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「費用対効果は?」
殺風景な会議室にバリトンの声が響き渡った。
「木村くん、えーっと、効果の部分のスライドを」
林田部長の指示通りスクリーンに映し出された資料を早送りすると、木村はCEOの西園寺にこのプロジェクトがもたらす利益について熱く語りはじめた。
「もういい」
説明の途中で西園寺は軽く手を上げ、説明を止める。
スッと秘書に差し出されたタブレットに目を通すと、西園寺は長い足を組みながら不敵に笑った。
「木村雄吾、おまえは来月から福岡支店に転勤。明日から出社しなくていい」
来月と言っても、あと2週間もない。
荷造りをしてさっさと引っ越せと西園寺は冷たく木村に告げた。
「……え、左遷……?」
福岡支店は一番業績が悪い支店。
木村は真っ青な顔で立ち尽くす。
「気にいらないなら、いつでも退職してかまわない」
静まり返った部屋に西園寺の靴音が響き渡る。
一度も振り返ることなく、西園寺は秘書と会議室を去った――。
◇
「18人目?」
「今月だけでね」
「父親のあとを継いでCEOになったからって横暴すぎだろ」
隣のグループだった木村の福岡転勤の話はすぐ部内に広がった。
「どうしよう、私、今から会議だよ」
私もどこかに飛ばされるかもと沙紀は同期の芽郁に泣きつく。
そんなことないよ、大丈夫だよと言われない状況が辛すぎる。
沙紀は行きたくないなと溜息をついた。
資料を手に持ち、愛用のペンと電卓を握りしめて会議室へ。
飛び出そうな心臓を落ち着かせる余裕もないまま会議は始まった。
林田部長が概要を説明し、次はプロジェクトリーダーがスライドを使用しながら説明していく。
沙紀は議事録を取りながら、早く会議が終わることを祈った。
「もう少しターゲットを具体的に」
「20代から40代の女性です」
「主婦と会社員でも同じなのか?」
「そ、それは……」
部長! 困った顔でチラッとこちらを見ないでください!
俺がCEOにガツンと言ってやる! と言っていたじゃないですか!
しっかりプロジェクトリーダーをフォローしてくださいよ。
下っ端の沙紀が勝手に発言するわけにもいかず、オロオロする部長とプロジェクトリーダーを見ていることしかできない。
「……近藤沙紀、おまえはどう思う?」
西園寺は長い足を組みながら椅子の背もたれに身体を預けた。
「は、はいっ」
急に名前を呼ばれた沙紀は心臓が飛び出たと思いながら慌てて立ち上がる。
「会社員でも、小さい子供を子育て中の主婦も、そして子育てが終わった女性でも、一人でゆったり過ごす『ごほうび時間』は必要だと思います。職業や年齢に囚われず、幅広い層に人気が出る商品になると思っています」
で、回答になったのだろうか?
答えたあと、急に沙紀に不安が押し寄せた。
「……そうか」
秘書にタブレットを要求し、数回スクロールした西園寺は手を口元にあてながら「……変わっていないな」と呟く。
「続きを」
「は、はい。西園寺CEO」
再びプロジェクトリーダーが説明をし、いくつか質問はあったけれど会議は無事に終わった。
……はずだったのに。
「……どうして」
沙紀は部長から手渡された辞令に、顔面蒼白になった。