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「ちくしょう!! 何だよ!!」
「何もしないんじゃなかったのか!?」
荒い呼吸を整えている若者たちを、私とメル、
アルテリーゼは見下ろしながら、
「反撃しないと言っただけですよ」
「無抵抗でいるなんて言った覚え無いもんねー」
「それとも、少しは反撃アリの方が
良かったかの?」
人間の方の童顔の妻と、ドラゴンの方の堀の深い
顔立ちの妻が煽るように話す。
「師匠相手じゃこんなモンだろうよ」
「さすがはシーガル様が師と仰ぐ方……」
長身でブロンドの短髪の貴族青年と、
ブラウンの長いウェービーヘアーを持つ
夫婦が感想を口にし、
「ほとんどの魔法を無力化してましたね」
「王族が認めるほどの腕前の持ち主ですもの」
同じく貴族夫婦の―――
シルバーの短髪の少年と、年上妻のブラウンの
ショートカットの女性が続く。
「こんなの詐欺じゃねぇかよ!」
「抵抗するんだったら最初から言えよ!!」
若い学生たちはなおも腹の虫が収まらないのか、
不満を口々にぶつけてくるが、
「シン殿に手合わせしてもらったのか」
「今期の学生たちは、なかなかイキのいいのが
揃っているみたいだねぇ」
そこに、大柄な体格をした細目のアラサーの男、
さらに黄色に近い金色をした長髪の女性が姿を
現した。
「えぇっ!?
ロ、ロッソ・アルヘン……
帝国武力省将軍!?」
「い、一緒にいるのは魔戦団総司令―――
メリッサ・ロンバート様!?」
さすがに軍事上のツートップとも言える二人の
顔は、学生たちも知っているようで、
「まーまー、そう緊張するなって♪
ヤルじゃないかお前たち♪」
軽い感じでロンバート様は軍学校の若者たちに
近寄り、
「……そうだな。
模擬戦とはいえ、自分と魔戦団総司令、
その2人と互角以上に戦える御仁にケンカを
売るとは。
君たちの将来が楽しみだ」
将軍の言葉を聞いた彼らは、直立不動となり
敬礼の姿勢で体を固まらせる。
「まあまあ、お2人とも。
もう彼らとは今回の件、水に流す事で納得して
頂きましたので」
「そーかぁー?
なーんかまだ、不満タラタラなヤツが
いたっぽいんだけどなぁ?」
私の言葉に対し、魔戦団総司令の女性は
からかうように連中の顔を見回すが、
全員がブンブンと首と片手を左右に振って、
否定の意を伝える。
「もうあまりイジめないであげて」
「旦那様がもう気にしておらぬでな。
我らもこれ以上どうこうするつもりは無い」
メルとアルテリーゼが執り成すと、
「今後はしかと気を付けよう」
「あともし機会があれば、コイツらとの
手合わせをまた頼むわー」
アルヘン様とロンバート様がそう返し、
何とか今回の騒動は収める事が出来た。
「んー、来る時は結構交易品やお土産を
持って来ていたんですけど。
帰りも帰りで、またスゴいですね」
ランドルフ帝国・帝都グランドールの
大使館にて、私は帰国する際の目録などに
目を通していた。
「同盟ともなりゃ、こっちからだけじゃなく……
帝国からもらえるものもたくさんあるからな。
特に渡航能力に関しちゃウチの方はかなり
差を付けられているし」
白髪の混じったグレーの短髪に細身の、
ライオネル様が私の言葉に答える。
「そういやアストル・ムラトがいただろ。
アイツ、かなり荒れたらしいぜ」
ふと知っている名前が出て来たので、
私は書類から顔を上げると、
「確か元新生『アノーミア』連邦にいた―――
『境外の民』の残した記録や資料を持って、
亡命した人ですよね。
でもどうして荒れているんですか?」
「そりゃお前、自分が独占しようとしていた
技術を、お偉いさんにバラされちまった
からだよ。
ほれ、大ライラック国の使者に技術流出
しちまったって話があっただろ?」
あー、あれか、と思い出し、
「でも元々、あの人が考えついたものじゃ
無かったものですし」
「だからこそだろうよ。
『境外の民』の考えを理解出来るのは、
自分だけだという自惚れというか自負も
あっただろう。
まあこっちに取ってもあまり歓迎出来る
事態じゃなかったが」
実際、アストルをこの国で重用するか、もし
他国へ行かせるなら殺してくれとも言って
あるしなあ。
思わぬ形で技術流出してしまったのは確かだが、
あのアイデアやコンセプトを理解出来る人間は
そうそういない。
当人まで流出しなかっただけでも良しとしよう。
「そういや、今日か明日にはモンステラ聖皇国に
行っていた、白翼族と天人族が帰って来る。
そいつらと合流したら、帰国するぞ」
「帝国に残るのは、『神前戦闘』の指導を務める
獣人族たちだけですか。
確か半分ほどが残り、さらにその半分は
帝都で、もう半分は鬼人族の里に向かう
との事で」
帝国自治区の獣人族から、十人ほどの
若い候補生を引っ張ってきたので、
まずは帝都で彼らを、
そして鬼人族の里でも候補生を訓練させて、
後、双方が戦う一大イベントを企画している
最中だ。
「まあ何にせよ、これで一段落つきましたかね」
私がため息まじりにそう話すと、ライさんは
首を横に振って、
「むしろここからが問題だろうよ」
と否定的に返した来たので、私は首を傾げる。
すると彼は続けて、
「あのなあ、向こうでもそうだったろ?
