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🦈「……なんで、泣いてるの?」
困ったように笑った。
目の前の人が、
どうしてそんなに苦しそうなのか分からない。
ただ。
胸がざわざわする。
見ているだけで、
息が苦しくなるくらい。
🍵「こさめちゃ……」
名前を呼ばれる。
優しい声。
泣きそうな声。
でも、
記憶にはない。
こさめは少し眉を下げた。
🦈「えっと……ごめんなさい」
🦈「こさめ、あなたのこと……」
そこで言葉が止まる。
知らない。
はずなのに。
“知らない”って言うのが、
どうしようもなく怖かった。
すちは何も言わなかった。
ただ、
こさめを抱き締める腕が震えている。
🦈「……だいじょぶ?」
こさめはおそるおそる聞く。
するとすちは、
ぐしゃぐしゃの顔のまま笑った。
🍵「……大丈夫じゃない」
その声が痛すぎて、
こさめの胸まで苦しくなる。
でも理由が分からない。
頭の中を探っても、
この人との思い出はどこにもない。
病室。
何故かポケットに入っていたメモをチラリと見る
水族館。
“好き”。
多分自分が書いたものであろうそれ。
何も出てこない。
真っ白だった。
🦈「……ごめんなさい」
こさめは小さく謝る。
🦈「こさめ、なにも覚えてなくて……」
その瞬間。
すちの呼吸がぐらりと揺れた。
傷ついた顔。
でも、
怒らない。
責めない。
ただ泣きそうに笑って、
こさめの髪を撫でる。
🍵「……うん」
掠れた声。
🍵「知ってる」
🍵「知ってるよ‥」
その言い方が、
あまりにも優しくて。
こさめはなぜか、
泣きそうになった。
どうしてだろう。
この人にそんな顔してほしくないって、
強く思ってしまう。
知らない人なのに。
するとすちは、
震える息を吐きながら呟いた。
🍵「……ほんと、ばかだなぁ」
その声には、
どうしようもない愛しさが滲んでいた。
藍翠 瑠蒼