テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#魔道具職人
こはる
802
フユめん
265
#幻想郷入り物語
KOKO💖💫🦊
51
コメント
1件
わあ〜〜今回もめっちゃ良かったです😭💕 アルビスが照れながらタピオカ(わらび餅)作ってくれたシーン、もう尊すぎて叫びました!!カレンが「わらび餅だこれ」って言い当てたところ、天才すぎるし、リュリュとの連携プレーも最高✨ 次のバザーが楽しみすぎる…!カレンがどんどんこの世界に馴染んでいくのが嬉しいし、アルビスとじわじわ距離縮まってるのもエモいです…♡ 次回も楽しみにしてます!!
カレンに二度見されたアルビスは、思春期の少年のような顔になる。照れくさくて、居心地悪くて。でも、カレンから顔を背けることはしなかった。
しかしアルビスがそうした努力をしている最中、カレンはガラスの器に釘付けになっていた。
「これが……タピオカ……?」
「そうだ。芋のでんぷんで固めたものを、そう呼ぶと聞いた。君の……好物だとも」
補足されたアルビスの説明に、カレンは渋面を作る。
タピオカの話をしたのは一度だけ。その時、アルビスは居なかった。居たのは、リュリュと、もう一人──
「アーオーイー、もうっ!」
「ぅ……ご、ごめんなさい……」
密告したことは悪いと思っているようで、アオイは言い訳をせず、すぐにペコリと頭を下げる。
苛立ったけれど、こうもすぐ素直に謝罪をされると、これ以上怒ることができない。アルビスまで申し訳なさそうにされると、なおさらに。
「……別に、もういいんだけど。別に」
行き場のない怒りを独り言で昇華したカレンは、再びガラスの器に視線を戻す。
(この物体Xが、タピオカ?)
カレンの知っているタピオカは、黒くて大豆くらいの大きさの粒だった。しかし、目の前のタピオカもどきは、どう頑張ってもスライムにしか見えない。
それでも、この物体に対してダメ出しする気にはなれない。だって、わざわざ作ってくれたのだ。他ならぬ、自分のために。
「食べて、もらえるか?」
タピオカもどきをガン見するカレンを、アルビスは悪い方に受け止めてしまったのだろう。
尋ねる口調は、まるでカレンが意地悪をしているかのように弱々しい。
「今、食べようと思ってたとこ」
憎まれ口を叩いて、カレンはデザートスプーンを手に取る。
「それじゃあ、いただきます」
「ああ、そうしてくれ」
頷くアルビスは、安堵の表情を浮かべているし、一列に整列している使用人たちは、もっとホッとした表情を浮かべている。
おそらく彼らは、タピオカもどきの制作に携わった人たちなのだろう。彼らは、食したカレンがどんな反応をするのか固唾を飲んで見守っている。
沢山のギャラリーの視線を浴びながら、カレンはタピオカもどきを、デザートスプーンで一口すくう。
すくった瞬間、それがプルンと揺れ、これは見た目より美味しいかもしれないと、カレンはほんの少し期待しつつ口に運んだ。
ゆっくり味わって、飲み込む。ほぅっとカレンが息を吐くだけで、ギャラリーが息を吞む気配が伝わってくる。
「これ……アレに近い」
そう言って、カレンはもう一口、タピオカもどきをデザートスプーンですくって口に入れる。
もぐもぐと口を動かしながら、記憶を探るように目をつむる。
そして、ごっくんとタピオカもどきを飲み込むと同時に、目を開けた。
「うん。やっぱり、わらび餅だ。コレ」
確信に満ちたカレンとは対照的に、食堂にいる誰もが首を傾げている。
無理もない。わらび餅は元の世界の和菓子で、ワラビという植物すらない世界では、想像もできない食べ物だろう。
「えっと、まぁ……タピオカに近いデザートってこと。ねぇ、リュリュさん。ちょっとこれ、食べてみて」
わらび餅の作り方を知らないカレンは、ふわっとした説明をすると、新しいデザートスプーンをリュリュに差し出す。
この世界の常識として、一介の侍女が聖皇帝の前で何かを食すのは、不敬にあたる。
しかし主である聖皇后から、食べろと言われれば、侍女は食べる以外の選択肢はない。
無論、アルビスも異を唱えるつもりはないので、リュリュに気遣い、身体の向きを変えた。
「有難く、いただきます」
一礼したリュリュは、カレンからデザートスプーンを受け取り、タピオカもどきを口に含んだ。そして、カレンと同様にゆっくりと味わって嚥下する。
「……どう?」
「おいしゅうございます」
「本当に?気ぃ使ってない?」
「とんでもございません。味もさることながら、喉越しが良く、おいしゅうございました」
「そっか。ねぇリュリュさん、こういう食べ物って前に食べたことある?」
カレンがこの質問で、何を知りたいか察したリュリュは、にこりと笑ってこう言った。
「ございません。おそらく帝都では出回っていないデザートだと思います」
リュリュが言い終えた途端、カレンは世紀の大発見をしたような顔になる。
「次のバザーはこれだね!」
「はい。これならきっと、大盛況間違いないでしょう」
太鼓判を押してくれたリュリュに礼を言ったカレンは、今度は使用人たちに視線を向ける。
「あの、これってどうやって作るんですか?子供でも作れますか?材料って手に入りにくいものですか?日持ちしますか?」
矢継ぎ早に問われたけれど、異世界タピオカ改め、わらび餅もどきはロイヤルシェフが研究に研究を重ねた至高の一品である。
そう簡単に教えるなんて有り得え──なくない。なぜならアルビスが「つべこべ言わずにさっさと伝えろ」と目で訴えているからだ。
法であり秩序である聖皇帝からの命令は、神の声に等しい。
使用人の一人──宮廷料理長は懇切丁寧にカレンにレシピを伝えた。
「……なるほど、なるほど。わかった。ありがとうございます」
それなりに料理の知識があるカレンは、料理長の説明で大体は理解した。
わらび餅もどきの作り方自体はさほど難しくないが、下準備に時間がかなり必要になるらしい。
そうとわかれば、厨房でやれることをやるだけだ。
時間が惜しいカレンは、料理長に礼を言って残りのわらび餅を平らげ、席を立つ。
「ごちそうさま。ありがとうね、助かった」
アルビスに声をかけて、カレンは廊下に出ようとしたけれど、長テーブルの上に置きっぱなしになっているプディングが視界に入った。
「これ、良かったら食べて。それじゃあ……!」
そう言い捨てると、リュリュと共にカレンは食堂を後にする。
残された者たちは、ただただ無言でカレンを見送った。