こっちでも帝国は一度使節を送って来たが、
結局は大船団を寄越して来やがった。
本国の連中がどう見るか……」
あー、と納得して思わずうなずく。
「確かに、あっちでも私に刺客を送り込む国が
出て来ましたし―――
ランドルフ帝国も一応は友好の使者を
寄越したものの……
その後に大船団での来襲でしたからねえ」
「実際に見た連中は、こちらと戦争なんて
とんでも無いと理解しただろうが、
見ていない連中がそれをどう解釈するかが
問題なんだよなあ。
極端に脅威と見られても困るが、かと言って
コケ脅しと取られてもまずいし」
そういえば、ティエラ王女様に聞いたのだが……
最初にウィンベル王国を視察した彼女たちの
報告は、
変身や幻影魔法を使われたと疑われ、疑問視
されたと言っていた。
それを考えると、各国ともそういう状態に
ならないという保証も無いか。
「まあ各国を前にあの合同軍事演習を行ったん
だから、頭から否定はされないだろうが。
あとはどれだけ信じてもらえるか、だな」
そこで彼はいったん一息つき、
「取り敢えず、帰国するまでに刺客を
送り込まれる恐れもある。
ま、しばらくは大使館で大人しくしている
方が無難だ」
「そうですね。
どの道あと2・3日で帰国するわけですから。
何か用があれば、向こうから出向いてもらう
形にしましょう」
こうして私たちは帰国へ向け―――
数日の間、大使館に引きこもる事となった。
「あ~……
やっぱり公都が一番落ち着きます」
「ご苦労だったな。
ライの野郎からも聞いているぜ」
一週間後、特に何事もなく―――
私たちは公都『ヤマト』へ帰還していた。
あれから二日後に、白翼族・天人族が
モンステラ聖皇国から戻り、
合同軍事演習のためにランドルフ帝国へ来ていた
メンバーは、そこでいったん全員合流。
『神前戦闘』やその他の諸事情で残るメンバーを
のぞいて、帰国する運びとなり……
また大使館に引きこもっていた間に、
ギルド本部のベッセルさんや、
『月下の剣』パーティーとも連絡を取って
別れの挨拶を済ませ、
最後に王宮に出向いてマームード陛下に
謁見した後―――
出航したのだった。
「ホントお疲れ様ッス」
「あ、あと途中で持って来てくれたワサビ、
あれもう公都内で流行っていますよ。
醤油と合わせると肉にも生魚にも合うと
評判で」
ギルド支部長のジャンさんに報告した後、
レイド君・ミリアさんから何気なくワサビの
評価を聞く。
「海鮮丼と合わせると、すごく美味しく
なるよねー」
「冷やしソバにも合うしのう」
「ピュイッ」
家族もすっかりあの味に慣れたのか、
口々に感想を語る。
「これでしばらくは何も無いッスかね」
褐色肌の青年が伸びをしながら天井を
見上げると、
「まあ見せるものは見せましたし、
あとは向こうの出方待ちですね」
「こればかりはどうしようも無いですね。
まともな判断をしてくれる国ばかりだと
いいんですけど」
丸眼鏡にショートヘアのタヌキ顔の女性が、
夫の後に続く。
「それはそうと、こちらでは何もありません
でしたか?」
するとアラフィフの筋肉質のギルド長が、
「騒動、という意味では何も無かったな。
平和なモンよ。
あー、ただ……
王都の王家直属の研究機関か?
