テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
今日も授業が始まる、そう思っていたのだが。今日は講堂ではなく入学時のときにきた広間に集まっていた。
「えー、今日は特別にアシュトン様がきています」
広間は驚きと歓喜の声で一瞬にして騒がしくなった、アシュトン様、とは誰であろうか。
「なぁセト、アシュトン様ってなんだ?」
「えっ、知らないの!?今超有名な竜だよ」
竜、と言えば町を焼き払うほどの強さを持つと言われている存在だ。獣人にも人間にも味方をしない。
自分が正義だと思った方に加勢をする。ボーランド公国が作られたときは竜が人間側についていたからともいわれている。
俺はそれくらいにしか竜のことを知らない。アシュトン様という存在がなぜそこまで有名なのか?
「で、どんな竜なんだよ?」
「アシュトン様の特殊スキルは人の素質を見抜く能力なんだ、こんな能力今までなかったんだよ」
「人の素質…………?」
もしかして今日ここに集まったのは生徒の素質を見るため…………?
「そう、才能を引き出したりすることもできるんだって」
才能を引き出す……?何を言っているか全く理解ができない。そもそもアビリティとはなんだ?
「ごめん、アビリティって何?」
「無知すぎない?」
「め、面目ない……」
セトはあきれながら説明を始めた。
「アビリティっていうのはその人しか持たないスキルのこと、火や水とかの魔法はだれでも使えるけれどアビリティはその人しか使えないんだ」
誰もが使える魔法ではない、特定の行動や出来事、感情の起伏で覚醒するもの。
そういえば見たことがある気がする。母が昔、特殊なワタのようなを手からだして幼かった俺を楽しませてくれたのを淡い記憶であるが覚えている。
そのとき、俺は何でなにもない手からフワフワが出てくるの?と小さいながら鋭い質問をしたか、母は「私の手は貴方を喜ばせるためにある魔法の手なの」と今では考えられない口調で答えてくれたのだったか。
さっきセトが説明してくれたことに当てはめてみると俺を幸せにさせたい、楽しませたいという強い意志がアビリティを覚醒させる引き金になったということか。
「俺にもあるかな?」
「アビリティは魔力が少しでもあればあとは努力とかすれば覚醒するって言われてるしこの学院に入ってるし大丈夫じゃない?」
「そっか……」
人々が一人ずつアシュトン様のいる部屋に入っていく。しかし出てきたものたちは全員青い顔をしている、いったい何をされたのだろうか。
「…………」
先ほど入ったオスカーが俺らのところへと戻ってきた、顔はとてもではないが元気がないように見える。
「オスカー、どうかした?」
「…………最悪だった」
と一言。詳細を聞こうとしてもこたえてくれないのだ。「お前らも行けばわかるぜ……」
そうとしか言ってくれなく気分が悪いのか自室に戻っていった。
「あっ、次僕のばんだから行ってくるね」
「おう……」
セトの次は俺である、いったい何をされるのか、気になる。
セトが入る前に出てきたのはニルであった、やはり彼も「不快だ」といいたそうな顔をしながら去っていった。
数分もすればセトも帰ってきた。
「………………君もいけばわかるよ……」
「はっ?何があったっていうんだよ」
「アラド君、順番が来ましたよ」
教官にせかされ結局何も情報を得られず俺は部屋に入ることになってしまった。
部屋に入ると辺りは真っ暗で何も見えなかった。
時間が経つにつれて目は暗闇に慣れていく、すると前方に何かが見えた。
肌は赤く毛で覆われていない、顔の骨格は犬獣人でも猫獣人でもない独特な形、背中には翼が生えている。
赤い竜はこちらに気付くと「こっちにこい」と一言。その指示に従い近くによる。
しかしどれだけ近づいても「もっとこい」と言われるばかり、俺と赤い竜の距離がついには拳ひとつ程度になってしまっていた。
「そのまま背を向けろ」
言われるがままに体を動かす、いったい何をされるんだ…………?
「むっ……お前は…………」
「えっ、どうかしましたか?」
俺のことを何かしら知っているらしく、興味深く俺の体を触り始めた。せ、セクハラ行為だっ!?と言って抵抗したかったのだが竜という存在に勝てるはずがないし、もしこれで俺の才能的なものが開花されるんだったらまだ耐えることができるはずだ。
「…………ふむふむ」
「あの、何してるんですか…………」
スンスン、と今度は鼻を鳴らしながら匂いを嗅ぎ始めた。だ、大丈夫かな、臭くないかな。
「何をしているかというとな」
「は、はい」
「ただ触りたいだけだ」
と満足そうな声で答えた。はあ!?とつい声を出してしまった。いやさ、俺のここまでの努力は何だったんだよ?才能を引き出してもらえると思ったから頑張っていたというのに…………。
同時に俺は思った、この竜、ただの変態ではないか?
