーのメンテは終わってるから、ミクさえ良ければいつでも出撃できるよ。」
ミク「はい!…あ、その前にMEIKO姉さんのとこに行きたいんだけど。」
ウタ「MEIKO先輩なら外で休んでると思う。」
ミクは出撃の前にMEIKOに声をかけようと思った。そして、外でベンチに座って空を眺めているMEIKOを見つけ、話しかけてみた。
ミク「お疲れ様、姉さん。」
MEIKO「…」
ミクは紅茶を持ってMEIKOに挨拶する。だが、MEIKOは俯き、返事は返ってこない。
ミク「ありがとう、助けてくれて。」
MEIKO「…何のこと?」
ミク「だって、私がカリスにやられかけた時、姉さんが助けに来てくれて、そのお礼言ってなかったから。」
ミクは前回、MEIKO/ギャレンに救援してくれたことの礼を言う。だが、MEIKOは素っ気ない。
MEIKO「…任務の話は止めてくれる?私、もう戦えないから…」
ミク「何で?」
MEIKO「あれ以来、怖くてしょうがないの。」
MEIKOはすっかり臆病風に吹かれ、戦意を喪失していた。カリスに首を取られる寸前まで追い詰められたことがトラウマとなっていた。
ミク「でも、これまで死ぬかもしれないってところでずっと戦ってきたでしょ?それは分かってるよね?」
MEIKO「…良いわよね。恐怖って言葉を知らない人は。もっとも、そういう人ほど早死にするらしいけど。」
ミクはMEIKOを何とか戦いに再起させようとするが、MEIKOはミクを皮肉って返す。
MEIKO「…さっさと行ってよ。任務あるんでしょ?」
MEIKOはミクに早く任務に行くよう促す。
ミク「…そう。でも、信じてるよ。また戻ってきてくれるって。」
ミクはMEIKOに期待の言葉を向けつつ、任務に行くことにした。
ブルースペイダーを駆って出撃したミクはウタから通信を受ける。
ウタ「この先の自然公園でアンデッドの反応を確認!」
ミク「OK!」
その頃、自然公園では親子連れやカップル、学生などの人がいた。その自然公園の中で、多数の蜘蛛が彼らを監視している。スパイダーアンデッドの配下の蜘蛛たちだ。だが、人間たちはその存在に気付くはずもない。その人込みの中を、ミクは探索していく。その最中、ミクは珍しい人たちと再会した。
リン「あ、ミク姉!」
ミク「へ!?」
モモ「お久しぶりです。」
鏡音リンと桃音モモ、以前ミクたちに興味を持って喫茶店で話しかけてきた少女たちだ。
ミク「ああ、リンちゃんとモモちゃんか!」
リン「久しぶりー!今どうしてんの?」
ミク「どうしてるって…今、任務でここにいるの。」
モモ「任務?」
ミク「アンデッドを追ってるの。この近くにいるって聞いたから。」
ミクは久々に再会した2人と楽しそうに話す。その矢先、林の奥から女性の悲鳴が聞こえた。
リン「今のは…?」
ミク「行ってくる!」
ミクはリンとモモに背を向け、走って林に入る。そして、林に入ったところでブレイバックルを取り出し、腰に装着する。
ミク「変身!」
「TURN UP」
ミクはオリハルコンエレメントをくぐってブレイドへと変身し、アンデッドを探す。そして、糸で捕らえた女性を襲うスパイダーアンデッドを見つけた。
ミク「見つけた!カテゴリーA!」
ブレイドは勇んでブレイラウザーを抜き、スパイダーアンデッドに挑む。スパイダーアンデッドは女性を放し、その場から一歩退いてブレイドの斬撃を回避した。
ミク「早く逃げて!」
ブレイドは女性を助けると、彼女を逃がして再びスパイダーアンデッドに挑む。しかし、スパイダーアンデッドの姿はなく、気配も感じなかった。
その頃、リンとモモは自然公園の広場でミクを待っていた。しかし、スパイダーアンデッドが出てきたことで和やかな雰囲気は終わり、人々は公園から逃げていく。
リン「モモ、逃げよ!」
モモ「う、うん!」
リンとモモも公園から逃げようとする。しかし、スパイダーアンデッドは彼女らを見つけ、2人目掛けて糸を吐きかける。それに足を取られたリンは転倒し、スパイダーアンデッドに引きずられる。
モモ「リンちゃん!」
リン「モモ!助けて!」
リンとモモは互いに右手を伸ばすが届かず、リンはスパイダーアンデッドに捕まってしまう。スパイダーアンデッドは糸で捕らえたリンを抱えると、そのまま林の奥に身を隠した。
モモ「リンちゃん…」
モモはリンを案じ、目に涙を浮かべた。その直後に、ブレイドが林から出てきた。
ミク「何があったの?」
モモ「…ミクさん…リンちゃんが…」
ブレイドは泣きじゃくるモモに何があったかを聞く。
その後、ブレイドはブルースペイダーを駆って、林の奥の古ぼけた洋館の手前に来た。ウタが調べた情報では、ここにスパイダーアンデッドがいるらしい。ブレイドはブレイラウザーを手に持ち、そのまま洋館へ入っていった。