あそこからちょくちょく、シンはいないかって
連絡が来ていた」
あそこかあ。
以前、巨大化してしまった超ジャイアント・
ボーアを倒した以来だな。
(■210話
はじめての きょだいか(ちくさん)参照)
「いったいどんな用件で?」
「そこまでは聞いてねぇな。
いるかいないか聞いてきただけだし。
ま、何かありゃまた向こうから言って
くるんじゃねぇか?」
それもそうか、とその場では納得し―――
私たちはひとまず、帝国での報告を終えた。
「おお! シン殿!
お待ちしておりました!」
王都の中にある施設で、研究者のような白衣を
まとった複数の人間が出迎えてくる。
「お久しぶりです、リオレイ所長」
「シン殿こそ、お忙しい中呼び出して
申し訳ない」
目の前にいる痩せた白髪の老人……
この人こそ王家直属の研究機関の最高責任者だ。
公都『ヤマト』に戻った翌日、さっそく
王都から問い合わせがあり、
特に予定の無かった私はアルテリーゼに
飛んでもらって―――
家族一同で王都フォルロワまで来たのだった。
「まあ、王都は帰国時にも寄っているしね」
「昨日の今日だったからのう。
それに飛べばすぐだし」
ラッチはいつも通り冒険者ギルド本部に預かって
もらい、
私と妻二人で研究機関内を案内してもらう。
「それでご用件とは……」
「見て頂いた方が早いと思いましてな。
ぜひご覧ください」
そう言いながら老人はかくしゃくと歩いていき、
私たちはその後に従った。
「これは―――」
「何コレ? 橋?」
「上に何か乗っているようだが」
とある施設内まで来た時、その巨大な建物の
ような物体が姿を現す。
自分の世界で言えば高架橋だろうか。
そして上に載っているのは……
「シン殿の言っていた交通機関です。
進行用のタイヤと側壁用のタイヤを
組み合わせ、動力は人力。
その試乗をして頂きたくお呼びしました」
その車体は造りこそ木製だが―――
五メートルほどの橋の上を走行するように
作られた、いわばモノレール。
ゴムタイヤ走行をするとなれば、ゆりかもめが
近いだろうか。
確かに知識としては教えていたが。
「この橋は様々な石や素材の組み合わせと、
ラミア族に土魔法をかけてもらう事で
出来上がりました。
石材がたくさん調達出来たとの話が
ありましてな。
それで実験が進んだのですよ。
それでこのような、非常に固くまた
軽い橋が出来上がったのです!」
自慢げにリオレイさんが胸を張る。
階段を上り、その車体に乗り込むと、前方には
運転手兼動力であろう獣人族がいて、
「自転車でしたか?
あれと同じ要領で進むように出来ております。
取り敢えずぐるりと円を描き、距離にして
300メートルほどですが……
まずは乗り心地をお試しください」
そして車体は走り出し―――
束の間の鉄道体験を楽しんだ。
(正確にはゴムタイヤなので違うが)
「どうでしたか、シン殿!!
いや、最初は橋に水を張ってスクリューでの
水上運航も考えたのですよ!
輸送力は船が一番ありますからな!