竜というのは孤高な存在であり威厳がある、とずっと想像していたのだが、今俺の理想は壊されたよ…………。
「い、いや、ちゃんと貴様らの素質もみているぞ、ただ……」
「ただ?」
少し戸惑ったような顔をしている。本当に竜なのか?この竜。
「触れ合いたかっただけだ」
「いやどういうことですか」
「竜っていう存在なだけで恐れられて誰にも話しかけられないこの気持ちを貴様も味わってみろ!とっても悲しいんだぞ!?」
「つ、つまり獣人や人に触れたかったということですか…………」
なんという子供らしい考えだろうか、こんなのが竜だと信じたくないが、理解できないわけじゃない。
すべての竜が孤高を好むわけではないだろう、誰かと共にいたいと思う竜だっているはずだ。
それに俺の竜に対するイメージを誇張していたのかもしれない、自分の考えがいつまでも正しいとは限らないし自分の見てきたもの、教えられてきたものだけが真実とは限らない。だから、こういう竜だっているのだとこちらが受け入れてあげることが大切なのかも。
「も、もちろん素質もみているぞ?」
「さっき聞きましたよ……」
俺は完全にあきれきっていた、そろそろ時間だろうし戻ってしまおうか。
「一応伝えておこう」
戻ろうと思っていたとき、アシュトン様はいきなり、真剣な声で喋り始めた。
「なんですか?」
「貴様をここに入学させたのは我だ」
「えっ?」
理解が追い付かない、今、確かに俺が入学できた理由はこの竜にあると言った。
どういうことだ、俺は空いていた枠に偶然入っただけではないのか。
「あの!それってどういう…………」
「すまんな!もう時間なのだ、聞きたければ我の部屋に来るといい、歓迎するぞ!」
俺は気になるのに、時間で阻まれ仕方なく戻ることになった。
午前の授業はまさかのこれで終わり。しかし午後の授業が少し早めに始まるため長めとなっている、今日も体術の訓練だ、剣技は一番最後であるらしい。
この学院は一年の間は学院のみでの生活になるが二年生以上になると研修が多いらしい。
そのため学院にいる先輩たちはほぼいない。過去には実際に王国に行き研修をしていた学院生徒が極悪人を捕まえ卒業後にそのまま王国の兵士として配属されたらしい。身分もとてもいい位置に置かれたため裕福な生活を送っているのだろう。
自室に戻るとぐったりとしたセトとオスカーがいた、見事に精神にダメージが入ったみたいだ。
「あぁ、お帰り、アラド」
「お前も受けてきたか…………」
弱々しい声でしゃべりかけてきた。
「おう、あれはやばかった……」
「ねっ、まさか触られたり吸われるとは思わなかった…………」
「俺なんか尻まで触られたぜ……」
「もうそれ犯罪者じゃん」
午後の授業が始まるまで俺らはアシュトン様に対する愚痴を吐きまくっていた。でも、俺の頭の中にはあの言葉が一番脳裏に残っていた。
「よし!午後の訓練で気分転換だな!」
「よく訓練でそこまで気分変えられえるね?僕には無理かも」
「オスカーは、運動大好き脳筋野郎だから…………」
休憩時間はすぐに終わり俺らは午後の授業のため外にでていた。運動をするにはとてもよい気候である、寒すぎない冷たい風が肌を触る。
しかし季節はすぐにでも冬になってしまうだろう。
「…………さむっ……」
教官を待っていたとき、後ろから声が聞こえた。
(寒い?ちょうどいいと思うけどな……)
まさかと思い後ろに振り替える。するとそこにいたのは案の定人間だった。
ここにいる人間なんてたった一人しかいない、カイルという人だ。
「うおっ、人間じゃねえか!」
「あれっ、オスカー、なんか知ってるの?」
「あぁ、この前自主練してたときに手伝ってもらったんだ!」
「おい待てオスカー、俺はまだ安静にしておけといったはずだぞ」
「ちゃんと事情は伝えた上で手伝ってもらってんだからセーフだろ!?」
「いいやアウトだ!俺に何の説明もなしに行くなっていったよな?」
しばらく二人は言い合っていた、しかもほとんどはアラドが正論である。
両親みたいな発言に、意外にアラドって過保護なんだなと思ったセトであった。
「おい!静かにしろ!授業はじめるぞ!」
教官の怒鳴り声につい毛が逆立ってしまった。いつのまにか来ていたウォーロック教官は授業中はとても厳しい。普段はあんなに気が抜けてる人なのに。
人を殺すことができる方法を学ぶのだから当たり前のことだろう。
なんやかんやあり授業が始まる、よくよく教官をみてみれば腕に籠手のような防具をつけていた。
「体術が完璧になればこんなことだってできる、よーく見てろよ?」
いきなりそういわれた。教官は目を瞑り、ゆっくりと腕を引く。
「…………なんだ、この毛を逆立ててしまうほどの魔力は」
ともに光景をみていたニルが言う。相当強いはずであるニルでさえ驚きを隠せていないほどの強さだ。
