テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

愛しのフェイクディスタンス

一覧ページ

「愛しのフェイクディスタンス」のメインビジュアル

愛しのフェイクディスタンス

32 - 第32話*私の条件*19

♥

6

2025年06月08日

シェアするシェアする
報告する



「経理ですか」

「うん。経理アシスタントは募集かけてたから、とりあえずそこに。ただ、そのうち優奈も希望する職種が出てくるかもしれないし、その時はその時で俺に相談してくれ」

「いやいやいや、滅相もございません」


社長に希望を直談判。なんと贅沢な話か。とんでもない。

優奈は雅人の行動力に驚くと同時、面接も何もかもパスして飛び込もうとしている、とっくに底など知れてしまった自分に違和感を覚えた。


「なんか、朝子さんと変わらないですね、私」


自然とこぼれ落ちた言葉。

信号待ちで停止し、ハンドルから手を離した雅人が優奈の頬を撫でる。


「変わらない……か。それは優奈次第だけど、そうだな。ひとつ言わせてもらうなら、俺はお前を猫可愛がりしてるだけじゃなくて尊敬してるんだ」

「……なんの冗談」


「冗談ならよかったけどな」と、どことなく切なげな声で呟いた雅人。

その理由も、言葉の意味も理解できずに俯けば、頬に触れていた手がするりと動き、顎に添えられた。


「だから、そうはならないと確信して優奈を引き抜いてきたわけだ」


そう言って、雅人は優奈へと触れる指に力を込めて上を向かせる。すぐ目の前に迫る整った顔が強くこちらを見つめて、瞳の奥が揺れた。


「……俺に会いたくなかったか?」


囁くような声で優奈に問いかける。

そのタイミングで信号が青に変わり、雅人は再び視線を正面へ戻し優奈との間に距離を取った。


「それ、は……」


即答できないでいた。

質問の意味がわからないわけじゃない。わかるからこそ、だ。これを聞くということは、雅人は間違いなく優奈の最後の告白を覚えているんだろう。


脳裏で蘇る、あの日の声。



愛しのフェイクディスタンス

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

6

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