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領邦軍が総崩れを起こした瞬間、好機と見た暁は総攻撃を開始した。敵味方の距離が近すぎるため砲兵隊の出番こそなかったが、その分歩兵団による銃剣突撃が効果を発揮した。

「生存者は無用です!彼らはこれまで身分を盾に好き勝手してきました!そんな連中に慈悲は無用!負傷者にも容赦する必要はありません!」

シャーリィの言葉を真っ先に実行したのはエーリカであった。彼女は走りながら、地面に倒れ伏している領邦軍の負傷者に狙いを定めた。

「痛てぇえっ!誰か……がぁあっ!?」

撃たれて倒れ、痛みにもがく敵の背中に剣を突き立てたのだ。真っ先に命令を実行することで後続の後押しをするためである。

その効果は直ぐに現れた。エーリカの行動をみて、他の兵達も負傷者相手に無慈悲に銃剣を突き立てた。

「邪魔だ!退かんか!」

馬に股がり逃げ惑う味方を蹴散らしながら進もうとする領邦軍の将校に向かって、背後からアスカが飛び掛かる。

「なっ!?げっ!?」

短剣二本を首の前に交差させて、そのまま勢い良く引いた。将校の首が切り裂かれ血飛沫が挙がるもアスカは気にせずに飛び降りて、次の獲物を探して駆け抜ける。

逃げ惑う領邦軍を暁が背後から攻撃する凄惨な追撃戦は激しさを増していた。

「構えーっ!」

暁の罠を察知して後方に待機していた領邦軍五十がマスケット銃を構えて迫り来る暁に反撃を試みるが。

「無粋な真似をしないように。追われる立場らしく逃げ惑いなさい」

「お嬢様に銃を向けるなど、不敬にも程がありますな」

そんな彼らの反撃の可能性は、集団に混ざらず側面に回り込んでいたシスターカテリナとセレスティンによって潰される。

「敵だ!左側……ぐげっ!?」

将校にはセレスティンの投擲したナイフが眉間に突き刺さり。

「隊長!?うわぁああっ!?」

指揮官を失い戸惑う歩兵達をカテリナがAKー47による掃射で容赦なく薙ぎ払う。

明らかにオーパーツである自動小銃による掃射は十数人を纏めて撃ち倒すが、彼らもバカではない。生き残りの三十数人が一斉にマスケット銃をカテリナとセレスティンへ向けるが。

「敵は我々だけではありませんぞ」

「満足な訓練すら受けていないみたいですね。シャーリィの敵ではない」

彼らが二人に向きを変えたその時、突撃する暁歩兵団が辿り着いた。

「掛かれーっ!!!」

無防備な側面をさらした彼らに暁歩兵団は容赦なく襲い掛かる。双方はライフルによる格闘戦に持ち込まれた。こうなると数が物を言う。

「シスター!セレスティン!」

「無事ですよ、シャーリィ」

「お嬢様、お怪我はございませんか?」

二人のもとへ駆け寄るシャーリィ。

「おらぁあっ!!うぉっ!?」

ルイスは途中からマーガレットの手土産であるウィンチェスターM1897ショットガンを使用するが、その反動に驚いた。

彼に撃たれた兵士は至近距離であったこともあり、上半身が無惨な状態となり、ルイスも顔をしかめた。

「とんでもない銃だな、これ!」

「やぁああっ!」

その側ではサーベルを振るう将校相手にエーリカが体当たりする勢いで急接近し、胸に剣を突き刺した。

「ごぼぉっ!?」

吐血と引き抜いた時の血飛沫を浴びて、エーリカはいつものように真っ赤に染まるが気にせず次の獲物を探す。

更に逃げ惑う領邦軍の背後に回り込んだリナ達が牙を剥く。

「攻撃開始!出来るだけ敵を始末するわよ!続けーっ!」

「舐めた報いを受けさせてやるわ!」

馬上から矢を射掛け、先程と違い正確無比な攻撃は次々と兵士達を射抜いていく。

「なんだ!?さっきのエルフ!?なぜこんなに正確な矢を!?先程は策略だったのか!?」

「止めろ!我々はガズウット男爵家の……がっ!?」

退路を断つように回り込み縦横無尽に駆け回るエルフ達の攻撃は、領邦軍を更に混乱させる要因となった。

しかし。

「やはり殲滅は難しいですか」

「敵の数は此方より上です。皆殺しにするのは難しいでしょう」

バラバラの方向へ逃げる敵を殲滅することは難しく、幾人か取り逃がす形となった。特に馬に乗った将校の逃げ足は速く、複数人を取り逃がしてしまう。

「お嬢様、これ以上の追撃は困難です。残敵の掃討戦に移行しますが、宜しいでしょうか?」

カテリナと語らうシャーリィの下へマクベスが近寄り、判断を仰ぐ。

「分かりました。追撃戦は此処までとして、敵生存者の殲滅を開始してください。捕虜は必要ありません」

「ただちに、お嬢様。掃討戦を行う!間違っても生存者を残すな!奴等は身分を盾に好き勝手やってきた連中だ!情けは無用!」

マクベスは号令を掛けながら掃討戦に移行した。

この戦いで暁は、死傷者を出すことなく大勝利を収めることとなった。

「これで貴族に楯突いた組織となりました。悪名が上がりましたね、シャーリィ」

「その悪名が今後に良い影響を与えるなら良いのですが」

「他の連中がどんな反応をするか、私にも分かりません。ですが、貴女は前代未聞のことをやった。貴族に虐げられている連中からみれば、希望となるでしょうね」

「希望ですか、妙な気分です。マリアがみたらなんと言うか」

「『聖女』様の反応が気になりますか?」

「気になりますよ。だって、私達は根本的に分かり合えないのですから」

「何れは『聖光教会』ともぶつかりますね。貴女は真実を知り、更に『勇者』の力を受け継いでしまったのですから」

「やはり私は邪魔になりますか?」

「なるでしょう。それに、例の件に教会が関与している可能性があります」

カテリナの言葉にシャーリィは眉を潜める。

「シスター、そのお話は」

「確度が高い、とだけ言わせて貰いましょうか。どうやら教会上層部はアーキハクト伯爵を危険視していた節があるようで」

「ならば、尚更マリアとの衝突は避けられないかもしれませんね。まあ、今はそれよりも」

「後始末は任せなさい。貴女は直ぐに地下室へ」

「ありがとうございます、シスター!」

喜び勇んで駆けていくシャーリィの後ろ姿を見て、カテリナは深々と溜め息を漏らす。

同じ頃、一番街で弱者救済の活動を続けるマリア率いる一団は『カイザーバンク』の支援を受けながら炊き出しや負傷者の手当てに邁進していた。

彼らを利用することで『カイザーバンク』は一番街の支配を確固たるものとした。その見返りとして一番街では安全に活動できるようになった。だが、シェルドハーフェンの、裏社会の人間達に善意を求めることは根本的に間違っていた。

所謂貧困ビジネス宜しく多数の他の組織の息が掛かった者達が支援物資を横領し、或いは弱者から物資を奪い取ることで弱者救済は為されず、更に治療院の存在は抗争の劇化を招いていた。

マリアもそんな現実に薄々気付いているが、それでも弱者を救うための活動を止めず、日に日に疲れていった。

そんな時、彼女の下へ来訪者な現れる。

「聖女様にお伝えしなければならない事がございます」

差別することなく受け入れたマリアの前に現れたのは黒尽くめの男。

影の支配者『闇鴉』の構成員であった。

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