教官から発せられた魔力の影響か辺りは暗くなり、次第に土や石などが魔力に反応し浮き始めた。
放出されていく魔力はまだまだ増えていく、風は強くなり地が揺れる、周りのやつらは魔力量に耐えられなず気分を悪くする者も。
「あ、アラド、オスカー、僕に近づいて」
「な、なにするんだ?」
「いいから!」
何か策があるのか、おとなしく俺とオスカーはセトの近くに寄る。
「よし、行くよ」セトの手に緑色の魔法陣が展開される、展開された瞬間さっきまで感じていた暴風を感じなくなった。
「すげえ!セト、お前防衛魔法使えるのかよ!」
「簡易なものだけどね」
セトの出した立方体のバリアは風や放出された魔力などの外部からくるものを遮断する初級の魔法とはいえ上位な魔法だ。
「はぁぁぁっ!」
咆哮とともに魔力の篭った腕が振りかざされる。
「や、やばっ」
バリアにヒビがはいり始めたことにセトは焦る。
「オスカー!俺らでセトを支えるぞ!」
「お、おう!」
二人でセトを支える、バリア内にただ居座っていたときは何も感じなかったがセトの背中に手を置き支えようとすると押されるような、体がはじかれるような感覚がこっちにも伝わってきた。
「がっはっは!愉快!爽快!だなっ!」
この教官、こっちの気も知らないで気持ちよくなりやがって……。
しばらく前がみえないほどの砂煙が辺りを覆っていた。
「もう大丈夫だよ、ありがとう」
「砂煙がやばいし、もう少し張っておこう」
時間が経つにつれ少しずつ前が見え始めるとそこは荒地か?と思うほど地面はえぐられ、原型はなかった。
「お前らもこれくらい強くなるように鍛えてやるからな!」
快感を得ている教官はさっきの機嫌の悪さはなく満足そうにしている。そんな教官は後ろからくるもう一人の教官に気付かなかった。
「一体、何が愉快で爽快なんですか?」
「久しぶりに力を使ったからな!気持ちがいいに決まって…………」
「あぁ、黙らなくていいですよ?続けてください」
清々しい笑顔とは裏腹に、明らかにガチギレしているミンク教官は尋問を始めた。
「いや、あのな、これは授業の一環としてだな…………」
「教官にとって生徒を気絶させるのも、授業の一環なんですね、よくわかりました」
冷や汗を搔いているウォーロック教官に対しミンク教官はズバッと、ダメージをいれるような発言をする。
「では私も教官を育てる立場として貴方に制裁を加えてもよいということですね?」
「いや、違っ…………」
完全に堪忍袋の緒が切れていたミンク教官はさっきのウォーロック教官と同様膨大な魔力を出し始めた。
「カイル君、ニル王子、どちらでも構いません、ここにいる生徒を守るようにバリアを展開しといてくださいね?」
「ふん、人間などに任せてなどいられん、俺が展開してやろう」
ニルの手に赤色の魔法陣が展開される。すると辺り一帯がバリアの空間で覆われた。
「ゆ、許してくれミンク、俺が悪かったから!」
「それ以外の方は学院に戻りましょうね!私が処理しておきますので」
「無視すんな!?俺はここで制裁確定かよ!?」
「制裁?失礼ですねぇ、教育、といってくれませんかね?」
さっき自分で制裁って言ってたよな…………。
静かな怒りが、放出されている魔力にも表れさっきとは桁違いの、天変地異が起こるのかと思うほど空は暗くなり地は揺れる。
「………………ぐっ!」
ニルが少し苦しんでいる。怒りという感情が乗った魔力自体がバリアに対し攻撃をしているようだ。
「そんな防衛魔法で意地をはるから……変わって!」
「なっ!?魔法を上書きされた!?貴様……いったいどういうつもりだ!」
カイルは無理やりニルの魔法を自分の物に変えたみたいだ、同時に彼の足元に青色の魔法陣が展開される。
ニルのバリアのときよりも強大な魔力を感じなくなった。
「さて、準備は整ったことですし、覚悟してくださいね」
「や、やめろぉ!」
ミンク教官のパンチがウォーロック教官の腹に突き刺さる瞬間、腕は引っ込められた。
「冗談ですよ、本当にやるわけないじゃないですか」
それを聞いたカイルたちは人騒がせな、いや獣騒がせな獣人だ、と言いながらバリアを解除した。
辺りの暗さはなくなり明るい空が返ってきた、とりあえず一安心だ。
「お、おぉ、よかったぜ」
「ですが、説教はしますよ?」
嫌だー!と子供のようなことを言いながらミンク教官にウォーロック教官は引っ張られていった。
「えっ、これ、僕たちが直すの……?」
荒地となっている地面をみながらカイルが言う、教官たちがいなくなってしまったため地面を直すのが生徒のみになってしまったのだが修復魔法など魔法が本当にできるやつでなくてはできない。
カイルがめんどくさいと言って自室に帰ってしまい、結局地面を直すことになったのはニルになった。
今日の授業は強制終了することになった。入学してまだ一週間程度であるはずなのに、いろんなトラブルが起きすぎてないか?
