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#ワンナイトラブ
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「ちょっと外で休憩してくる」
真帆は私を連れてロビーの隅へと移動した。ベンチに座るなり、私は真帆の肩に顔を埋めて、溜め込んでいた涙を一気に溢れさせた。
「ちょっと、どうしたの。撮影会は大成功だったんでしょ?」
「……真帆……。私、陽一さんともう、駄目かもしれない……」
私はさっきの出来事をぶちまけた。
嫉妬に狂った陽一さんに強引に連れ去られる――そんな私の「妄想」とは真逆の、自分を「モブ」だと卑下し、住む世界が違うと背を向けた、彼のあまりにも悲しい拒絶。
「……分不相応だって言われたの。大勢の人に囲まれてる私を見て、自分みたいなモブは隣にいちゃいけないって……。陽一さんは、私がどんなに勇気を出しても、少しも気持ちに気づいてくれない! 私ばっかり陽一さんのことが好きすぎて……もう、苦しくて死にそう……!」
真帆は深く溜息をつき、私の背中をポンポンと叩いた。
「あーもう、あんたたち、本当にじれったいわね。いい、ひより。それはね、陽一さんがあんたに猛烈に嫉妬してるってことよ」
「あんたがあまりにも綺麗で、他の男たちに囲まれているのが耐えられなかっただけ。自分の心の制御(コントロール)が効かなくなったのよ。それを上手く伝えられなくて、自分を卑下して逃げ道を作ったの。……あんたたちは間違いなく両想いよ。よかったじゃない」
「……え……?」
私は呆然と顔を上げる。真帆はニヤリと不敵に笑い、先程の原稿の画面を私に突きつける。
「いい、ひより。もし私ならこうするわ。まずは、彼の手をわざと自分の胸に押しつけさせて――『私、ここがこんなに苦しいんです。誰のせいでこうなったか、わかりますか?』って耳元で甘く囁いて、彼の理性を焼き切るのよ。で、激しいキスのあと、さっきの原稿みたいに壁に押し付けてもらって、自分から足を彼に絡ませて――」
「ちょっ、ちょっと真帆!こんなとこで何言ってるの!」
私は顔を真っ赤にして叫んだが、真帆の「軍師」としての進言は止まらない。
「恥ずかしくてもやりなさい。あのおっさん……じゃなかった陽一さんの最近の『育ち方』を見れば、この『持ち上げ体位』だって余裕でこなせるはずよ」
「太い前腕でがっしりと支えられて、壁に押し付けられる。あんたは重力から解放されて、彼の腕の中に閉じ込められるの。嫉妬を独占欲に変えて、一気に既成事実まで持ち込みなさい。……あんただって、本当はそれを望んでるんでしょ?」
「……もーっ、やめてよ、変態!」
私は両手で顔を覆った。しかし、指の間から覗く頬は、隠しようもなく熱を帯びていた。
(……待って。陽一さんのあの腕で、抱き上げられて、壁に押し付けられて……。嫉妬で獣みたいになった陽一さんに、あんなことやこんなことを……)
想像しただけで、下腹部のあたりがキュンと熱くなるのを感じる。
(……やばい。それは……それでありすぎるかもしれない……!)
「あんた、今『それもあり』って顔したでしょ?」
「してない! してないから!」
赤面してジタバタする私を見て、真帆は満足げに笑った。