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亜優を授かったとき、幸せの絶頂だと思っていたけれど、亜優が生まれてから夫はそれまで以上、私にべったりと張り付くようになった。
親や友人に不審がられることはないように振る舞っている夫だったが、家では直美、直美、直美……そして毎晩私を抱く……何度も、何度も…
セックス依存かとも考えた。
でも生理の間は我慢してくれるし、どこに買い物に行ったか、誰と会ったかを気にするから、束縛系であり、手を繋ぐなどを見ても恋人気分でいたい人なのだろうと思う。
「直美さん、愛されているねぇ」
と、マスターはよく言うけれど、そのたびに、そんな言葉にとどまらない夫の言動が私の首を絞めるような気がした。
だからといって、接客のない黙々とお弁当を作る職場にしようかと思っても、夫は知らない人に私が囲まれる職場は心配だと拒否する。
夫のよく知ったマスターに家庭内の愚痴を言うわけにもいかず、淡々と皿洗いをし、グラスを磨き、サンドイッチの具材を仕込み、ケーキを盛り付けるアルバイト。
サンドイッチ……亜優の運動会のお弁当にも作ろうかな。
5月の後半にある小学校の運動会には、秋山さん夫妻と一緒に行くことになっている。
保護者と子どもが、一緒にお弁当を食べることも教えてもらった。
「お水のおかわりと、追加注文いいかな?」
何度か見たことのあるお客様から声が掛かり
「あ、はい…」
運動会の思考から現実に戻った私が手を止めた瞬間
「お待ちください……はい、これお願い」
マスターが、下げてきたプレートを私に渡してから
「お待たせいたしました。お伺いします」
とお客様の前に立つ。
……はぁ……
流れる水と一緒にため息も流れるのは仕方ないでしょ。
カウンター内からの接客はすることがあるけど、それでもマスターの手が空いていれば、マスターが私の代わりに接客する。