そんなことがあり、厄介な長い自由時間になってしまった。
自室に一人いた俺は何をしようか迷っていた。歩き回る?でもどこに行くか決めてないし。
小説を読む?今そんな気分じゃないし。寝る?時間がもったいない。
勉強?論外だな。思考を巡らせていくうちにも時間はなくなっていく。
「特訓するか」
最終的にこの結論に至った、今日は午後の授業が強制終了されたことにより体術の特訓を今日は全くできなかった。
そして教官の言葉を思い出したのだ、特別訓練してやるぞという言葉を。
はやく周りの奴らに追いつくためにもこういう時に頼みにいくのがいいだろう。そうと決まれば善は急げ、教官のところに今すぐいこう。
「とっとと正直に吐いてくださいよ、私だって忙しいんですよ」
「それはお互い様だろ!?だからもうやめようぜ?」
「遠回しに話を逸らそうとしてません?いけませんねぇ、教師が自分の責任を追わない行動をとろうとするなんて……」
(忘れてたぁ~!教官、今説教中なんだった)
さっきのアクシデントが起こってから三十分程経っているのだが、まだ事情聴取中だとは思はなかった。てっきりミンク教官がグダグダと長い説教話をしていると想像していたのに。
尋問は未だ続きそうである、いつか手か足を出すんじゃないかと思うくらいのミンク教官に対しウォーロック教官はこれでもかと話を逸らせようと試みる。
(仲良しだなぁ、教官たち)
思い返してみれば、ミンク教官は明らかに殴りにかかるほどキレていたはずなのに寸前で冗談だと止めていた。ウォーロック教官だってただの部下と上司の関係ではここまで粘らずすぐに謝るはずだ。
これだけの理由では、ミンク教官は対して何も思ってないかもしれないがウォーロック教官はそこそこいい関係、または友達みたいな関係だと思っているのかもしれない。
さぁどうする、自分。退散するか突っ込むかの二択だ。
結論からいうと、どっちもハイリスクだ。
退散すればそのあとが暇になりさっきっまでやっていた虚無のような時間をもう一回やらなきゃいけなくなる。突っ込めば俺も一緒に叱られてせっかくの自由時間を潰されてしまう、それだけは勘弁だ。
虚無をもう一度体験するか、ワンチャンを狙うか…………どうする……。
ええい!冗談ではない!何をしようかとベッドの上で永遠と考えている時間などそれこそ無駄だし味わいたくない!
どうせなら当たって砕けろ精神でここは突っ込みに行こうじゃないか!
「すみません!教官!特別訓練を頼みに来ました!」
「あっ、アラド今その話をするんじゃ…………」
「アラド君、詳しく――」
「だぁぁぁ!うるさい!俺は決してこいつだけを特別にやっているわけじゃない!他の者たちにも言っているぞ!?」
「へぇ、じゃあなぜ私に隠すのですかね?」
「そ、それは、だな…………」
「確かにアラド君の実技の出来はあまりにも良いものとは言えません、だから貴方の考えを多少は理解できます」
ねえ今遠回しにも俺の心抉ってきたよね?抉ったよね?
「しかしそれを学長である私に言わず勝手に行うのは別問題ですよねぇ?」
「ご、ごもっとも、です……」
「すみませんねアラド君、私は今から教育をしなければなりませんので、特別訓練は明日でお願いします」
笑顔でこちらに振り向いてきたミンク教官は状況さえ知らなければ素晴らしい笑顔だなとしか感じ取れないだろうが、俺には「今から拷問するのでとっとと出て行ってください邪魔です」と言ってるようにしか見えなかった。
それと、ウォーロック教官、ごめんね。地雷ふんじゃった。
突っ込んだ結果はまさかの強制退出、しかも長続きする方向へと進んでしまった。
(勉強は捨てるとして)やることがないので日課になりかけている廊下を歩き回るという行為を現在進行形でやっている。
そういえば朝の授業のときにアシュトン様が言っていたことを思い出した。
あのとき、確かに俺を入学させたのはあの竜が原因だと話していた。今は時間がたんまりとあるし行ってみるとしよう、行かなきゃ拗ねそうだし…………。
アシュトン様の部屋は一番隅の方にある、ドアこそ同じものであったが中に入ってみると貴族?と思うような部屋が広がっていた。
部屋の中であるが花が咲いている、真ん中にある天蓋つきのベットがより高級さを際立たせる。
「アシュトン様?来ましたよ~」
「お、おぉ!来てくれたのか!」
奥の方から飛び出してきたアシュトン様は嬉しさと驚きで嬉しそうに目を輝かせている。
どうすればいいかわからなくなっていて、そわそわとしているアシュトン様が落ち着くまで待つことにした。
「落ち着きました?」
「あぁ、すまん、嬉しくてな」
「別にいいですよ、っで、朝のあの言葉、どういうことなんですか」
「そうだった、朝の通り、我が貴様をここに入学させたのだ」
少しドヤっとした表情をしている。
「経緯を話してほしいんですけど」
「んーと、えーと。ちょっと待て思い出すから」
この人、感情に任せて行動して次の日にあれ?俺昨日なにやったっけってなるタイプの人だ。
「確かその時は夜に空を飛んでおってな、いつもは行かない南の方角に行ってみるかと決めて南のほうの村々をみていたんだ。夜中にみなが寝静まったころに空を飛んで子供の寝顔を見に行くのが楽しくてな!最近の日課なのだ!」
えっ?変態不審者かな?完全な犯罪者予備軍じゃん。
