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【能力者名】 妖怪沢どろり
【能力名】 メルト
《タイプ:擬態型》
【能力】 手の平で触れた人間を
どろどろに溶かす能力
【以下、細菌達の記録】
我楽は、自らの敗北を確信した。既に右目は
潰れ、片方の翼は折れ、落下のダメージと
半田緋色の猛攻によって、まともに動ける
状態ではなかった。
しかし我楽の心はまだ折れていなかった。
この場から生き延びるため。
そして何より たった一人の親友である燐墓 のため、死にものぐるいで我楽は生きようとした。
「ハ …..ハハハ!!!!なんだぁ!!?うまく擬態してたがお前のその目…..!!!!お前も俺達と同じ人殺しの目じゃねえかァ!!!!!一体何人殺してきたんだぁ!!? 言えよどろりぃぃぃ!!!!!!!」
我楽はみっともなくわめき散らした。
少しでもどろりの気を反らし時間を稼ぐためである。
しかしどろりは純然たる狩人。
狩人は 獲物の言葉に決して耳を傾けたり
しない。
少しずつ、どろりが我楽に近づいていく。
「ッ……!!!《カーニバルハッピー》!!!!」
力を振り絞り、我楽はどろりの喉笛を
噛み千切ろうとした。
どろりは足を前に踏み込み、我楽の頭に頭突きをし、それを 防いだ。
「…..ッ!!!《ODDS&ENDS 》!!!!!!!」
頭突きをされながら我楽は叫んだ。
ハッタリである。
我楽の能力は右手で相手に触れないと使えないのだから。
そして、そんなハッタリにまるで動じず どろりは我楽の腹の辺りにタッチして言った。
「……《メルト》。」
我楽の身体がどろどろと急速に溶けていった。我楽は最期に
「ッごめんなぁ……っ。りん…..ぼ……。」
という言葉を残してこの世から完全に溶けて
消えてしまった。
どろりは額を手の甲で拭った。どろりの能力の本質は現実改編。
どろりの能力で溶かされた人間は過去も現在も未来も全て抹消され、 この世から最初からなかったことにされる。
亡くなった人間のことを覚えていられるのは
能力者であるどろり本人だけである。
しかし、我楽がどろりに与えた最後の痛みは
どろりが我楽を消した後も決して無くなりは
しなかった。
(……感傷に浸るのはよくない。早く僕達を
異空間に閉じ込めた能力者を《メルト》で消さなくては。)
どろりは罪悪感を一度 頭の隅に追いやり、
どろり達を閉じ込めた能力者である燐墓を探し始めた。
どろりはなぜか海街の服を着ている表裏一体を見つけた。
万が一にでもパンダ達に見つからないように小声で話し出した。
「どろりー☆よかったー生きてたんだねー。
ボクと心蔵で僕達をこんなとこに閉じ込めた
単独犯を捕まえて懲らしめといたからあとは
どろりの《メルト》でパパッとやっちゃってよ!!ボク早く帰ってパパの夕ごはん食べたーい。」
そしてどこからか海街の声がした。
「《深海シティーアンダーグラウンド》。」
そうしてどろりと表裏一体は海街の
《深海シティーアンダーグラウンド》の中へと引きずり込まれた。
《お洒落な山小屋のような空間》
たった一人の親友我楽が《メルト》によって
この世から抹消され、親友との記憶が完全に失くなってしまった独りぼっちの殺人鬼、
燐墓は抵抗する様子もなくペタリと 床に力無く座っていた。
「あは、みつかっちゃった。」
虚ろな目で空っぽな殺人鬼、燐墓は力無く
笑った。
彼女には既に生きる理由がなかった。
いや、我楽の消えた世界の燐墓には最初から生きる理由 なんてなかったのだ。
どろりは燐墓の肩に軽く触れて言った。
「…….《メルト》。」
燐墓はどろどろと溶け、しまいには雪のように消えてしまった。
能力者が消えてしまったことでどろり達を閉じ込めていた《独りんぼ エンヴィー》も消え、どろり達はもといた 帰り道に戻っていった。
「いやー☆まさか草野球中に翼が生えたクマが乱入してくるなんてねー。ボクびっくりだよー。」
泥だらけの表裏一体はそう言って笑った。
現在改編が起こった後の世界がどうなるのかはどろり本人にも分からない。
(今回はそう言う風に改編されたんだな。)
と泥まみれでボロボロのどろりは思った。
「シリアーッス!!!!ボランティア部の皆!!!!
巻き込んですまなかった!!!!私は骨折した
川中島と全身筋肉痛で眠っているパンダを
家に送り届けてくるッ!!!!さらばだッ!!とうっ!!!」
そう言って肩と腕に大怪我を負ったシリアスブレイカーは元気よくパンダと川中島を 抱えて走り去っていった。
「それじゃあ俺、家この近くだから。」
今回の戦いで殆ど無傷だった海街はそういって去っていった。
「あれー?ボクなんで海街の服着てるんだっけ?ま、今度洗って返せばいいや。またねーどろりー☆」
そう言って泥まみれの表裏一体は元気よく
帰っていった。
「…..はぁ、帰って数学の課題やらなくちゃなぁ…….。」
そう思いながら殺人鬼どろりは帰り道の公園の 水道で罪悪感を洗い流し、ハンカチで拭き、アルコールスプレーで消毒をして、日常へと溶け込んでいった。