ですが、そうなると水魔法で満たさねば
ならず……
魚の巨大化の可能性もありましたし、
何より落ちた時の安全性を考えますと
どうしても」
その後、所長室に迎えられた私たちは、
マシンガンのようなトークをリオレイ所長から
浴びせられ、
とにかく落ち着くよう促した後、一息ついてから
改めて話をする事になった。
「も、申し訳ございません。
こうまで一気に実験と試作が進むとは
思ってもおりませんでしたので」
「いえ、ですが素晴らしい成果です。
あれならば石材とゴムさえあれば造る事が
可能ですし、インフラの発達が格段に
進みます」
実際、鉄道構想は自分にもあったのだが、
資源管理の観点から、それが木材や石炭を
燃料とする、いわゆる蒸気機関であっては
ならず、
またそれまでの交通機関に従事する人々、
馬車などの雇用を奪ってしまう恐れが
あったため、
どうすればいいのか踏み切れなかったのだ。
ただこれなら、獣人族の雇用先が確保される上、
地上とかち合う事は無いし、
長距離移動ならこのモノレールを、
地上の短距離であれば小回りの利く馬車を、
という事で住み分けは可能だと思う。
「そーいえばあれ速かったねー」
「どのくらいの速度で走れるのだ?」
メルとアルテリーゼも興味津々で聞くと、
「直線、500メートルほどの試作橋も
ありましたので、そこで計測したのですが、
王都からドーン伯爵のお屋敷経由で、
多分2日もあれば公都『ヤマト』に
到着出来るくらいかと……」
え、そりゃスゴい。
確かレイド君も身体強化による速度アップで、
ドーン伯爵邸経由で王都まで二日かかるって
言ってたような。
という事は―――
レイド君と同じ速度で走れるという事か。
まあ単純に比較は出来ないけれど。
唯一の懸念はラミア族依存が高まってしまう
事だけど、そこは末永く友好を保ってもらうよう
努力してもらおう。
「すごいですね。
現状だと、馬車で5日はかかると聞いて
いますが。
それを半分以下に短縮出来るのですから」
「そうです!!
しかもシン殿の言う車両を何台も繋げる
形にすれば、輸送する量も桁違いになります!
わしは今!! まさに!!
歴史の分岐点に立っている気分ですぞぉ!!」
興奮してガッツポーズのような姿勢を取る
老人を、何とか夫婦でなだめ、
「ですが、安全性だけは気をつけてください。
一度に大量に人や物を運べるという事は、
事故が起きた場合、それだけ被害も大きく
なるわけで」
「そ、そうですな。
それで今、どこに路線を通すか計画を
立てているのですが」
そこまで話すと、所長室にノックの音が響き、
「おう、シンが来ていると聞いてな。
ちょうど良かった。
相談に乗ってくれねえか?」
「相談?」
そこに現れたのはライさんで……
私が聞き返すと、
「もうアレは見ただろう?
そんで、そいつを通す道を考えているんだが、
ちょうど王都に来ている事だし、お前さんの
意見を聞きたくてよ」
そして所長と彼を交え、そのまま話し合いに
移行する事となった。
「発展させたい場所に通す?」
「はい。こちらの世界でもそうでしょうが―――
いわゆる主要道路の近くは、基本的に発展
します。
なぜなら人通りが多い、または通りやすい
場所というのは、その通る人を目当てに
商売がやりやすいからです」
リオレイさんも私が異世界人という事は
知っており、その事を前提にライさんを
交えて話す。
「例えば停車駅をドーン伯爵邸前とかにします。
すると伯爵相手に商売したい人が来ます。
何日かそこに泊まるかも知れません。
さらにその商売したい人を相手に商売する……
という需要が生まれます」
「そいつも同じ貴族階級だとしたら、使用人や
従者もくっついて来るだろうしな。
となるとそいつら相手の商売も出来るわけか」
フムフム、とうなずきながらライさんは語る。
「一直線で結ぶのではないのですか」
所長の老人が意外そうにたずねてくる。
「速度を考えたらそれが一番なのですが、
よほど発展している都市同士でないと、
経済的効果が薄いです。
多分あと2・30年もすれば必要性は
出て来ると思いますが、今はそれほど
効率重視でなくても大丈夫かと」
実際、今は人が住んでいる拠点以外は
自然がやりたい放題している印象であり、
また未開拓地域もあちこちにある。
それなら、少しでも人が住んでいる土地を
なるべく優先させ―――
そこを停車駅にして路線を作っていく方が
無難だろう。
「ふむー。
だけどシンも知っての通りこの世界、
人里から離れた途端、ほぼ何も無いよ?」
「以前、例の魔力通信機のためのアラクネの
糸設置を手伝った事があるであろう?