「それでだな、村で寝ていた貴様を偶然みつけたんだ、しかしな、近づきたくても近づけなかったのだ!この我がただの獣人ごときに近づくことができない?納得いかん!と思って強行突破しようと試みたのだがずっと同じ行動が再生されるかのように我の体は同じところをずっと移動していたのだ!」
「それが、ここに入学できた理由にはなってないです」
「いや、よく考えてみろ。体がずっと同じ行動を繰り返し近づくことができない、しかも自分は進んでいると感じているはずなのに実際はずっと同じ場所を往復していたのだ、これが何を意味するかわかるか?」
「………………」
自分には全く身に覚えのないことを話されている。
「つまりだな、お前は自分の体を守るために無意識に空間を歪ませる、または時間を動かす魔法を使用していたのだ、我はそれをすぐにミンクに話し、今があるということだ!」
すみません、仰っていることが全くわからないのですが、と本当は言いたかった。
時間を操る?空間を歪ませる?そんな能力使ったことがないし知らない。
けれど人の素質をみれるアシュトン様が言うのなら本当のことなのかもしれない、じゃないとここに入学できた辻褄が合わないから。
とりあえず後でアシュトン様は治安官の兵士たちに連れてってもらうとして。
「その、空間に関与して発動する魔法ってすごいんですか?」
「何百年生きてきた我でも事例がない、貴様が初めてなのだ」
生きてる年月百以上なのかよ。長生きだな、竜って。
機会があったらミンク教官にも聞いてみようか、あっちの方が詳しいだろうし。
「俺、そろそろ戻ります、今日はありがとうございました」
「むっ、もういってしまうのか」
「もうそろ自室に戻らないといけないんで」
「そうか、残念だ」
「な、なんか機会があったらお風呂とかに誘ってあげますよ」
ついさっきまでひどくションボリしていたはずなのに、その言葉を耳にした瞬間目を見開き輝かせて「本当か!?」と舞い踊るんじゃないかと思うくらいに喜んでいた。
そういえば、オスカーがトレーニング室で軽い筋トレをしてくると言っていたか。
まだ自由時間は多少残っていることだし、見に行くとしようあわよくば自分も筋トレをさせてもらうとしよう。
この時間帯のトレーニング室は人が全くいない、いるといってもオスカーくらいだ。なんでそんなにここを使わないのかはわからないが、一つの考えとしては午後の授業が想像以上に体に負担がかかるからだろう。
「ゆっくり、息はいて」
「ま、待ってくれ……も、もう無理だっての……」
室内にはオスカーとカイルがいた、声だけ聴いたら完全にアウトなシーンだよな……。
しかし実際に行っているのはカイルがオスカーの足を掴みゆっくりと直立に上へ曲げていく、少しでも膝を曲げようとすると力で無理やり真っ直ぐに戻らされる。
柔軟ストレッチだ、使っているのは下半身側だけなので怪我の方もあまり考えなくてよいだろう。
ていうかいつからこいつらは接点があったんだよ……。
「よっ、オスカー、頑張ってんな」
「あ、アラドか?た、助けてくれ」
「他事考えていれる余裕があるんだ?」
カイルはさらに体の方へと足を曲げさせる、痛ぇ!と叫んでいるオスカーを無視して行っている姿はまさに鬼畜。
「なぁ、柔軟ってそんなに大事なのか?」
「戦闘の上で体を自由自在に動かせたら、強いよね」
「だからって初日からこんな厳しくすんなよ~……」
戦う上で柔軟性というのはいろんな意味で大切だ、どんな状況でも柔軟に対応し行動できる思考力と身軽な体、それがあればほとんどの戦闘で勝つことができるだろう。
「お、俺もやりたいから、オスカーを休ませて、俺の方を手伝ってくれないか?」
さすがに苦しみ続けているオスカーのことを可哀そうだと思いそう提案した、自分も動いておきたいし。
「君も?いいよ」
いきなりだと拒否ってくるタイプかなぁと勝手に想像していたがあっさり承諾してくれた。
「お、お願いします……」
「じゃぁ、座って足開いて」
最初は座った状態で足はまっすぐに股を開く、すでにこの状態でも痛いと感じる。
「もっと開いて」
「い、痛いんだけど!?」
もっと開け、と俺の足をさらに無理やり外側へと動かす。抵抗しようとしても凄まじい力で動かすことなど到底できない。
「左手を右足につけて、相当硬いから最初は十五秒ね」
「ぐぅ、これ以上無理……」
「息をはいて、手が足につかないとカウントしない」
鬼畜すぎんだろ、授業でもここまで厳しくされないぞ。
無理やり引っ張られたりすることはない、ただ足に手がつくまで「ゆっくり息をはきながら」などのアドバイスしかしてくれない。あくまでも自分でつけられるようになるまで何もしないつもりなのだろう。
「はい、次、逆」
「ぐぬぬぬぬ…………」
足から離れてもカウントリセットされないのが唯一の救いだった。
最終的に前に上半身を倒すやつもやったのだがつかなさすぎてカイルが手でおもいっきり押したことにより足がゴキッ!っていう嫌な音がして痛みがはしった。
「痛い……、下半身だけ尋常じゃない……」
図書館でずっと本を読んでいた、夕方の食事の時間に二人がボロボロになっているのに気付いた。
「な、なにしてたの」
「鬼畜ストレッチ……」
アラドが言う。彼は腰に手をやっていた。背中をおもいきり押されたせいで腰も痛めたみたいだ。
ストレッチって……下半身だけ痛めたって、まさかそういう…………。
