コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
カオリの瞳は冷たく、どこか悲しみを宿していて、ジョージは思わず吸い込まれるように見つめてしまった。
理性が曇り、血の気が急速に引いていくような不気味な感覚が、背筋を冷たく駆け抜ける。
ジョージは本能的に危機を感じ、その圧迫感をなんとか振り払おうとした。
「わ、わかった!わかったから…こっちに来るな!」
ワトリーは後ろからカオリを優しく抱きしめ、静かに言った。
「カオリ、もうやめてほしいのだ。君は“蛇女”なんかじゃない。
カオリなのだ、僕たちの仲間なのだ」
カオリの肩が少し震え、ワトリーの声が優しく続いた。
カオリの脳裏に、あの日の記憶が蘇っていた。サーカス団の暗がりの中、
仮面の下に潜む彼女を、怖がることなく笑顔で迎えてくれたワトリー。あの小さな探偵は、
恐れを知らず彼女の傍に寄り添い、絵本を広げて一緒に物語の世界を旅し、
ひとつひとつの言葉を教えてくれた。そして、最後には「君は友達だよ」と、カオリの手を優しく握ってくれた。
カオリにとって、その言葉は何よりも特別なものだった。
彼女を「怪物」ではなく「友」として見てくれるワトリーに、何かしないではいられなかったのだ。
ワトリー「あのサーカス団はもうないのだ、カオリが傷つく必要はないのだ」
ワトリーの言葉にカオリは静かにうなずき、仮面をゆっくりとつけ直した。
顔を上げた彼女は、冷たく鋭い視線をジョージに向ける。
ポテトはその光景を見て「さあ、全部話してもらおうか」といった
店内の客は一斉に帰らされ、ジョージとその仲間、そしてワトリー達だけが残された。
店の奥では、数人の店員たちがちらちらとこちらを見ながら掃除を始めていた。
薄暗い店内で流れる音楽は、緊張感を増幅させるかのように不気味に響いていた。
「ジョージ、他にシオンを狙ってる猫がいるなら教えてほしいのだ」と、ワトリーはジョージに迫った。
「・・・シオンに子供がいるのを知ってるか?」と、ジョージは警戒心を隠すように小声で言った。
「知ってるのだ」とワトリーは頷く。
「実は、子供を誘拐してくれって頼んできたやつがいるんだよ」と、ジョージは目を逸らしながら続けた。
「誘拐だって!!いったい誰が?」ワトリーの声には驚愕が混じった。
「・・・リックの兄貴だ」と言った瞬間、ジョージは思わず周囲を見回した。
緊張した空気の中、他の仲間たちも一瞬静まり返った。
「兄貴?リックの調書にはそんなこと書いてなかったけど」とポテトが不安げに尋ねる。
「さぁ、それが本当かどうかはわからないが
その兄貴は、リックが死んだあの日、
シオンがリックの部屋からドラッグを盗んでいるところを見ているんだ」と、
ジョージは深い溜息をついた。
「じゃあ、そのドラッグを探してシオンを狙った?」ワトリーが尋ねると、ジョージは頷いた。
「シオンがリックを殺したとも
言っていた。かなり恨んでいるんじゃないか」
「それに、何度か接触したらしいが、シオンが知らないと言い切って、
そのうち子供の存在に気づいて脅していたらしい」とジョージは言葉を続けた。
「人気のアイドルがドラッグや子供を持っていたとなれば、
世間からどんなバッシングを受けるか…」ポテトが考え込む。
「その猫の名前は?」ワトリーが冷静に聞いた。
「ジャックだ」とジョージは答えた。
ポテト「それはこの猫ですか?」ルーカスのが映っている防犯カメラの映像を見せた
ジョージ―は首を振り
「それは分からない。リックの兄貴だといって、電話で指示を出してきたんだ。
協力したら大金が手に入るって言われて、手付金も振り込まれた」とジョージは力を込めて説明した。
