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「ええ。あのひとたち、いま車に乗って出発したところよ。
後はよろしく」
と言って電話を切った。
まったくどこへ行くのやら。
自分のやるべきことを放棄して不倫ドライブ?
いいご身分ね。そんなことが、鷹取に嫁いだ者に許されるとでも思っているの?
念のため、庭に出て写真を撮る。が、所詮スマホだ。カメラ機能はさほど高くなく、後から写真を見ても暗くて誰だか分からない。
期待しよう。
彼らをマークさせたのは正解だった。あのひとは、車を持っているから。黒い車でうちの陰に車を停めてもらい、やつらからは死角になって見えないはず。
初めてあのひとから連絡を貰ったときには驚いた。いくら、有香子さんが無能だからといってまさかそんな。職場の上司と不倫するだなんて。
ああ、許せない。
思えば、最初から気に食わなかったのよ。有香子さんのことは。明日奈の顔を見て可愛いねと言った。言っておくが明日奈は美人さんだ。こんな美人を捕まえておいてよくも可愛いなどと――。
《《あのひと》》がどうしてそこまでするかは分からない。が、有香子さんが憎いのはこちらも同じで――あのひとの鈍くささにはつくづく呆れた。嫁に来た鷹取の家で、ろくにあたしたちのおもてなしも出来ず。できの悪い唐揚げを食べさせられたときには閉口した。鷹取の嫁が、料理もまともに出来ないのかと。
何度実家に来ても全員分の料理をまともに作れた試しがないしまったく何しに嫁に来たのやら。
あたしは昔からお母さんっ子で、親孝行をしてきたと思う。三人も子どもを産んで。外国なんかに嫁いだお姉ちゃんや、無能な兄貴に比べてどれほどあたしが鷹取の家に貢献してきたことか。
続報を待つあたしは知らず笑っていた。……鷹取有香子。落ちるところまで落ちるがいい。
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