な、なに考えてんだ自分は!あるわけないだろ、ただのストレッチだっての。
「セト?どうかしたか?」
食事に手をつけず妄想をかましていたせいか心配されてしまったみたいだ。
「あ、ううん、なんでもない」
オスカーとアラドは最近二人で行動することが多い、やることの大半は自分が苦手とする筋トレなどの体を動かすことだから僕はついていくことがないのだが。
入学した日のころは三人で行動することが多かったのに、と心にモヤモヤが現れるようになった。
元々一人が好きな性格であるからあまり気にしていないが、なんか言葉に表しきれない感情が心にある。
今も僕をいないものとして扱うかのように二人で仲良く話している。
こうなったのはオスカーが怪我をしてからだったか、その日以来あの二人は距離が近くなった気がする、まさかデキたの?んなわけないか。
あの心配の言葉以降は喋ることはなかった、こうやって一人になるとき小説を読むんだ。
「必ず戻ってくる」
ライナーはそういって戦場に向かってしまった、本当に人騒がせな人だ。
戦争の日々が続く中、ユキは非難を繰り返しながらライナーの帰りを待った。今どこにいるのか、大きな怪我を負っていないだろうか、ご飯は食べれているのか。四六時中、彼のことを考えるようになってしまった、出会った当初はあんなに嫌っていたはずの自分が。
両親に嫌だった結婚を強制されライナーと私は出会った、初期の私は彼に強く当たってしまった。
あんたなんて嫌いよ!結婚なんて絶対しないわ!と、それに対しライナーは。
「決めるのはお前だが俺はお前の両親に頼まれているからな、いきなり帰るのも無礼というものだ、それにそんなことばかり言って親に迷惑をかけているということに気づけ」こっちの家族のことに関わらないでよ!とその時は言ってしまったが後に彼の礼儀さに気づかされた。
彼には戦士としての心しかなかった。早朝から鍛錬をし夜まで剣を降り続ける、他にやることがないのかと聞くと。
「俺は戦士として生まれてきた、戦場で勝つために鍛錬を怠ってはならんのだ」
彼は人との関わり方がわからなかった、だからどう相手を貶しても頭にハテナを浮かべながら正せるよう努力すると言って次の日から極端に性格や行動が変わる。彼の過去を知る度に自分と似た境遇を持っていて段々と興味を持つようになってしまったのだと思う。
最初こそ強がっていつか結婚するために、を理由にして料理をするようになった。
「……どう」
「塩が強いな、それと焦げているから苦い」
「そんなハッキリいわなくていいじゃん!」
今思えば相当めんどくさい女だったな。
「むっ……じゃあどう伝えればよいのだ」
「もっと言葉を包んで遠回しに!」
それを言った次の日。
「……昨日と変わらん味だな」
「それオブラートに包めてないわよ!」
「だ、ダメなのか!?」
「俺はもっと甘い方が好きだ、とかそういうのを求めてるの!」
「し、しかしそれではみなが食べてうまいと思うものがつくれない――」
「う、うるさい!とにかくそういうアドバイスにして!」
料理をするのがライナーのためにという理由に変わっていたし不思議と悪い気はしなかった。両親も困った顔より笑顔が増えていて親孝行ができていた。
けれど彼は戦士、戦争に駆り出される身であり死ぬ可能性はとても高い。私はそれなのに好きになってしまっていた。
「早く帰ってきなさいよ……」
一人寂しくなってしまった部屋に私はライナーの帰りを待つ。もう四季が一周しようとしている。
風のうわさであるが戦争は激化しているのだとか。
「今戻った……」
戸がひかれる音がした、帰ってきた!私は急いで玄関の方へとむかう。
「ようやく帰ってきた」
「遅くなった……すまない」
お詫びだ、そういって唇に柔らかいものが触れる、まだあまり慣れない感覚に戸惑った。
疲れたからとご飯も食べず風呂に入って寝ることにした。
朝起きれば隣にライナーがいる、言葉にならない嬉しさがこみあげてくる、朝ご飯を準備しよう、そう思ってベットから起き上がろうとしていたとき。
彼の布団が少し歪に隆起している箇所があった。位置的にみると、ちょうど彼の体の真ん中あたり。これってまさか……。
布団をめくり彼の美しい肉体を見る。そこには予想通り彼の物が大きくなっていた。
(あんたって興奮するのね)
普段の性格や振る舞いからは見えないためこのようになっているものを見るのは初めてだ。
案の定、彼の物は大きい、仮に結婚したらこれを入れられるのか、入らないだろうな。
(す、少しだけ)
どうしてもどんなものか気になり、ゆっくりと彼のズボンを下げる。
(大きくて、太い……)
戦士として恥じぬ大きさを持つそれは見事に勃っていた。顔を近づけると臭い、これが雄臭いというものか。
(相当溜まってたってこと?よしっ)
やってはいけないことだとわかっている、わかっているが彼の味を感じてみたいという誘惑に駆られて私はライナーの物をゆっくりと触る。
触っているとすぐに汁が出てきてヌチャっとした感覚になる。寝ているため気持ち良いのかわからないが、体は正直というし。
(口に咥えるのは抵抗が出るわね)
舌を使い少しずつ舐める。ちょっとしょっぱい。自分は相当やばいことをしている、自覚はあったさ、けれど彼と一つになってみたい、そんな感情が私の理性を壊していく。
(うわっ!)