「ジョージはシオンの子供を連れさろうとしたのだ?」ワトリーが続けると、ジョージは首を振った。
「おれたちが施設に行ったころには、もういなかった。」
ワトリー「エイミーが連れて逃げたのだ…子どもを守るために。」
「おれたちが知ってるのはそれだけだ」と、ジョージは言った。
ワトリーは厳しい表情でジョージを見つめた。「ジョージ、ジャックとは連絡が取れるのか?」
ジョージは少し緊張しながら頷いた。「ああ、子供を誘拐したら連絡するように言われている。」
ワトリーはさらに真剣な声で続けた。「ジャックに連絡をとって、子供を誘拐したと言ってほしいのだ。」
ポテトが不安げに口を挟む。「え、子供はエイミーが保護してるんじゃないの?」
ワトリーは頷き、冷静に説明した。「おびき出すのだ。きっと、ドラックのありかを
子供が知っていると思っているのだ。金庫の暗証番号やロッカーのカギを渡している可能性があるのだ」
ポテトは思いついたように目を見開いた。
「そうか、シオンのバッグがあさられていたり、空き巣が入ったのは、何かを探していたからなんだ!」
ジョージは決意を固める。「わかった、やってみよう。」
彼は緊張感を漂わせながら電話をかけた。「・・・はい。」
ジャックが電話に出た瞬間、ジョージの心臓は高鳴った。
「ああ、俺だ。言われた通り、シオンの子供を誘拐したぞ。」
ジャックの声は冷たかった。「そうか、少しの間預かっていてくれ」
ジョージは不安を抱えながら続けた。「ああ、わかった。でも、ガキを誘拐していったい何がしたいんだ?」
「そのうちわかる。」ジャックの口調は一切の感情を感じさせなかった。
ジョージは一瞬、恐怖を覚えた。「金の約束を忘れるなよ。」
ジャックは淡々と答えた。「もちろんだ。」
電話が切れそうなその瞬間、ジャックが突然、低い声で言った。
「ちょっと待て、シオンの子供はオスかメスか?」
ジョージは驚き、言葉を失った。「えっと」
ジャックは冷静に「そこにいるんだろ?」と尋ねてきた。
ジョージは一瞬、焦りを感じ、ポテトを見つめた。
ポテトは焦ったように「ワトリーど、どうしよう」
ワトリーは冷静さを保ちながら小声で「オスなのだ。」
ジョージはその言葉に背筋が凍る思いで答えた。「オスだ。」
ジャックは静かに「わかった」と言って電話を切った
ジョージは冷や汗を拭いながら、ポテトとワトリーを見た。
「……バレてないよな?」
ポテトは不安そうに応じた。
「たぶん……でも、確信はないね。」
ワトリーは顎に手を当て、静かに考えを巡らせた。
「大丈夫なのだ。これでジャックが動くはずなのだ」
「ありがとうなのだ、ジョージ」とワトリーは深く感謝した。
「ああ、おれが言うのもなんだけどさ、ワトリー、根性あるな。
探偵なのに直球すぎるだろ」とジョージが苦笑いを浮かべる。
「へへ、もうああするしかなかったのだ」とワトリーも笑みを浮かべた。
「がんばれよ」と、ジョージは励ました。
「うん」と一言だけ返して、ワトリーは静かに店を後にした。その後ろを、
ポテトとカオリも黙って追いかける。
三匹が外に出ると、朝の光が街をまぶしく照らし始めていた。
ポテトは不思議そうに「ワトリー、どうしてシオンの子供がオスだってわかったの?」
ワトリー「シオンの楽屋にクラシックのミニカーが置いてあったのは、
子供がミニカーが好きで渡しているからだと思ったのだ。ミニカーは子供たちに人気があるから、
特にオスの子供が好きな傾向があるのだ。ボクも子供の頃、ミニカーが大好きだったのだ」
ポテト「なるほどボクは今も好きだけどね」
そうしてジャックの電話番号を入手した
三匹は新たな覚悟を胸に、朝日の差し込む街へと歩みを進めた。