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同日 深夜23時 東京区西新宿 蕎麦屋
『当たり屋鈴』
朝から一日中降り続いた雨はあがり、5月にしては肌寒い風が吹き抜けていった。
流れる雲と、路上に停まる黒バイのボディーを照らす月明かりが、アスファルトの水溜りに浮かんでは消えていく。
店内から聞こえてくるラジオの声は、東京都の気象情報を伝えていた。
「東京区一帯に出されていた特別警報は解除されました。引き続き増水した河川には近寄らないでください。非常に危険です。またですね、この時期は大気の状態が非常に不安定です。というのも、この時期は強い日差しと上空の寒気の影響で、地表と上空の温度差が40度近く差が出てしまいます。それでは明日の天気をお伝えします」
磯海は、店内の清掃を手伝っていた、
ゆり野に一目惚れしたあの日を境に、磯海はこの店に通うようになった。
来店するのはいつも深夜。
かけ蕎麦を啜ってから、代々木まで帰るのが日課となりつつあった。
特別警報が出たこの日、磯海は新宿・豊島エリアの警戒にあたっていた。
慣れない車での移動は退屈だった。
同じ事を、港エリアの警戒任務についていた絢香も語っていた。
「あたし達はやっぱ、バイク乗りじゃん」
そうなのだ。
箱に囲まれる安全地帯よりも、生身の身体で風を切る快楽、それを知ったら後には戻れない…
磯海は、絢香の言葉に納得した。