時間がたいして掛かっていない、それなのに彼の一物から白いドロッとしたものが出てくる。量が尋常じゃない、処理が大変になりそうだ。
「何をしているんだ……」
「はっ!?起きていたの?」
ぐっすりと眠っていたため起きるとは思っていなかった。
「そんなことをされては目が覚めてしまうな……」
「ご、ごめんなさい、起こすつもりはなくて……」
「あぁ、いい、お前なら」
「えっ……?」
「久しぶりにお前に会えて体が反応してしまったのだ、俺が悪い」
「……まさか、今まで襲いたいって思ってたりします?」
「何回かあったがお前から来るまではやめていた、しかし、こうなるとは思わなかった」
「そう……じゃあ、続き、しませんか」
「なっ!?お前、俺らはまだ結婚していないぞ」
「関係ありません、私は貴方と共にいることを決めたので、それにこっちの物はまだ足りなさそうにしてますよ?」
「……いいのか、俺で」
「気にしないです」
「抑えられんかもしれん、その時は殴ってくれ」
そういって彼はゆっくりと服を脱がし始める………………。
「は、はわっ…………」
とっさに僕は本を閉じた。まさか学院の図書館にこんな恥ずかしい本があるなんて……。
最初こそいい話だと思ってみていた、けど途中からおかしいと感じていたんだよ。
おそらくこの後の話は二人がエッチをするシーン、こんなの見れるわけないじゃないか。
「おいセト?もう消灯時間になるぞ?風呂入ったか?」
「えっ!?あっ、うん今から入ろうかな」
「俺たちは先に寝てるからな~」
僕は急いで風呂場に向かった。
僕は脱衣所にいた。もう入るには遅い時間であり誰もいないであろう。
「おや、ずいぶんと遅い時間に入るのですね」
「えっ!?ミンク教官……」
フラグ回収速くない?
「もうすぐ消灯時間ですよ、気をつけてくださいね」
「は、はい、すみません」
「ウォーロック教官と違って正直で助かりますねぇ」
教官も大変なんだなぁ…………。
そのまま教官と風呂に入ることになった、特に話すことはないから少し気まずい。
先に口を開いたのは教官だった。
「どうですか?学院生活は」
「満足してますよ、図書館もありますし」
「それはよかったです、友達とはどうですか、アラド君たちとよくいますけど」
僕はでかけた言葉が喉で詰まった、友達、ではあるだろうけれど。最近はどうだろう、あきらかに関りが薄くなった気がする。
「どうやら、訳あり、って感じですね」
沈黙を長引かせすぎたか、顔にでていたか。悩んでいたのがばれてしまったみたいだ。
「えっと……」
うまく言葉にはできないが事情を話した、二人での行動が増えたこと、それで一人の時間が増えたこと。
「ふふっ、学生らしい悩みですね」
「…………」
「それは単なる嫉妬でしょう」
「えっ、嫉妬……?」
「だってそうでしょう?自分と関りを持たないで他人とばかり接している姿をみてモヤモヤしているんだったらそれは妬みという感情に他なりませんよ」
「……そう、ですね」
「っで、どうしたいんですか」
「二人の輪にもっと入りたい、かもです」
「ひとつ、アドバイスしておくと、時に欲望に忠実になるのも大切でしょう、じゃあ、私はもう行くので、セト君もはやく寝てくださいね」
「あっ、はい……」
風呂から上がり自室に戻る。自室に入ると真っ暗であり二人はもう寝ていた。
明日も早い、僕も寝てしまおう。
僕が風呂に入っている間も二人で喋ってたりしたのかな。
朝の日が射しこんでくる気づいた、時間帯はまだ五時ほど。早起きをして今日も小説を読もうか。
体を起き上がらせ顔を洗いに行く、さて部屋をでようか。と思っていた時ふとアラドを見た。
ベットの上の掛け布団はまともに体に掛かっていなく散乱されている状態、そしてなにより僕が目にいったのは。
(昨日の小説と同じ展開……)
アラドのイチモツは美しいほどに勃起をしていた。入学してからというものの処理する時間がなかったというのか、それとも体質か。
気持ちよさそうに寝ているアラド、いい夢でも見ているのかな。
