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フィル様が、少し悲しそうな声で続ける。
「ずっとラズールの主でいられなくてごめんね。ラズールの主のまま命を終えると思ってたけど…そうならなくてごめん。僕を守ってくれていたのに、突き放すようにしてごめん。僕こそラズールをイヴァルに縛りつけてる…ごめ」
「謝らないでください」
止めなければ、フィル様はずっと謝り続ける。俺はフィル様をお支えする存在だ。そのためにある。守ることも命令に従うことも当然なのに。それなのにフィル様はいつも俺のことを|気遣《きづか》い時には謝る。そういうフィル様だから大切で愛しく思う。だがもっと|我儘《わがまま》を言ってもらいたい。厳しく命令してほしい。
俺は、いつものように手触りの良い銀髪に触れた。
「フィル様は、誰のことも何も気になさらずに、自由に生きていいのですよ。それに…フィル様がそんなに気に病むなら、俺も自由に生きます。今、決めました」
「え?」
ああ、知っていたけど、驚いた顔も可愛らしいと思わず目を細めた。
俺はイヴァルが好きだ。フィル様と出会った国だから。幼い頃に王城に放り込まれた俺は、親よりもフィル様がいたからこそ、この国のために働いていたのだ。フィル様がいなくなってからは、フィル様の帰る場所を守るためだけに尽くしてきた。だがもう、フィル様のいるべき場所は、リアム様がいるバイロン国なのだ。それならば、俺がこの王城にいる意味はない。そういう俺の気持ちに、フィル様はすぐに気づいたようだ。
少し困ったように笑って「そっか」と|頷《うなず》く。
「ラズールが王城を離れるのは残念だけど…うん、これからは自由に生きて」
「え?どういうことだ?」とトラビスが大きな声を出した。
いつものことながら声が大きい。フィル様だけを見ていたいのに邪魔をするなとトラビスを振り返る。
「フィル様からお許しが出た。俺は次期宰相の職を返上する」
「はあ?勝手なことを言うな。イヴァルにはおまえが必要だ」
「俺の分もおまえが働けばよい。そこにいる王の為ならば頑張れるだろう?」
「ぐっ…まあ…できるが…」
「ふん、おまえの気持ちは周りに筒抜けだぞ。王を大切に想うなら、全力で支えて守り通せ」
「なっ…!」
トラビスが顔を真っ赤にして慌ててネロを見た。
ネロは、素早くトラビスから目をそらせていたが、銀髪からのぞく耳が赤く染まっていた。