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「……っ、愛梨、今なんて言った?」
佑真の顔から完全に笑みが消えた。整っていたはずの表情は醜く歪み、剥き出しの狂気が漏れ出す。彼は海里を無視し、獲物を引きずり戻そうとする手つきで強引に手を伸ばしてきた。
「そのガキを離せ! 君は僕がいないと生きていけないんだ。こんな田舎に一人で置いておけるわけないだろ!」
その手が愛梨の腕に触れようとした瞬間、海里が鋭い手つきで佑真の手首を掴み、力任せに振り払った。
「触んなって言ってんだよ。……聞こえなかったか?」
海里の瞳には、冷徹な殺気すら宿っていた。高校生とは思えない圧力に、佑真が思わず一歩後退りする。
「警察呼んでもいいんすよ? 不法侵入と、ストーカー規制法。それに……あんたが愛梨のスマホを遠隔監視してた証拠、もうこっちで押さえてるんだわ」
「な……っ、何を根拠に……!」
「根拠? これから作るんだよ。俺の親戚、凄腕の弁護士なんでね。徹底的に洗わせてもらうわ」
真っ赤な嘘だ。けれど、海里の堂々とした物言いに、佑真は顔を青くした。自分の卑劣な手口を白日の下に晒されること――それこそが、外面を気にする佑真にとって最大の急所だった。
「……愛梨。君は、本当に後悔するよ。こんなガキに唆されて……!」
佑真は捨て台詞を吐くと、逃げるように車に乗り込み、タイヤを激しく鳴らして走り去っていった。
静寂が戻った校門前。
愛梨は糸が切れた人形のように、その場にへたり込んだ。
「……終わった、の?」
「いや、あいつはまた来ますよ。でも、今はこれでいい」
海里は愛梨の前に膝をつき、彼女の顔を覗き込んだ。彼の腕はまだ、愛梨を支えるように添えられている。
「……先生。さっき、俺の名前、呼びましたよね」
そういえば。「助けて、海里くん」と言った気がする。
愛梨の頬が、急速に赤く染まっていく。
「あれ、演技じゃなかったら……もっと良かったのに」
海里は悪戯っぽく笑うと、愛梨の手を引いて立ち上がらせた。
「契約、成立ですね。……今日から俺が、先生の『騎士(ナイト)』ですよ」