「時に欲望に忠実なるのも大切です」その言葉を思い出した、絶対に今ではないのに僕の目は勃起したイチモツに釘付けになってしまっていた。
(アラドが悪いんだ……オスカーとばっか喋るから)
僕は本能に従順になる選択肢を選んだ。アラドのズボンをゆっくりとおろしイチモツの姿があらわになる。僕は悪くない、そう自分に言い聞かせ少しずつ勃起物を触り始める。
(アラド、気持ちいのかな……)
小説の方では舐めるまでであったが、咥えてみようと思う。
(おっきい……)
口で咥えるのが少し困難なほどの大きさをもつアラドのイチモツを頑張って口に運ぶ。
舌に当たった瞬間しょっぱさと少し苦味のような感覚がくる、いきなりはびっくりしたが、意外にも癖になる味をしている。
ピクンと動いている、ちゃんと感じてくれているみたいだ。
「んんっ……」
(……!?起きてないよね?)
警戒しつつ行動を再開する、彼の尿道からネバっとした液体がたくさん出てくる。
(んぐっ!?)
いきなり、彼の勃起物から液体が溢れでてきた、熱い、そしてほろ苦い。飲みきれず口から外に白い液体がゆっくりと出てくる。
(これが、アラドの……)
「セト……何してんだよ……?」
「あ、アラド!?いつから起きて……」
「いつからって、お前が行為を始めてからだけど……」
「へっ!?最初から知ってたってこと!?」
「とりあえずよ、感覚が気持ちわるいから風呂に入らねえか?」
「あ、あの、ごめん……」
「いや気にしてねえよ」
やったあとに僕は後悔した、いや、やる前からわかっていた絶対に後悔するって。
二人で軽く体を洗う、朝から使えるのかと思ったが湯船以外は問題なく使うことができた。
「なぁ、なんであんなことしたんだよ」
「だって……ズルいんだもん、二人だけで盛り上がって僕をいないもの扱いしているように見えて。」
「悪かったよ、てっきり一人の方が好きなのかなって……そんな嫉妬すんなよ」
今僕は自覚した、アラドに嫉妬していたんだって、それを自覚できず言葉に表せず行動で示してしまったんだと思う。
「確かに、最近はオスカーが怪我をしたからとそっちばかり見ていたかもな」
「ううん、僕もごめんここまでするつもりなかったんだ」
「詫びってわけじゃないけど、なんかしてほしいこととかあるか?」
僕はまた悪いことを考えてしまった。
「じゃあ、自分への罰ってわけじゃないけど、その、僕の物触ってほしい……」
「セトって、結構スケベだったりする?」
まあいいぜ、お返しだ。そうアラドは言って後ろから僕の下半身へ手を伸ばす、指が触れた瞬間自分で触ったときとは違う変な感覚にあう。
ゆっくりと手は上下に動かし始め鬼頭部分に手が触れる度にピリッとした気持ちいいような、そんな感じだ。
「気持ちい?」
「う、うんっ」
嫌な感覚はなかった、むしろ嬉しい。僕は、なんで喜んでいるのかわからない。
これが好き、という感情なのだろうか?
「あぁ!?そ、それやばっ」
人差し指で鬼頭部分を優しく撫でられる、敏感になってきたせいか気持ちよさがこみあげてくる。
「イキそうなら、ちゃんというんだよ」
「で、出そう、出ちゃう……」
快感と同時に白い液体が自分の物からあふれ出す。
「たくさんでたね、溜まってたりした?」
「そ、そうか、も?」
「なんだそれ、まぁいいやもう上がろうぜ、ユキ」
「あっ、うん…………えっ!?」
「見事に小説通りのことをやっていたなぁ?」
「な、なんで知ってるの……」
「お前が風呂に入ってる間にひとりで読んでたんだ、まぁまさか同じことがおきるとは思わなかったけどな!」
「あっ、いや、そのっ」
「まさかあの小説を思い出してあんなことしたのか?」
「……うん……」
「スケベな奴めっ、はやく戻るぞ」
アラドはニヤニヤとしながらこちらをみて手を差し出してくる、僕は何も言い返せなかったが彼の顔をみると許せてしまった。
誰にでも平等に接するし優しい。それぞれの人の心を理解しようとして気をつかってくれる姿に、僕は惚れてしまったのかもしれない。
僕は彼の手をとって自室に戻ることにした。