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そのあと、
こさめは検査のため別室へ運ばれた。
医者たちが慌ただしく動く。
「記憶障害が強く出ています」
「長期記憶の欠損も……」
難しい言葉が飛び交う。
こさめはベッドの上で、
ただぼんやり天井を見ていた。
何も分からない。
どうして自分がここにいるのかも、
なんであんなに泣いてる人がいたのかも。
でも。
胸だけがずっと痛い。
理由のない喪失感。
大事なものをなくした感覚。
それだけが残っていた。
🦈「……」
病室へ戻された頃には、
もう朝方だった。
扉を開けると、
窓際にあの人がいた。
細い身体。
白い横顔。
疲れ切った顔で、
それでもこさめを見ると小さく笑う。
🍵「……おかえり」
優しい声。
こさめは少し迷ってから、
小さく会釈した。
🦈「ただいま……?」
自信なさげな返事。
するとその人は、
少しだけ目を細めた。
嬉しそうで、
でも泣きそうな顔。
🍵「ふは……それ、前も言ってた」
🦈「え?」
🍵「なんでもない」
静かな沈黙が落ちる。
こさめはベッドへ座りながら、
ちらりと彼を見る。
やっぱり綺麗な人だと思う。
でもそれ以上に。
見ていると胸が苦しくなる。
🦈「……あの」
🍵「ん?」
🦈「名前、聞いてもいいですか」
その瞬間。
彼の表情が少しだけ固まった。
でもすぐ、
優しく笑う。
🍵「すち」
掠れた声。
🍵「俺、すち」
すち。
その名前を聞いた瞬間。
どくん、と心臓が跳ねた。
理由は分からない。
でも。
すごく大事な名前みたいに感じた。
🦈「……そっか」
こさめは胸を押さえる。
痛い。
どうしてこんなに苦しいんだろう。
するとすちは、
そっと視線を逸らしながら聞いた。
🍵「……こさめちゃん」
自然に名前を呼ばれて、
こさめは目を瞬く。
🦈「なに?」
すちは少し迷って、
それから小さく笑った。
🍵「あのね、俺ともう一回、仲良くしてくれる?」