玄関から既に大きな蜘蛛の巣が無数に張ってあった。しかし、そこからさらに廊下へ進むと、そこには大型の蜘蛛の巣が大量に張ってあり、それには多数の人間が老若男女問わず蜘蛛の巣に磔にされていた。その中にリンの姿もあった。
ミク「リンちゃん、しっかりして!」
ブレイドはリンを揺すって起こそうとする。しかし、リンは気絶したままだ。ブレイドはリンを蜘蛛の巣から引き離そうとするが、中々離れない。そこで、ブレイドはブレイラウザーを振るってリンを蜘蛛の巣から切り離す。リンは意識を失ったままで倒れそうになったが、ブレイドに抱えられた。その直後、天井からスパイダーアンデッドが出てきた。
ブレイドはリンを壁際に置くと、ブレイラウザーを取ってスパイダーアンデッドに挑む。スパイダーアンデッドは口から勢いよく糸を出し、ブレイドを壁に激突させて捕らえる。
ミク「うわッ!?」
スパイダーアンデッドは動けなくなったブレイドに追い打ちをかけるように、爪でブレイドを執拗に攻撃する。
ミク「うッ!…あッ!」
ブレイドは動けず、反撃ができない。ただ、やられるだけだ。だが、その状況がブレイド/ミクにあることを思い出させた。カリスを倒せなかったことだ。あの時のように、ここで自分が敗れては、このまま全員がスパイダーアンデッドに捕食される。それだけは阻止しなければならない。その使命感とカリスへの対抗心がブレイドを掻き立てた。
ミク「うあああああああああッ!」
ブレイドは気合を入れて奮起し、スパイダーアンデッドの糸を破り、ブレイラウザーでスパイダーアンデッドに一撃を加えた。スパイダーアンデッドはよろけ、体制を崩してしまう。ブレイドはその攻め時を見逃さず、ブレイラウザーでスパイダーアンデッドを連続で斬りつけ、そして、蹴りを入れてスパイダーアンデッドを洋館の窓から蹴り飛ばし、洋館から追い出した。ブレイドはこのチャンスを逃さず、ブレイラウザーのオープントレイを開く。
ミク「もう逃がさない!」
ブレイドはブレイラウザーから♠5、6、9の3枚のカードを取り出し、ブレイラウザーにラウズする。
「KICK」 カードの中でローカストアンデッドが高く跳び上がる。
「THUNDER」 カードで中のディアアンデッドが角から電撃を放つ。
「MACH」 カードの中でジャガーアンデッドがマッハの速度で走る。
3枚のカードの絵柄がブレイドにオーバーラップされる。ブレイドはブレイラウザーを逆手に持って体を捻った後、ブレイラウザーを天に掲げて地面に突き刺す。
「LIGHTNING SONIC」
ブレイドは猛スピードでダッシュした後、大きくジャンプし、空中で前転して、電撃のエネルギーを纏った右足を突き出し、スパイダーアンデッド目掛けて飛び蹴りを敢行する。その右足裏の♠のマークからは蒼い雷光が迸っている。
ミク「づあああああああ!」
スパイダーアンデッドはブレイドの「LIGHTNING SONIC」を受けて大きく蹴り飛ばされ、大ダメージを負い、飛ばされた先で倒れ伏し、アンデッドクレストを開いた。洋館から出たブレイドはそこに空のラウズカードを投げ入れ、スパイダーアンデッドを封印した。
ミク「はぁ…はぁ…」
ブレイドは息を切らしながら変身を解き、ミクの姿に戻った。その直後、背後の木陰から拍手が聞こえてきた。
?「素晴らしい!」
黒いコートを着たグラサンの男はミク/ブレイドの戦いを称賛して拍手を送る。
ミク「誰…ですか?」
伊坂「開発部の伊坂だ。君の戦いぶりは見せてもらった。実に見事だったよ。」
ミク「そ、そうですか…?」(こんな人いたかな…?)
伊坂と名乗る男は自分がBOARDの開発部の人間だという。ミクは照れ臭そうにするが、ミクはこの人物を知らない。実際、開発部と実戦部では所在地がまた違うため、面識がないのは無理もなかった。
伊坂「さあ、先のカードを出したまえ。開発部に持っていく。」
伊坂は手を差し伸べてスパイダーアンデッドを封印したカードを渡すよう迫る。
ミク「…でも、支部への連絡がまだ済んでません。」
伊坂「心配ない。キヨテル支部長には既に伝えてある。」
ミク「そうですか。じゃあ…」
ミクは少し怪しがるが、伊坂の勧めに従い、カードを渡す。しかし、カードを受け取った伊坂は突如として不気味に笑い出す。
伊坂「ふふふ、ありがとう。これで必要なモノが全部揃ったよ。」
ミク「へ!?」
ミクは伊坂の不気味な笑いを怪しんだ。すると、伊坂はアンデッドへと変化し、手に持った剣でミクを攻撃する。
ミク「うあっ!?」
ミクは伊坂の一撃を受けて倒れる。
伊坂「安心したまえ。このカードは予定通り、新型のライダーシステムを造るのに使わせてもらう。」
ミク「ま…」
ミクは伊坂/ピーコックアンデッドの方へ右手を伸ばす。しかし、届くはずもなく、ピーコックアンデッドは♣Aのカードを持って消えていった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!