あの時も本当に道なき道を通ったからな。
それを考えると、村や町程度に路線を通した
ところで、あまり意味は無いと思えるが」
その時の苦労を思い出したのか、二人の
表情が無になる。
「まあそこは今後の発展に期待かな。
私の世界だと、停車駅があるか無いかで
発展の度合いが全然違うからね」
「と言うと?」
ライさんが食いついて来たので、私は
姿勢を正し、
「人は便利で住みやすいところに集まる、
という事です。
現に公都『ヤマト』のスラムが問題に
なっていますけど……
あそこにいる人たちはああまでして、
『ヤマト』にいる事を選択しています」
「まあそうだな」
ライオネル様が相槌を打つと、私は続けて、
「なので少しでも人が絡んでいるところに
通した方が―――
今後の事を考えるといいでしょう。
確か今、公都の再開発も進んでいる
みたいですし、
あとあそこだけ発展しても、また一極集中を
招くと言うか……」
「あー……」
「確かにそれはな……」
私の言葉に、妻二人は遠い目をする。
「ではライオネル様」
「おう、ここから先はこちらの仕事だな。
通した方がいい町や村のルート選定、
あと未開拓地の開発もあるか」
そして彼らは地図を広げての議論に入り、
邪魔しては悪いので、一礼すると私たちは
所長室を後にしようとしたところ、
「あ、悪いシン。
ちょうどお前さんに頼みたい事があったんだ」
「??」
ライさんの話に私が首を傾げると、
「まあ、今の話に無関係ってワケじゃない。
ただなあ」
そこで私たちはまた席に座り―――
依頼を聞く事にした。
「……あれがウィンベル王国最大の
未開拓地域か」
翌日―――
私とメルはアルテリーゼの『乗客箱』に乗り、
王都から少し離れた上空を飛行していた。
「まさしく未知の森林地帯って感じ」
『魔力通信機の糸は、あそこをかすめる
ようにして設置したのう』
メルとアルテリーゼも眼下の光景に
感想を漏らす。
ライさんからの依頼とは、とある未開拓地域の
安全確保。
今までは『危険な場所は避ければいい』という
方針でやって来たが、
これから開発が進むにつれ―――
そうも言ってられなくなる可能性を考え、
またこの機会に、一番大きな未開拓地域を
何とかしようという事になり……
私に正式に依頼する事になったのである。
「しかし安全確保と言ってもどうしたものかな」
「あの一帯、魔力・魔法無効化でもする?」
サラッとメルがとんでも無い事を言ったような。
「いや、魔力は植物とか小動物にも必要だろ?」
『メルっち、生態系を変えかねんぞ……
まあ確かにそれが手っ取り早そうだが』
私とアルテリーゼが呆れながら話す。
しかし、改めて聞くと私の能力って
結構エグいな……
「まあ、大型の魔物でも出たら排除する―――
くらいでいいと思う。
アルテリーゼはしばらく上空で旋回、
メルは何か見つけたら教えてくれ」
『りょー』
「りょー」
妻二人が同時に答え、私たちは森林地帯を
調査する事にした。
「……む?
アルちゃん、ちょい待って。
何か動いたのが見えた、3時の方向!」
『わかったぞ、メルっち。
お、何か大きいのがおるな』
未開拓地域で飛行を続けて十五分ほど
経過した頃、
メルの一言で状況が動いた。
私も彼女の視線を合わせてその先を見ると、
何か巨大なものが二本足で立ち上がっているのが
視界に入ってくる。
「大アリクイだけど……
とんでもなくデカいなー」
『あれじゃ、この一帯で外敵などほとんど
おらぬだろう。
ここの主、と言ったところかの』
立ち上がった高さは十メートルにも達する
だろうか。
以前仕留めた事のあるマウンテン・ベアーに、
勝るとも劣らない巨大さだ。
(■49話
はじめての まうんてん・べあー参照)
そしてその大きな舌で絡めるように食べて
いるのは、通常サイズの鹿か。
「確かにアレは脅威だな。
アルテリーゼ、あの魔物の近くまで
低空飛行してくれ。
接近時に無効化する。
魔物の近くを通り過ぎるだけでいい」
『わかったぞ、シン』
一撃離脱戦法だ。
私は巨大アリクイに最も接近するタイミング
見計らい、
「現在、地上に見える四足歩行する獣で、
その巨体の手足のサイズ比で……
自分の体重を支える事が出来るなど、
・・・・・
あり得ない」
そう『乗客箱』内からつぶやき、その巨体の横を
素早く通り過ぎた後、
後方から地響きが聞こえ、依頼は達成された。
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