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付き合い始めて一週間。
二人はまだ、誰にも言っていなかった。
理由は単純だ。
相馬が、死ぬほど嫌がったから。
「絶対言うなよ」
「はいはい」
そう言いながら、鷹宮は全然信用ならない笑い方をする。
昼休み。
相馬はいつも通り、廊下の端でパンをかじっていた。
「一年」
「呼ぶなっつってんだろ」
反射で言い返す。
でも――。
鷹宮はいつもの距離で立ち止まらず、
当たり前みたいに隣に座った。
「は?」
「ここ、空いてるだろ」
近い。
近すぎる。
相馬は周囲を見回す。
クラスメイト数人の視線が、明らかにこっちを見ていた。
(やば……)
「どっか行け」
「なんで」
「目立つだろ!」
小声で言うと、鷹宮は一瞬きょとんとしてから、にやっと笑う。
「今さら?」
問題はその直後だった。
鷹宮が何気なく、相馬の頭に手を伸ばす。
ぽん、と一回。
「ちゃんと食えよ」
――静止。
空気が、止まった。
「え」
「今の見た?」
「頭撫でたよな?」
「え、仲良くね?」
相馬は固まった。
(終わった)
一気に顔が熱くなる。
パンを持つ手が震える。
「ち、違……!」
言いかけたところで、鷹宮があっさり言う。
「付き合ってるけど?」
「は!?」
「マジで!?」
「いつから!?」
一斉に声が飛ぶ。
相馬は立ち上がり、鷹宮の胸ぐらを掴んだ。
「てめっ……!!」
「言うなって言っただろ!!」
鷹宮は驚くどころか、申し訳なさそうに目を伏せる。
「あー……ごめん」
「でもさ」
耳元で、低く囁く。
「隠すの、もう無理だった」
その一言で、何も言えなくなった。
人気のない階段。
「……最低」
「それさっきも言われた」
相馬は壁に背中を預け、深く息を吐く。
「見られんの、嫌なんだよ」
「俺が……弱そうに見られるの」
鷹宮は、少し黙ってから言った。
「弱くねーよ」
「俺が好きになった時点で」
視線が合う。
「隠すのが嫌なだけ」
「好きなやつ、堂々と好きでいてー」
相馬は唇を噛んで、目を逸らす。
「……ずるい」
翌日。
「おはよー!彼氏!」
「先輩彼氏とか強くね?」
「意外すぎ!」
相馬は机に突っ伏した。
「……死にたい」
「生きろ」
鷹宮は平然と、相馬の椅子を引いて隣に座る。
「今日も一緒帰る?」
「……人前ではやめろ」
そう言いながら、
拒まないのがもう答えだった。
帰り道。
「なあ」
「なんだよ」
「バレたの、後悔してる?」
相馬は少し黙ってから、ぶっきらぼうに言う。
「……してねー」
「ただ」
「調子乗んなよ」
鷹宮は笑って、
でも手は、しっかり繋いだ。